バレエの名曲『白鳥の湖』の「情景」。このメロディは子供でも知っているほど有名なもの。

ヴァイオリンを弾く人なら一度は「ちょっと弾いてみようかな」と思うのでは。



ロ短調の哀愁を帯びつつもロシア的情緒にも溢れたメロディはチャイコフスキーの代表作といっても過言ではないでしょう。

で、肝心の楽譜ですがせきれい社から発売されている『サラサーテ増刊号(2020年11月増刊)』に掲載されているものが個人的にはおすすめです。

A4サイズの雑誌1ページに収められており、いちいちページをめくる必要はありません。

また、YouTubeで様々な演奏動画を公開しているヴァイオリニスト石川綾子さんが楽譜に沿って演奏のためのコツをいろいろ説明してくれています。
たとえば・・・。

この曲の「物悲しい」雰囲気を表現するようにA線の3の指から始めてみましょう。E線では「明るい」雰囲気になってしまうからです。ここは、柔らかくひきはじめ、そのファ♯の音をヴィブラートでクレッシェンドしていきます。

このように、何も考えないとE線を使ってしまいがちですが、それでは雰囲気が出ませんよと事前に注意してくれていますね。
メロディが繰り返されるところでも・・・。
私自身が気をつけているのは、「もし2回同じメロディがきたら、ちょっと変えて弾くこと」です。ですから、例えば私なら、2回めの「レソレシ」のところは「ハーモニクス」を使います。せっかくこの美しいメロディをヴァイオリンで弾くのですから、ヴァイオリンを独特の方法で、表情を出しましょう。
たしかに言葉の芸術である小説でも同じ表現や言い回しが続くと「下手な文章だな」と思いますからね。2回繰り返す部分はフィンガリングやボーイングなどを変えて変化をつけるのは大事なことです。

石川綾子さんご自身もサラサーテに掲載されているのとは違った編曲ですが演奏動画を公開しています。



なお、上記サラサーテに掲載されている楽譜はあくまでもヴァイオリンのパートであり、ヴァイオリン曲本来なら普通いるはずの伴奏ピアニスト用楽譜が付属していません・・・。

まさか無伴奏曲としての「情景」ということはないはずですが、あくまでもヴァイオリンを綺麗に響かせるための個人的な練習のための「情景」だと割り切るなら「プロならこういう工夫をする」という解説付きだという点で、一度目を通しておく価値はあるでしょう。
そもそもヴァイオリンを弾く人の伴奏を喜んで引き受けてくれるピアニストって、正直ほとんどいないのが実情ですしね。さらに「ピアノが弾ける」のと「他の楽器奏者の伴奏ができる」のはノットイコールなのも伴奏者不足に拍車をかけます・・・。

しかしこのサラサーテ、初心者向けに「ヴァイオリンを始めよう!」などと表紙にキャッチコピーを付けていますが・・・。
石川綾子さんの解説どおりに演奏すると第5ポジションまで移動したり、sulG(G線だけで一つのフレーズを弾く)があったり、ハーモニクスを使ったり重音奏法が出てきたりと、とても初心者が超えられるハードルではありません・・・。ゼロからのスタートだとするとここまでたどり着くのに5年くらいはかかります(個人的見解)。

解説にも「h-mollは並行調のD-dur(ニ長調)と同じく♯2つで、ヴァイオリンが鳴りやすい調です」と書かれていますが、楽典の基礎知識がないと何のことかすぐには理解できないでしょう。

その意味でほんとに初心者向けにこんなものを掲載して大丈夫なのか? と言いたくなりますが・・・。ある程度技術が整ってきた人にはチャレンジする価値がある楽譜だと言えるでしょう。