大学入試には様々な種類があります。

そのなかでも最近注目されがちなのは総合型選抜(AO入試)。大体10月~11月ごろに入試シーズンを迎えます。

1点刻みのペーパーテストではなく、事前に提出する志望理由書や小論文、面接などを重視し、その大学との相性を見定めることを主な目的に実施するもの。

この総合型選抜(AO入試)は、大抵の場合「第一志望」であることを前提に実施されています。

例えば明治学院大学の「2020年度 自己推薦AO入学試験」の文学部「英文A」では、出願資格にこう書かれています。
本学英文学科を第一志望とし、入学を確約できる者
(https://www.meijigakuin.ac.jp/admission/information/ao/より)

早稲田大学の2020年度創造理工学部「早稲田建築AO入試(創成入試)」試験概要でも、
創造理工学部建築学科を第一志望とする者。
(https://www.waseda.jp/fsci/admissions_us/より)

と書かれています。

第一志望であるからには、
1)合格したら絶対進学します
2)たとえ他の大学も受験しているとしても、両方合格したらこの大学を選びます
という前提になります。

なぜでしょうか。
また、「御校が第一志望です」と嘘をついて、あとでばれることはあるのでしょうか!?

私は普段は大学入試関係の仕事をしているので、この辺りについて深堀りしていきたいと思います。


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総合型選抜(AO入試)はなぜ第一志望が前提なのか

総合型選抜(AO入試)の要項には、上記のようにどうして第一志望を前提とした入試なのでしょうか。
理由はいくつかあります。

1つ目に、「一般入試までに合格者≒入学者の数をある程度固めておきたい」という経営的な理由があります。
定員100人の学科があったとして、総合型選抜(AO入試)で30人合格し、かつ入学が確実に見込める場合、一般入試で入学させるべき学生は70人まで絞り込むことができます。

すると、一般入試でたくさんの学生を合格させなくてよいわけですから、一般入試の難易度は上がります。となると偏差値も上昇するわけで、大学のブランド価値は保たれることになります。

2つ目に、入学してくる学生の数も見通しを立てやすいということがあります。
数年前から、文科省の方針でとくに首都圏の大学は入学してくる学生の数を、もともとの学部(学科)の定員となるべくイコールに近づけるようにということになっています。

となると100人定員の学科にこれまで120人入学させていたのが、110人とか105人くらいしか入学できなくなっている、ということにつながります。
当然ながら合格者も数年前(2016年頃)よりも今の方(2019年頃)が絞り込まれることになり、試験の難易度上昇に繋がります。

しかし、こうしたこととはまた別に、「これくらいの人数に合格を出したら、どれくらいの学生が入学してくれるのか?」という数字の読みはとても難しく、安定しないのが普通です。
その点、AOで入学を確約してくれるなら合格イコール入学に直結するわけですから、とても助かるわけです。

総合型選抜(AO入試)で「第一志望です」と嘘をついたらばれるのか

この記事の眼目である総合型選抜(AO入試)で「第一志望です」と嘘をついたらばれるのかということですが、おそらくこの記事をお読みのあなたは「第一志望です」と面接で答えたものの、あとで他の大学を受験しようとしているのではないでしょうか。(こういうのは地域によって特色があり、例えば近畿地方では推薦やAOの併願を認めているようです。)

総合型選抜(AO入試)に合格すると、そのあとで「入学前教育」などが出され、レポート作成などが義務付けられることがあります。
他の大学を受験するということは、入学前教育と大学受験準備を同時並行で進めることになります。

他の大学に落ちてしまったら、総合型選抜(AO入試)で合格したほうの大学に進むことになります(当然ですよね)。

しかし他の大学に合格し、そちらに進学した場合はAO入試で合格したほうの大学は入学辞退をすることになります。
入学辞退届を提出した場合、入学金以外の経費は返金申請をすることが一般的には可能です。

実際問題、入学辞退届を提出するその瞬間までは、あなたが別の大学を志望していることが確実にばれるというものではありません。
ただし、入学前教育の提出率が悪いと、「こいつは何か企んでいるのではないか」と教員が過去の学生の挙動から経験的にマークしたりすることはあります。

また、あなたの高校が、あなた自身がAO入試で受験した大学の「指定校推薦」を志望できる「指定校」だった場合、その枠が取り消しになることもあります。

「AO入試は、面接の段階で第一志望であることを確認し、本学としても入学前教育を実施するなど、御校の生徒である〇〇様の入学後の成長を願っておりました。
しかしながら〇〇様が入学を辞退されるとのお知らせをいただき、本学としては誠に残念でございます」

これはAO入試で合格しながら、入学を辞退した人が在籍している高校の校長先生宛に送っている手紙の例です。まるで不幸の手紙のような文章ですね。婉曲に「なんでこんなホラ吹きをうちの大学に送ってきたんだ」ということが言いたいわけです。
あなたがAO入試で合格し、しかし別の大学へ進学を決定した場合、あなたが知らないところでこのような手紙が校長先生宛に届いている場合もあります。

おわりに

今日は総合型選抜(AO入試)で「第一志望です」と嘘をついたらばれるのか、ということについて記事にしてみました。
結論としては、「入学辞退届」を提出するまでははっきりとばれることはありませんが、指定校推薦の枠を取り消されたりなど、後輩に悪影響がある場合があります。

また、大学を受験するときは高校に「調査書」を作成してもらわなければなりません。
総合型選抜(AO入試)で合格したのに、さらに別の大学を受験したいので調査書を作成してほしいと先生に申し出ても、「第一志望の大学に合格したのになぜ?」と問い詰められることもありえます。

このように、総合型選抜(AO入試)で合格しておきながら辞退するということは、入試要項に「第一志望であること」と記載されている場合は様々な関係者に重大な影響を及ぼします。進路選びはくれぐれも慎重に判断していただければと思います・・・。