『戦う! 書店ガール』を数年ぶりに見直す足取りも佳境に入りました。
最終回まであと1話を残すところになり、とうとう知られてはならないペガサス書房吉祥寺店の「閉店」が取次に伝わり、入荷がほぼストップしてしまいます。

本部は既定の路線を変更するつもりは毛頭ないらしく、無理な条件を押し付けている、明らかなパワハラとしか言いようがありません。
仕方なく他の書店の店頭に並んでいる本をスタッフが買ってきてそれを自店舗に並べる、まさに自転車創業の状態になってしまいます。

まるで石油の輸入が止まった日本・・・、太平洋戦争前夜のABCD包囲網そのものではありませんか!

この難曲をどうにかして乗り越えようとする西岡店長と、亜紀。
二人のやり取りは短くもインパクトを残すものでした。
W主演なだけにどちらか一方だけが光が当たるということはありえず、だからこそ渡辺麻友さん演じる亜紀のキャラクターの掘り下げが「食い足りない」と感じることも正直ありました。

しかし第8話では・・・、おそらくこの回を撮影・編集しているときは早期打ち切りが決まっていたはずで、いろいろなシーンが切り詰められていたことは想像に難くありません。にもかかわらず、いや主演だからこそなのか、理子と亜紀が二人で話し合い、心を開きあう場面は静かでありながら私たちに確かな印象を残します。

理子の実家に立ち寄り、せんべいをたべる亜紀。カレーを食べる亜紀。ビールを飲む亜紀、せんべい布団で眠る亜紀・・・。

この一夜をきっかけに小幡と亜紀がたしかな絆で結ばれます。
理子と亜紀はもう中の悪い二人ではなく、三代目と揶揄される亜紀の姿はもうどこにもありません。
困難を乗り越えようとする「仲間」になったのです。


yamaguchi.maho

書店の苦境がしのばれる

書店というビジネスモデルが・・・、いえ出版業界そのものが縮小しているということは20年以上前から言われていました。
21世紀に入ってからはアマゾンをはじめとするネットショッピングが台頭し、店頭で物を売るというあり方自体が大きな曲がり角を迎えています。

そのような時代にあって、書店とはなにか。書店員の働き方はどのようなものなのか。
お客さん=本の読者に対して書店員はどう向き合うのか。
このような問いは、読書が好きな人が一度は考えたテーマだと思います。

『戦う! 書店ガール』は視聴率にこそ恵まれませんでしたが、書店で働く女性たちの姿を当代きってのアイドル=渡辺麻友さんが演じることで、きっと伝わるべき人にこのような問いは伝わったはずです。

最初は対立していた亜紀と理子が逆境に立ち向かうとき、二人の距離が近くなり、やがて戦友となる・・・。
第8話まで来ると、渡辺麻友さんの演技というよりももうペガサス書房吉祥寺店の未来がどうなるのか、そちらのほうがもう私は気になってしまいました。

これはあくまでもドラマの見なおしであり、結末は誰もが知っていることではありますが、5年前の渡辺麻友さんの凛々しい演技とも相まって、困難の中でこそ働く人は輝くのだということを改めて確認し、清々しい気持ちになりました。

最終回第9話を、見たいような、見たくないような・・・。