燕尾服や華やかなドレスに身を包み、オーケストラをバックにスポットライトを浴びてベートーヴェンやメンデルスゾーンの協奏曲を演奏する・・・、ヴァイオリニストというとそういうイメージがあると思います。
白鳥は見えないところで足掻いているというたとえ話のとおり、華麗な音楽を披露するために1日10時間も練習する日々が一生つきまとうのがこの職業で、有給休暇や厚生年金といったものはなく、親の葬儀にも立ち会えないといった致命的な難点があります。
そういったマイナスを乗りこえて音楽家とし成功すると、「知的な」「おしゃれな」といったイメージが与えられ、ときにはTVCMで使ってもらえることも・・・。
でもヴァイオリニストの聖人君子ではなく、アルコール中毒になることもあります・・・。
シェリング、アルコール中毒に陥っていた
渡辺和彦さんの著作『ヴァイオリニスト33』では20世紀を代表するヴァイオリニスト、ヘンリク・シェリングの衝撃的なエピソードが紹介されています。
彼は晩年、アルコール依存症に陥り、周りの人から疎まれつつ亡くなったとか。
1980年代に入ってからのシェリングは現存する最大のヴァイオリニストというイメージをキープすることにこだわるあまり自分の演奏に完璧さを追求しすぎた結果、アルコールに頼らざるを得なくなってしまったようなのです。
公人として求められる「ヴァイオリニスト像」を守り抜くために、私生活がボロボロになってしまった彼は、リハーサルでも「うるさい老人」になっていました。
共演した指揮者・秋山和慶さんは「照明が明るすぎる、位置が悪い、暑い、チェロの音がどうした、フルートがなどと、とにかくうるさくてまいりました」。
このやっかいぶりは他の人のインタビューでも聞かれる話だとか・・・。
このような彼の姿は、演奏姿や残された録音からは想像もつきません。
ただあくまでも私生活は私生活であって、他人が対価を払うものでもありませんからとやかく言えるものでもないでしょう。
それでもヴァイオリニストは・・・、いや音楽家というのは、華麗なのはステージに立っているときだけで、それ以外の瞬間は普通の人とたいして変わらないと思っていたほうがよさそうです・・・。
なにしろ海外の演奏活動での報酬を隠蔽して、あとで国税局から数千万円の所得隠しを認定されたヴァイオリニストもいますから・・・。(この人の演奏はすごく好きなんですけどね・・・。)
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