ヴァイオリンという楽器は、ピアノのように叩けば音が出るわけではありません。
同じ弦楽器でもフレットがあるギターのように、確実に音程が合うという仕組みになっていません。

これが初心者にとってはものすごいハードルとなっており、少なからずまずそこで挫折する人が発生してしまいます。

正直、楽器を趣味として楽しみたいというのであれば、ギターのほうが圧倒的にラクです。
私はエレキギターとヴァイオリンの両方を演奏できます。
エレキギターではRADWIMPSや椎名林檎の曲をライブハウスで演奏したことがあります。
ヴァイオリンではこの記事を作成している時点でモーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第3番』に取り組んでいます。

その実感として言うなら、もう本当にギターのほうが圧倒的にラクです(二度目)。

しかもギターで演奏できる曲は乃木坂46なり嵐なり、米津玄師なり、誰もが知っている作品だらけで0す。コードが弾ければなんとかなり、人前で弾き語りできればすぐに反応が得られやすいものばかり。これはけっこう励みになります。

それに引き換えヴァイオリンで演奏できるのはベートーヴェンやモーツァルトのヴァイオリン・ソナタなど、「一体誰が知っているんだ」というようなものが大半。
「タイスの瞑想曲」のような有名曲もありますが、これだってそれらしく演奏するには少なくとも5年は地道な努力を求められます。

つまりヴァイオリンは労多くして功少なしパターンをほぼ確実にたどってしまうというまさに「悪魔の楽器」。
この楽器を何年もやっている私はなかなかのMなのではないでしょうか・・・。

そのヴァイオリン、上達のためには音階練習を避けて通ることができないのです・・・。


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ヴァイオリン上達のために、音階練習は必須である

必須・・・と私が言っても説得力も権威性もなにもないので、NHK交響楽団のコンサートマスター、篠崎史紀さんの著作『絶対! うまくなるバイオリン100のコツ』から引用します。
音階練習以上に、基礎練習に適した方法はありません。それもただ弾き流すのではなく、ひとつひとつの音を確かめながら、ゆっくり弾くのがよいです。
私は、基礎練習は音階以外にはないと確信しています。
「無意識にできるようになるまで」身体の中に入れるべき基礎とは何でしょうか? それが音階練習です。
音階練習にはすべての手の形とパッセージが含まれているので、音階練習をやらなければすべてのパッセージが弾けません。逆に、音階練習をやればすべての曲が弾けるようになる、ということです。
音階練習をすることで、すべての手の形、バイオリンのポジションを身体の中に入れることができるのです。私は、音階ができなければバイオリンを弾くことはできない! と断言します。
このように、音階というのがヴァイオリン音楽の基本。

当然ながら音階を弾く能力は音楽大学の入学試験でも審査されます。

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これは東京の国立(くにたち)音楽大学のある年の入試問題(ヴァイオリン専攻)の一節です。
まず始めに音階を弾きなさいという出題。その後で「任意の協奏曲より第1楽章を演奏すること」。

そもそも音階を弾いた時点で、その人の実力はほぼ推し量ることができますから、協奏曲を弾く以前に「この人は不合格だな」と見当がつけられている可能性は十分あると言えるでしょう。
では音階を正確に弾くためにどうすればいいのでしょうか?

音階練習のための基礎力充実に小野アンナ『ヴァイオリン音階教本』

ほとんどのヴァイオリン指導者が生徒に与えるのが小野アンナ『ヴァイオリン音階教本』
小野アンナは諏訪根自子、巖本真理といった戦前~戦後まもなくに活躍したヴァイオリニストの師匠でもあり、かつ2020年現在今なお現役ソリストとして活躍している前橋汀子さんも師事したことがあります。(オノ・ヨーコの親戚でもあります。)

中身はこのように、ひたすら音階が色々な調性で続きます。

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途中のページからは重音の音階となっており、これ1冊をマスターすれば、音楽大学へ進学してプロを目指すのでない限り(とはいえ音楽大学を卒業してもヴァイオリン演奏で食べていける人は一握りなのだが)十分な技能を身につけていると言っても間違いないでしょう。

欲を言えばピアノのそばで練習し、「?」と違和感を感じるたびに鍵盤を叩いて音を合わせることができればベストですが、そうもいかない人が大半でしょう。

スマホなどにチューナーアプリをダウンロードするか、こういうクリップチューナーをONにして目盛りの挙動を見ながらゆっくりと音を確かめつつ弾くのが次善の策です。



これをしていると音を耳で合わせるのではなく、目で合わせることになりますので正直必ずしもベストではありません。
とはいえ初心者にとっては音で合わせろと言われても無理ゲー感しかないので、チューナーを使って少しずつ音感を養っていくのが、手間がかかるように見えて一番の近道なのかもしれません(私はそうやっています)。

おわりに

「あなたがこの技術を確立するまでに大体10年くらいかかります」。
重音奏法がいろいろ出てくる曲を弾いていると、あるとき先生に真顔で言われてしまいました。
ヴァイオリンはある程度まで学習が進むとどことなく伝統芸能の修得のような様子になってきて、細かいところをクドクドと指摘され、直らない、また指摘されるという無限ループに陥ることもあります(いまの私)。

音階練習ひとつとっても思うようにいかないのがヴァイオリンの世界。
プロゲーマーの梅原大吾さんの言葉『1日ひとつだけ、強くなる。』ではありませんが、ちょっとずつ地道にうまくなっていくしかありません。

この記事をお読みの方はヴァイオリンを弾いている方だと思いますが、どうか練習に励んで綺麗な音階が弾けるようになってください。陰ながら同士として応援しております。