私は20年近くクラシック音楽を聴いているのでこのジャンルのことがニュースになるとついチェックしてしまう癖があります。

今日もこんなニュースを見つけました。

3月のフィギュアスケート世界選手権で銀メダルを獲得したエリザベート・トゥルシンバエワ(カザフスタン)が来季のショートプログラム(SP)の楽曲を発表。(中略)トゥルシンバエワは「来シーズン、ショートプログラムで私はカミーユ・サン=サーンスの『死の舞踏』を滑ります」と記し、来季SPの楽曲を発表。「死の舞踏」は穏やかなワルツ調のナンバーだ。
(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190504-00059964-theanswer-spoより)

というわけで「死の舞踏」とはどんな曲なのか、まとめました。

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サン=サーンスの交響詩「死の舞踏」。どんな曲か

原曲(オーケストラ版)はこちらになります。


まず注目すべきは、この曲は「交響曲」ではなく「交響詩」。

交響曲は、原則として純粋にソナタ形式や4楽章制など音楽上の規則を守った上で作曲された音楽のこと。18世紀末にハイドンによって確立されたジャンルで、19世紀初頭になるとベートーヴェンの『運命』や『田園』など人間の内面を描いた作品も登場します。

交響詩とは、文学、絵画などと結びついた何らかの思想を音楽で表現したものを言います。
たとえばスメタナの『わが祖国』は森や草原、モルダウなどを音楽で描写することでチェコの美しさを表現しています(「モルダウ」は『わが祖国』の第二曲目にあたります)。成立は概ね19世紀半ば。

肝心の「死の舞踏」はこのようなストーリーがあります。

午前0時の時計の音が響き渡る。骸骨が現れて不気味な踊りを始める。
その踊りは次第に高まりを見せるものの、朝が近づいて鶏が鳴くと骸骨は墓へ退散し、再び静けさが戻る・・・。

「死の舞踏」のききどころは

例えば、死神の奏でるヴァイオリンをお聴きください。

西洋音楽の世界では、なぜかヴァイオリンは悪魔が奏でる楽器だということにされています。
鬼才ヴァイオリニスト、パガニーニは鬼気迫る演奏のため「悪魔」というあだ名をつけられ、死後も墓地の埋葬を拒否されてしまいました。

その他、骸骨の登場をハープが、鶏の鳴き声をオーボエが表していたりと、サン=サーンスの優れた管弦楽法を存分に味わうことができます。(オーケストラ版だけでなく、ピアノ版などに編曲もされています。)

サン=サーンスは1835年フランス生まれ。1921年に仏領アルジェリアで没しました。
音楽家として大変な尊敬を集めた彼はオペラや交響曲など様々なジャンルの曲を作曲しています。

この記事をお読みの方はフィギュアスケートに関心がある方だと思いますが、小塚崇彦選手、三原舞依選手が用いたこともある「序奏とロンド・カプリチオーソ」もサン=サーンスの作品です。

おわりに

ニュースによると、トゥルシンバエワはカラスを思わせる黒い衣装に身を包んでいる写真を公開したとか。
「死の舞踏」だけに、悪魔を思わせる妖艶な演技で観客を魅了するのではないかと思われます。
来季の活躍に期待が高まります。


追記:サン=サーンスの作品をCDで探している方は、シャルル・デュトワ氏の指揮によるものが良いかと思います。NHK交響楽団音楽監督を務めたこともある彼のフランス音楽は国際的に非常に高い評判を得ているようです。