ニュースでも報じられているとおり、フィギュアスケートの宮原知子選手が来季のSPに「シンドラーのリスト」を選曲したことが明らかになりました。

ヴァイオリンを弾く私にとっても、「シンドラーのリスト」は特別な重みがある曲です(多くのヴァイオリニストが演奏しているため)。

この記事では「シンドラーのリスト」とはどのような曲なのか大まかにまとめてみました。

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「シンドラーのリスト」。どんな曲か

『シンドラーのリスト』はもともとは非常にシリアスなテーマを扱った映画となっています。
劇場版の予告編動画が公開されています。


"一つの生命を救う者が世界を救える―。第二次世界大戦中、1,200人を超えるユダヤ人の命を救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラーの姿を描いた感動のヒューマン・ドラマ!スピルバーグ監督が、10年越しの企画を実現し作品賞他7部門で初のアカデミー賞に輝いた最高傑作!"
オスカー・シンドラーは1908年生まれ。ウィキペディアによると「第二次世界大戦中、ドイツにより強制収容所に収容されていたユダヤ人のうち、自身の工場で雇用していた1,200人を虐殺から救った」とされ、彼の事績をもとにスピルバーグ監督が制作した映画が『シンドラーのリスト』です。

もともとシンドラーはユダヤ人を安価な労働力としか見ていませんでした。(ブラック企業が外国人を技能実習生として雇うようなものでしょうかね。)彼は第二次世界大戦を利用して一儲けしようとします。ところがナチスがユダヤ人を続々と収容所へ送り込んでいることを知り、さらには彼の会社で雇っている従業員=ユダヤ人たちの安全をも脅かすようになります。
やがて彼はある決断を・・・。

映画のテーマ曲はこちらです。



どこか哀愁漂う曲調となっており、改めてナチスの狂気がもたらした悲劇について自然と思い起こさせるものがありますね。
こちらはイスラエル出身、ユダヤ系のヴァイオリニスト、イツァーク・パールマンの演奏になります。
映画で実際に使われている曲の多くはヴァイオリンが使われており、録音もパールマン自身によるものです。

なぜか名ヴァイオリニストはユダヤ系に多く、パールマンの他にも「20世紀の名ヴァイオリニスト」と言えば思い当たるであろうエルマン、コーガン、オイストラフ、ハイフェッツ、ミルシテインなどはユダヤのルーツを持っています。
「指の構造がヴィブラート(音を震わせる技術)に適しているからだ」「迫害されて逃げ出す時にヴァイオリンのようなポータブル楽器だと何かと楽」「ユダヤ式教育法が優れているからだ」など、その理由は諸説があります。

作曲者はジョン・ウィリアムズ。『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』など数々の名作を手がけた彼が本作の音楽も担当しています。

宮原知子選手の他にはリプニツカヤ選手も2013-2014年にこの曲を使って演技を披露したことは記憶に新しいでしょう。

おわりに

繰り返しますが、『シンドラーのリスト』はナチスのユダヤ人迫害にまつわる作品となっています。
となると単にきれいに演技ができればよいというものではなく、博愛や悲しみといった人間らしい感情をも表現しなくてはなりません。演技をするその人が日々の暮らしのなかで積み重ねてきた精神生活の厚みや歴史への眼差しが問われる、大人の音楽と言っても差し支えないでしょう。

宮原知子選手がこの曲に込められた感情をどう表現するのか見届けたいと思います。