毎年5月下旬~6月上旬になるとやたらと株主総会の開催通知が届きます。

今年も届きました。〇〇銀行とか〇〇自動車とか・・・。

〇〇自動車は最近社長さんが逮捕されたので冷やかしで株主総会に出・・・げほげほっ!!

しかし今年は2019年。バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2の世界よりもさらに4年後の世界です。
でもなんでそんな時代なのに紙で届くんでしょうね。
自分の使ってる証券会社の特設サイトとかから決算書類を見たり、議案の賛否を表明できたら便利なのに、なんで今どき分厚い冊子が届いたり、葉書+プライバシー保護シールで議決権を行使するんでしょう?

印刷、封入、配達、返送、集計なんていう昭和なやり方がなんで令和になっても変わらないんでしょう?

ちょっと調べてみました。

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株主総会の開催通知が封書で届くのには理由があった。

たぶん経営者としても紙で開催通知を送るのはコストでしかないわけですから、止められるならとっくに止めているはずです。

そう、株主総会の開催通知は封書で届くのには理由があったのです。

経済産業省の資料「株主総会の招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた提言」にはこう書かれていました。

企業がインターネット利用の普及・発展状況を踏まえつつ効果的かつ効率的に株主と対話していけるよう、招集通知等の情報提供に関する法制度を見直していくことが期待される。

うんうん、いいぞいいぞ。つまり紙じゃなくってメールとかウェブで株主総会の開催通知を送りたいってことですね。「効果的かつ効率的に」ってことは紙は非効率だって言いたいわけだ!

しかし。その株主総会を開くにあたり、開催前に株主に次のことを通知しなくてはなりません。

招集通知、議決権行使書面、株主総会参考書類、計算書類、監査報告。

実はこれらを電子的に(つまりメールなり特設サイトなりで)通知するための制度も実在していました。

一つめに、株主から事前に個別承諾を得ることで、上記のすべての書類を電磁的方法により提供できるという制度です(会社法第299条第3項及び第301条2項等)。

便利ですね。

便利なのに落とし穴がありました。

株主からの個別の請求があるときには、議決権行使書面及び株主総会参考書類を書面で交付しなければならないという書面請求権があるのです(会社法第301条第2項但書及び第302条第2項但書)。

こういう落とし穴があるので、逆にめんどくさい制度です。

・事前に個別にYESと返事をもらう必要があり、
・プリントアウトしたやつをよこせと言われたら対応しなくてはならない
のでした。

上記の経済産業省の資料は2016年に作成されたものですが、電子通知の利用率は上場企業の2.6%だそうです。そりゃこんな制度なら紙のほうがまだマシですわ・・・。


株主総会の開催通知が封書で届くのにはまだ理由があった。

その他にも一応Web開示によるみなし提供制度というものがありますが、招集通知と議決権行使書面はこの制度の対象外でした。

つまりWeb開示によるみなし提供制度を使っても、結局招集通知と議決権行使書面は郵送しないといけません。アホかと。


株主総会すら世界に取り残される日本

この資料は外国企業の株主総会の様子も伝えています。

諸外国においては、近年、 紙媒体の印刷・郵送に伴うコストや環境負荷を軽減することに加え、企業と株主・投資家との対話やコミュニケーションを充実させることを目的として、招集通知の関連書類を原則として電子提供することを軸とした制度が整備されており、その利用も進んでいる。
いいですね。というかむしろこれが当たり前ですよね・・・。
アメリカ、カナダ、イギリスでは、「株主から積極的な個別承諾を得ることなく、招集通知関連書類を電子提供できる点で共通している」。

さらに、
ドイツやフランスでは、招集通知本体とそれ以外の関連書類とでは、法制度上の情報提供の在り方が異なっている。具体的には、招集通知等の情報を公告又は電子公告で提供した上で、総会日時や場所が記載された招集通知本体については株主に書面で提供することが求められるが、日本の事業報告・計算書類に相当する関連書類についてはWebサイトに掲載すれば書面提供せずとも良いこととなっている。
愕然。「プリントアウトしたやつをくれ」と言ってくる人がいても「公式サイトに書いてあるから読め」で片付けていいことになってるようです! いいなあ・・・。

おわりに

私も総務系の部門で偉い人たちが沢山集まる会議の開催通知発送の仕事や当日の運営などを担当したことがあります。

そうした仕事をやってみて思うのが、紙の不便さでした。

大抵の人が紙は止めたいと思っているのですが、「少数派だけれどもこれこれの人は反対するだろうから、紙は残そう」と余計な忖度が始まって、結局前例踏襲で終わってしまうのでした・・・。

また今年も株主総会の時期になりました。上場企業で担当されている方々のご苦労が思いやられます・・・。


参考資料:株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会(経済産業省)編纂、「株主総会の招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた提言」