NHKの朝ドラ『なつぞら』。放送開始以来視聴率は上々で20%台を保ちながら間もなく折り返し地点を迎えようとしています。
物語の中盤から、東洋動画のアニメーターとして登場するのが、私がいたく応援している渡辺麻友さんが演じている三村茜。
彼女は短期大学を卒業して東洋動画に就職しました。
今では短期大学卒というとまあ普通にどこにでもある話ですが、昭和30年代の短期大学とはどういう位置づけだったのでしょうか。
渡辺麻友さんとは直接の関係はありませんが、調べてみることにしました。
昭和30年ごろの短期大学の位置づけとは
以前の記事でも利用した文部省・文部科学省の「学校基本調査」によると、昭和30年の統計はこのようになっていました。
大学(学部)・短期大学(本科)への進学率 (過年度高卒者等を含む)
男子 15.0%
女子 5.0%
となっています。
大学または短期大学への進学を志す人は極めて限られていたことが分かります。
大学と短期大学の内訳は次の通りです。
大学(学部)への進学率(過年度高卒者等を含む)
男子 13.1%
女子 2.4%
短期大学(本科)への進学率(過年度高卒者等を含む)
男子 1.9%
女子 2.6%
つまり女子が1万人いたとしたら、大学または短期大学に進学する人は5%=500人。
大学へ進む女子は240人で短大へ進む女子は260人ということになります。
柴田夕見子、坂場一久もそれぞれ北海道大学、東京大学に進学(または、卒業)しているという設定になっていますが、三村茜も当時としてはかなりのインテリだったようです。
そもそも短期大学とは、以下のように戦後の教育制度の改変に伴って誕生したものだそうです。
日本では、第二次世界大戦後の学制改革に伴い、旧制専門学校のうち、新制大学の基準に満たない学校が短期大学として再編成され、学校教育法の一部改正によって、1950年(昭和25)4月から暫定的な措置として発足。当初149校存在した。56年に文部省(現文部科学省)は、中央教育審議会の答申に基づいて、短期大学を恒久的なものとして認め、「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することをおもな目的」とした。
(以上、コトバンクより)
その後、短期大学では主に女性が進学先として選択するようになりました。
たとえば『なつぞら』に出演している山口智子さんも青山学院女子短期大学の出身です。
当時、偏差値というものはなかった
入学試験に偏差値という概念が導入されたのは1960年代に入ってからのことでした。
今でこそ偏差値という言葉は当たり前のように使われていますが、『なつぞら』の時代では自分の学力が全国的に見てどれくらいかを統計的に推し量る手段はほとんどなかったはずです。
裏を返せば、偏差値を見せられて「自分はしょせんこんなものか」と落ち込むことがなく、どんな学生でも「東大に行きたい」「政治家になりたい」など自由に夢を描くことができたということでもあります。
(それにしても「あなたの偏差値はいくつ」というのはその後の人生を鋳型にはめこんでいるようで、高校生に対して悪い刷り込みを与えてしまうような気が・・・。)
「放浪しながら絵を描くのが好きだった」と語る三村茜の台詞からも、焼け野原から再スタートした戦後まもない日本の、数字に振り回されることのない伸びやかで牧歌的な雰囲気が伝わってくるようではありませんか。
さくらももこ先生は短期大学を目指して人生が変わった!
話は変わって・・・。
平成のアニメで安定した人気を得ていた『ちびまる子ちゃん』。
作者さくらももこ先生は短期大学を志したことで人生が変わりました。
高校3年生のときに進路で思い悩み、こんなことを考えたそうです。
「漫画家になったりしたら大変だろうな。それにひきかえ、OLになってまじめな人と結婚した場合は、25年ローンで静岡市内に一戸建てを購入し、週に1回ぐらいは夫婦で外出して一生に2~3回ぐらい家族でハワイに行ったりするんだ。いいじゃん!! 少しも悪くないじゃん。わたしゃ今やっとハッキリ目が覚めたよ。短大へ行こう!!」
こうして短大入試の模擬試験を受けることになりますが、作文の課題が「私の好きな言葉」。
そこで「私は季節を感じる言葉が好きだ。例えば、風鈴とかそうめん等・・・」と書き始めました。
採点結果は・・・。
「高校生が書いたとは思えない、エッセイ調の文体がすばらしい。まるで、清少納言が現代に来て書いたのかと思うような作文でした。作者の成長が楽しみです」。
ものすごく高い得点でした!
そしてさくらももこ先生はこのことをきっかけにエッセイ漫画を描いてみてはというアイデアを思いつきます。
これが後の『ちびまる子ちゃん』につながっていくわけですね・・・。
(以上は『ひとりずもう』に書かれているエピソードです。)
おわりに
今回も『なつぞら』に関連して周辺知識をすこし掘り下げてみました。
ついあれこれ気になって調べてみると色々なことが分かりました。
調べた結果はブログという手段で書きとめておくことができますが、アウトプットとして残しておくという点ではブログもなかなか便利です・・・。
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