2020年4月25日に文庫版が発売された、乃木坂46・高山一実さんの小説『トラペジウム』。
以前の記事ではこの小説に登場する、面白い表現を自分なりに紹介してみました。
この作品を高校の読書感想文の課題に使おうと思っている人は、参考にしてみてください。
(ただしパクリがバレると先生にガチ説教されるかもしれません。ご注意ください。)

trapezium

『トラペジウム』後半部分の面白い表現。「待っていても変わらない」

第七章でヒロインがボランティアを始めます。
その活動があるときTV放映され、一時的に有名人になります。
でも番組放送から一週間もすると誰もその話をしなくなり、ヒロイン東ゆうは焦ってきます。
私は、状況が変わるのを待っていた。しかしそんな日など待っていても訪れないのではないか。変わりたい、そう思った日から自分はこんなにも変わっているというのに。

視聴率が8パーセントの番組に出て、仮に800万人が自分のことを見てくれたとしても、800万人がそれを忘れてしまっては何も残らない。田舎の中で寄せ集められた私たちが、田舎の中で有名になっただけであった。

そのことに気づいてしまった日の夜、夢というものはどうすれば叶うのか本気で考えた。
残酷なようですが、これが事実です。何しろTVなんて朝から晩まで無数の番組が放送されています。
一度登場したからといって、すぐに忘れられてしまうのはむしろ当然です。
一発屋芸人なんて、一年中頑張って「時の人」になっても年末の特番が終わるとすぐに見向きもされなくなるくらいですから、一般人が一度TVに出てそれで人に覚えられようというのは見込みが甘すぎます。

だから「そんな日など待っていても訪れない」という認識は的を射ています。
 レオナルド・ダヴィンチは「幸運の女神は前髪しかない」という言葉を残し、リンカーンは「待っているだけの人達にも何かが起こるかもしれないが、それは努力した人達の残り物だけである」と言いました。

アイドルとして成功を掴むにせよ、受験生が志望校合格を勝ち取るにせよ、それは自らのアクションあってこそ。その心理が上記の文章に凝縮されていますね。

『トラペジウム』後半部分の面白い表現。「芸能界はきれいじゃない」

東ゆうはどうにか仲間たちと芸能活動らしきものをスタートさせることができました。
ところが芸能事務所のスタッフはこう忠告します。
「残念だけどそんなに美しい世界じゃない。それに、アイドルって言葉だけで嫌悪感を示す人もたくさんいる。」
(中略)
「君はまっすぐな人だ。せっかくコーナーを持っているんだし、番組と連動して何かできるように動いてみるよ。」
(中略)
嬉しい言葉のはずなのに、なぜか冷たく聞こえた。(中略)アイドルの世界が美しくないなんて、やはり私には信じることはできなかった。
このあたりには東ゆうの若さが現れています。
どんな業界にも、憧れの職業にも汚い部分は確実に存在します。
ましてや芸能界という光り輝く場所にあっては、影もまた濃いもののはず。

1980年代に一世を風靡したアイドル、光GENJIの諸星和己さんは17歳のときにアイドルデビューするとまたたく間に大人気になりました。
ところがその彼が光GENJIをやめると、周囲にいた人たちは潮が引くように去っていきました。
この経験がトラウマになり、彼は人間不信になってしまったと言っています。芸能界の闇の深さが伝わってくるエピソードですね。

東ゆうはここで紹介した場面ではまだ芸能界へ足を踏み入れようとしている段階です。だから光の部分しか知らないのは当然として、アイドルに憧れる少女と芸能界の闇の対比が見事です。
やがてヒロインたちは芸能活動をスタートさせますが・・・。

『トラペジウム』後半部分の面白い表現。芸能活動で走る亀裂

千葉県の東西南北の学校から集まってデビューしたヒロインたち。
日を追うにつれ彼女たちの結束に少しずつヒビが走ります。
「美嘉ちゃんが笑わなくなった。見ず知らずの人たちからの、言葉の暴力によって。芸能人ってこういうのが普通なんでしょ。」
「……」
「おかしいじゃん。お金のため? それとも名誉? どうしてみんな有名になりたいの?」
「自分という存在を大勢の人に受け入れてもらいたいんじゃないかしら。」
「くるみにはわからない。他人の意見なんていらない。自分のしたいように生きられればそれでいい。」
このあたりは言葉が非常にリアルになります。もしかすると作者高山一実さんの実体験も織り込まれているのでしょうか。
この小説の題名でもあるトラペジウムはオリオン大星雲にある4つの星のことをいいます。
しかしこの場面では彼女たちは同じ場所にいて同じ方角を見ていたつもりだったのに、別の星を見上げていることに気づき始めます。

一緒に受験勉強しているつもりだったのに、じつは志望校ややりたいことが違うことがわかった。
一緒に会社を立ち上げたはずなのに、だんだん方針が仲間と合わなくなってきた。
こういうことは生きているとよくある話です。そして人は出会ったり別れたりを繰り返してゆきます。その最初の経験が、東ゆうにとっては芸能活動だったようです。生きていく「苦さ」を味わった瞬間とも言えるでしょう。

『トラペジウム』後半部分の面白い表現。それでもできないことへ手を伸ばす

東ゆうは挫折を味わいながらも、まだアイドルへの夢を捨てず、オーディションにチャレンジします。
できないことで埋め尽くされているこの世の中は困難の連続だ。しかし一度伸ばした手を引き戻すには、何かを掴むしかなかった。もしくは切断だ。幸い、私の手にはまだかすり傷しかついていない。
結局のところ、叶えたい夢は自分で叶えるしかないということです。
ナイキのスローガンはJust do it。サントリー創業者の口癖が「やってみなはれ」。
人生は「やる」か「やらない」か。成果がでなくてもまだチャレンジできるかどうか。
そのメンタルがあるかないかが分かれ目になっているようです。

おわりに

乃木坂46のメンバー、高山一実さんの小説『トラペジウム』について気になる表現を自分なりにピックアップし、感想を書きとめておきました。
読書感想文に『トラペジウム』を取り上げようかと考えている方の参考になれば幸いです。