私のブログに「〇〇大学補欠合格は延納手続きできない」というキーワードで検索してたどり着いた方がいらっしゃったようです。

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では、大学が補欠を出す理由や、繰り上がって補欠合格になる仕組みを説明しました。

でも補欠合格だと延納手続できないのはどうしてでしょう?
大学入試関係の仕事の経験がある私は、率直に「経営的都合です」とお話します。


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補欠合格だと延納手続できないのはなぜ?

そもそも補欠の人が補欠"合格"になる理由はどうしてでしょう?

たとえば学科の定員が100人だとします。
文部科学省の指導で、首都圏の大学はなるべく定員ぴったりに学生を入学させることとしています。
定員を大幅に上回ってしまうと、その後補助金の額が減額されたりとペナルティがあります。

数年前までは定員100人の学科に120人や130人入学するというのがザラにありました。
しかしこれでは首都圏一極集中を加速させてしまうという考えのもと、定員管理の厳格化が図られることになりました。

しかし定員ぴったりに学生を入学させるためにはどうしたらいいのでしょう?

まず受験生が800人。そのうち何人合格者とすればいいでしょう?
仮に合格者を300人とすると、そのうち100人が入学してくれればピッタリ。
でも80人しか来てくれないことだってありますし、150人も来てしまった! という可能性もあります。

ここで大学の入試部門関係者は過去の合格者/入学者の比率を数年分さかのぼり、「これくらいの合格者ならこれくらい入学してくれるかな」という予想を出します。

この予想が当たればいいのですが、他の競合校の動向でけっこう変わったりします。
例えば明治大学はどうでしょうか。早稲田大学で大量に合格が出た場合(合格最低点が低かった場合)は、明治大学を併願し、こちらも合格していた人はほぼ確実に早稲田に進学しますから、明治大学からは入学するはずだった学生が吸い取られることになります。

逆に早稲田大学で大量の不合格が出た場合(合格最低点が高かった場合)は、明治大学にその学生が押し出され、明治大学は沢山の学生を受け入れることになります。

場合によっては、早稲田で不合格になった学生が明治へ行き、そのあおりで明治にギリギリ入れなかった学生がワンランク下の(失礼!)東京女子大学へ進学するということもあります。
別のパターンとして、早稲田で補欠合格になったので明治を辞退して早稲田へ進み、明治大学は欠員を補充しようとして補欠合格を出す。すると東京女子大学に進学するはずだった学生が東京女子大学を辞退してワンランク上の明治大学へ・・・、という場合もあります。

要するに「どれくらいの合格者を出せば定員ぴったりに入学者を集められるか」というのはその大学単独で見極められる話ではなく、大学の序列や競合校でどれくらい合格・不合格が出たか、補欠合格が出たかに左右される話なのです。

ちなみに文部科学省が定めた「令和3年度大学入学者選抜実施要項」では、「合格者の決定発表 令和3年3月31日まで」とされています。
つまりその年度ギリギリ3月31日まで合格者を出すことは認められています。

極端な話、3月31日になって大学関係者から「補欠合格です」という連絡があったり、UCAROのようなポータルサイトで「補欠合格」のお知らせが届くということが理論上はあり得るわけです。

受験生の心理としては、「他にも補欠から補欠合格に繰り上がるかもしれないから、延納したいな」という気持ちになるのはごく当然ですよね。

でも「延納手続」というのは入学申込金と学費を一度に収めないという手続のことですから、大学の立場からしてみれば、「延納」というのは事実上「よその大学も受験して、合否待ちです」=「よその大学のほうが志望度が高いです」というサインでしかありません。

自分の大学で欠員が発生してしまうかもしれないのに、「よその大学も受けてるんですね。じゃあ待ちます」とは立場上言えませんから(だって大学の経営がかかってますからね)、補欠合格を出したらサッサと入学申込金も学費も納付していただいて、入学者を確実にゲットしたいわけなんです。

えげつない話ですって? 一応対抗策はあります。入学辞退届を締切までに提出すれば、入学申込金は返還されないものの、学費や施設設備費、同窓会費などは返還してもらうことができます。
具体的にどんな書式を準備し、提出締切はいつか? は入学手続書類に明記されているはずなので、そちらをご覧いただくのがよいでしょう。

しかし大学入試って研究すればするほど「教育」という建前の裏側にある「お金の話」が見えて来ます・・・。偉い先生も結局はお金がないと生活していけませんからね・・・。