来日中のトランプ米大統領。2019年5月27日には天皇、皇后両陛下と面会しました。
CNNはこのように報道しています。

ホワイトハウスによれば、会談に際して、トランプ大統領は天皇陛下にビンテージのビオラを贈呈した。メラニア夫人は皇后さまに文具のセットを贈った。

一方、天皇陛下はトランプ氏に飾り鉢を、皇后さまはメラニア夫人に金細工が施された木箱を贈った。
(https://www.cnn.co.jp/usa/35137548.htmlより)

「ビンテージ」のビオラ? 一体どんなビオラなんだ?

orchestra-2672713__340


そもそもビオラとは

そもそもビオラ(ヴィオラとも)は、ヴァイオリンよりも音が低く、とはいってもチェロよりは高い音が出る楽器で室内楽やオーケストラでは中音域を担うことが多いのが特徴。
どんな楽器かというと、私の過去記事から引用します。

ヴィオラはヴァイオリンよりも低い音を出す楽器であり、必然的にオーケストラではメロディよりもむしろ伴奏を担う場面が多くなります。

メロディの後ろでややもすればあまり注目されないパートではありますが、オーケストラ曲では内声部(最高声部と最低声部の間を埋める声部)がないと曲の厚みが失われ、音楽的にスカスカになってしまいます。
ベートーヴェンやブラームスはメロディよりも内声部のパートが充実していることで知られ、目立たない部分でもしっかりと曲を構築している様子が伺われます。

そういう役割を担うヴィオラ奏者ですが、職業が人柄を作るのか、そういう人柄だからそういう楽器を選んだのか・・・、どっしり、しっかり、おおらか、しぶとい・・・、そんな性格の方が多いようです。



ビンテージのビオラとは

ギターではビンテージという表現がよく用いられます。
大体1950~70年代に製作されたギターのことを指しているようです。

ではビンテージのビオラとは・・・。

一般にヴァイオリンやビオラでは、ビンテージという言葉は用いられず、代わりにオールド、モダン、コンテンポラリーという区分が使われています。
すなわち、

オールド:1550年~1820年代。アマティ、ストラディヴァリ、ガルネリ、ガダニーニ、ガリアーノらが活躍した。

モダン:1820年代~第二次世界大戦ごろ。プレッセンダ、ロッカらが活躍。

コンテンポラリー:製作者が存命中のもの

という区分になっています。

プロ奏者の場合、ストラディヴァリウス(ストラディヴァリが製作したヴァイオリンはストラディヴァリウスと呼ばれている)やガルネリを所持している、その価値を換算すると数億円を越える、といった場合があります。(例えば状態のよいストラディヴァリウスはオークションで10億円を越える値段で落札されることもあります。個人所有はほぼ不可能なので、普通は財団法人や企業が所有している楽器を貸与してもらうことになります。)

さてCNNは「ビンテージのビオラ」という表現をしていますが、本当のオールドだった場合は安くても数千万円はしているはずですが、さすがにそこまでの楽器を贈呈することは考えにくいです。

仮に記者がビンテージという言葉をギターの感覚で使ったとすれば、戦後にアメリカで製作されたもので、かつ贈り物とするに十分な評判のある製作家によるビオラだったと推測されます。となると日本円にして数十万円程度でしょうか。
製作者が公表されていない以上推測の域を出ませんが、私なりにはこのように考えています。

終わりに、典型的ともいえるビオラの曲をご紹介します。ブラームスの『ビオラ・ソナタ第2番』。
内省的な作風のブラームスが、渋みのあるこの楽器の個性をよく生かしています。



この動画ではズーカーマンが演奏していますが、CDで販売されており、簡単に入手できるものとしてはスークの演奏が定評があります。




参考文献: