NHKの朝ドラ『なつぞら』。この中で不器用な青年として登場する坂場一久。
うまく「カチンコ」が鳴らせない、カレーパンを洋書に食べさせてしまうなどそそっかしいというか、ぶきっちょというか・・・。

とはいえ実は彼は東京大学哲学科卒。

その彼はどれくらいインテリなのか考察してみました。

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坂場一久のインテリ度はどれくらい?

初めて本格的に登場した回では、なにやら会社のデスクで洋書を読んでいます。
昭和32年頃といえばまだまだ英語のできる人材も限られていたので、英語ができるというだけでも立派なもの。

いったいどんな本かというと・・・。

The Taming of the Shrewと書かれています。
これは、シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』。

「なんてインテリなんだ!」

私はそう思ってしまいました。というのは、このワンシーンからいろんなことがうかがわれるからです。

まず、シェイクスピア(1564-1616。シェイクスピアの作品は殺人の場面が多いので生没年は「ひとごろし いろいろ」と覚えます)の時代の英語が読めるだけで素晴らしいです。
Tis but thy name that is my enemy;
Thou art thyself, though not a Montague.
What’s Montague? it is nor hand, nor foot,
Nor arm, nor face, nor any other part
Belonging to a man. O, be some other name!
What’s in a name?
That which we call a rose
By any other word would smell as sweet, 
これは『ロミオとジュリエット』の有名なバルコニーのシーンでのジュリエットの台詞。
現代の英語とはまるっきり違っていますね。

「私の敵があなたの名前。たとえモンタギューでなくても、あなたはあなたよ。モンタギューって何?
手でも足でもない。腕でも顔でもないし、人の体の部分でもない。ああ、何か別の名前ならば! 名前が何なの? バラと呼ばれるあの花は、たとえ別の名前だったにしてもそのかぐわしさは変わらない」

が大体の訳です。こんな文章が延々と続きます・・・。英検とかTOEICとはまた違った次元の英語で、私の知るとある国立大学の英文学の教授は「昔の自分のシェイクスピアの論文を読んだら感動した。ということは昔の自分に負けてるということだ。シェイクスピアは頭が痛くなるのでもう研究をやめた」と言っていました・・・。

しかも『リア王』や『ハムレット』じゃなくて渋いチョイスで『じゃじゃ馬ならし』を読んでいるということは、きっと有名どころは大体読破したということなのでしょう・・・。すごいな。

そして彼が洋書を買うのも新宿の紀伊國屋書店・・・。川村屋=中村屋とするなら、まさに徒歩1分の距離にあるので「すぐに読みたかった」と川村屋に立ち寄るのは自然な流れといえるでしょう。




東大哲学科卒の坂場一久

昭和30年ごろの大学進学率はどれぐらいでしょうか。
統計が残っている昭和23年から現在までの大学進学率を、文部省・文部科学省の「学校基本調査」で調べることができます。

それによると、昭和30年の大学(学部)への進学率は、男子が13.3%。女子が2.4%。ちなみにその時の18歳人口はおよそ168万人でした。(2019年現在、大学進学率は男女ともに全国平均ではおよそ50%になっています。18歳人口は118万人です。)
こう見ると、当時の東大卒というのがまさにエリート中のエリートだということがうかがいしれます。
『なつぞら』では柴田夕見子も北海道大学に進学しますが、彼女も当時としてはきわめて異例の進路選択をしたことになりますね・・・。(今にして思えば、夕見子のツンツンしたところは『ハリポタ』のハーマイオニーをつい連想してしまいます・・・。)

坂場一久は高畑勲氏がモデルか

一説によると坂場一久は高畑勲氏がモデルだとか。
ウィキペディアの「高畑勲」の項目にはこうあります。
上京した大学生時代にフランスの詩人・脚本家であるジャック・プレヴェールの作品と出会い、影響を受け後に彼の名詩集《Paroles》(邦訳題名『ことばたち』)の日本初完訳(2004年)という仕事を行う。また、フランスの長編アニメーション映画でプレヴェールが脚本を執筆した『王と鳥』の字幕翻訳も手がけた。『紅の豚』の劇場用パンフレットではさくらんぼの実る頃(原題: Le Temps des cerises)の訳詞を載せている。東京大学文学部仏文科卒業。
坂場一久も「フランスのアニメーション映画が・・・」と語るシーンがありますから、たしかに重なり合うものがあります。

私は以前のこのブログの記事で、『なつぞら』という作品は昭和という時代へのオマージュではないかと書いたことがありますが、今回の記事を書くためにいろいろ調べて見た結果、やはりその思いを強くしました。


ご参考:シェイクスピアの作品をまず最初に読むとしたらやはり『ロミオとジュリエット』でしょうか。ドラマや映画の元ネタにも使われがちなので、一応手元に置いておくだけでなにかと役立ちます。

この『ロミオとジュリエット』を一つの材料に、たとえば『なつぞら』に出演している渡辺麻友さんが『ロミオとジュリエット』のミュージカル版を演じる役で主演女優として出演する『いつかこの雨がやむ日まで』というドラマが制作されたり、

こんなふうに普通に映画化されていたり、


こんなふうにワイン化されたり(たまにドンキやビックカメラで見かけます)、しまいには

こんなふうに漫画になったり・・・。

古典を押さえておくと色々とつぶしが利くので何かと便利です・・・。