東京駅すぐ近くの三菱一号館美術館で2021年1月17日まで開催されている「ルドン、ロートレック展」。
こちらは私が訪れたときはガラガラでした。理由は説明しなくてもだいたいお分かりかと思います。

ところがこれが大変素晴らしい展覧会で、観ない人が残念に思えてくるほどです。

主に19世紀後半のフランスと日本の作品にスポットライトをあて、三菱一号館が竣工した「1894年」を軸にルドンやロートレックはもとよりモロー、ドガ、ピサロといった名品の数々が展示されています。

作品リストから抜粋すると・・・。
(会場内は撮影禁止なので画像はありません。ご了承ください。)

ギュスターヴ・モロー「ピエタ」

エドガー・ドガ「ラファエルロ《アテネの学園》の模写」

ジャン=フランソワ・ミレー「ミルク缶に水を注ぐ農夫」

アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの一隅」

カミーユ・ピサロ「牛の番をするう農婦、モンフコー」

ポール・セザンヌ「リンゴとテーブルクロス」

とまあ、教科書にも登場するような巨匠たちの、代表作ではないものの十分見るべき価値のある作品が集められています。

こちらはもともとは三菱一号館美術館の収蔵作品のほか、岐阜県美術館や公益財団法人ひろしま美術館が収蔵しているもの。これらの作品群を、「19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺」「NOIR - ルドンの黒」「画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック」「1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本 ー 絵画と版画、芸術と装飾」「東洋の宴」「近代 ー 彼方の白光」という6つの章に分けて展示しています。

フランスの作品ばかりなのか? というとそうではなく山本芳翠や黒田清輝など日本人の作品も展示されています。
しかし彼らの作品を見ていると、いかにフランスの作品から多くのものを学ぼうとし、かつ急ピッチで吸収しようとしていったかが伺い知れるではありませんか。
たとえば藤島武二の「書見する女」なんて、「あ、これはきっとアレが元ネタなんだ」と見た瞬間にピンとくるはず・・・。それだけ特徴を捉えて自分の芸風に取り込もうとしたのでしょうね、きっと・・・。

黒田清輝の「摘草」はどことなくミレー風。足元の草を摘む女性の姿が描かれており、画面の奥には藁の山が描かれています。広がる明るい風景のなかにどことなくぼんやりとした白い光が射し込んでくるのはフランス特有の空気感。この雰囲気をうまく捉えていますね!

興味深いのが、アマン=ジャンの作品も紹介されていたことです。

岡山県倉敷市に大原孫三郎が設立した大原美術館。そこにも児島虎次郎が買い付けたアマン=ジャンの作品が収蔵されています。
今回の展覧会では「婦人・秋」が展示されていますが、大阪にあった大原孫三郎の別邸に飾るものとして発注されたものだということが明らかになったと、作品のキャプションで解説されていました。

アマン=ジャンの作品は松方コレクションにも含まれ、国立西洋美術館も収蔵しています(2020年現在、公開していません)が、今回の展覧会でも新たなるエピソードとともに彼の名品が展示されているのは、彼の作品がフランスだけではなく遠い日本でも求められていたということを示しており、とても興味深いことではありませんか。

ほかにもルノワールの「パリスの審判」など、もともとはヘラ、アテナ、アフロディーテの3人のうちだれが一番美しいかをパリスが決めなければならないという無理難題、しかもそのせいでトロイア戦争が起こってしまうというお話の割にはすごく幸福感にあふれているという彼らしい作品など、見どころはたくさんあるのですが・・・。やはり展示室が撮影禁止なだけに、これは自分の目で確かめていただくしかありませんね・・・。