とうとう『戦う! 書店ガール』の見直しも最終話にたどり着いてしまいました。

売上20%アップという厳しいハードルを乗り越えようと、理子店長のもと、亜紀をはじめとするスタッフの心が一つになる様子は、「これがいい店」の雰囲気であり条件であると断言して良いでしょう。

本屋に泊まろうという企画を亜紀が出したときのこぼれるような笑みのまばゆさ。もうこの笑顔を見ることがないのだと思うといっそう貴重であり、放送当時はまさか5年後に渡辺麻友さんが芸能界を引退することになるとは誰も予想していなかっただけに、今見ると寂しさも覚えずにはいられませんでした。

これは亜紀が本を好きだからこそ思いついた企画。好きだから、精一杯努力でき、打ち込むことができ、あと一歩の踏み込みが可能になるのでしょう。

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ほとんどの本はいずれ忘れ去られる運命にある

「書物」というものにも賞味期限があります。

その時代の空気感を鮮烈に映し出した作品は、当時のことを知る人がいなくなればやがて読まれなくなり、絶版となります。
かつて団塊の世代が先を争うようにして読んだ柴田翔も、庄司薫も。
ひところは大学入試に頻出だった小林秀雄も、福永武彦も、曾野綾子も・・・。

日本文学史上に名を残す小説家や評論家たちの本を見つけようとすると、往々にしてペガサス書房吉祥寺店のような普通の書店ではなく古本屋を探さなくてはなりません。

『こころ』や『人間失格』のような一部の作品のみが歴史の重みに耐え、世代を超えて読みつがれてゆく「古典」となってゆきます。

もしかすると、やがて絶版となり忘れ去られてゆく世の中の多くの書物と同じく、渡辺麻友さんのことを語る人も徐々に少なくなり、だれも語らなくなる日が来るのだろうか・・・。
それが渡辺麻友さんご自身が芸能界引退を選んだ真意だとしたら、私もそれを喜ぶべきなのだろうか・・・。私の心はまだはっきりとした答えを出せていません。

現場で働くことが人間の尊厳にもつながる

最終回では閉店回避に向けて奮闘する書店員たちの姿が、私たちに「働くこととは?」というメッセージを投げかけているようにも思えます。

「本との出会いが人生を変えることもある」、社長に訴える亜紀は書店を介して人と本のめぐりあいを力説し、それがネット通販にはない、書店の存在意義だと力説します。

ここで亜紀が語っているのはもはや売上の話ではありません。人と人が交流することの意味です。

思いを伝え合うことで人間がお互いに信頼を積み重ねてゆき、ひいては書店のフロアという現場に立ち、お客さんと接する場を維持することの社会的役割を改めて確認し、心の交流が行われる場を運営し、感謝の言葉を受けること。これが労働者の尊厳にもつながっていることをもうかがわせます。そしてそれは、テレワークのような働き方では絶対に得られない実感のはず。

私が以前のブログ記事で引用した遠藤周作さんの言葉を改めて引用しますと、

人間がもし現代人のように、孤独を弄(もてあそ)ばず、孤独を楽しむ演技をしなければ、正直、率直におのれの内面と向きあうならば、その心は必ず、ある存在を求めているのだ。愛に絶望した人間は愛を裏切らぬ存在を求め、自分の悲しみを理解してくれることに望みを失った者は、真の理解者を心の何処(どこ)かで探しているのだ。それは感傷でも甘えでもなく、他者にたいする人間の条件なのである。  
だから人間が続くかぎり、永遠の同伴者が求められる。人間の歴史が続くかぎり、人間は必ず、そのような存在を探し続ける。
このように人間は「誰か」から自分の存在を肯定してくれることを心のどこかで求めており、その答えを実感したときに生の充実を感じるようです。理子、亜紀たちペガサス書房吉祥寺店のスタッフがきびしい環境の中で働くことを通じて最後にたどり着いた実感も、おそらくこのようなものだったはず・・・。

おわりに

結局ペガサス書房吉祥寺店のスタッフたちはユニコーン堂で採用が決まります。現実の社会ではこのようなことはまず起きず、あくまでもドラマのなかの話ではあるものの、私たちの心を慰めます。

理子はユニコーン堂へは就職せず、自分で書店を始めました。
亜紀も小幡と結婚し、ほどなくしてユニコーン堂を退職。理子の店で働き始める・・・。
こうして『戦う! 書店ガール』は幕を閉じたのでした。

ペガサス書房吉祥寺店のスタッフも一つの「書店」という場に集まり、そしてそれぞれの場所へ旅立っていきました。

私はドラマを見終わったあとで改めて主題歌「出逢いの続き」を聴きなおし、「最初はただの知り合いなのに 次第に心 許し合ってく そんな無意識のプロセス いつの間にか大事な人になる」という、ドラマを意識しながら書かれたであろう歌詞に込められた様々な思いがあることに気付かされました。
渡辺麻友さんがこのドラマに主演女優として参加し私達の心に足跡を残していったことも、また大切な出逢いとして、人生の思い出として、ずっと胸の奥にしまっておきたいと思います。