人気漫画シリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』。
このキャラの立ち方は「ジョジョ立ち」として知られており、真似をする人たちが後を絶ちません。
つまりそれだけ独特の味わいがあるポーズだということですね。
あの体をひねって斜めに立つのは、漫画のキャラクターの描き方としては非常に独特で荒木飛呂彦先生ならでは。

この描き方ですが、荒木先生は著作『荒木飛呂彦の漫画術』という本のなかで、ローマにあるボルゲーゼ美術館の収蔵品である、ベルニーニ作「アポロとダフネ」にインスピレーションを受けたと述べています。

荒木先生は、この本で「ジョジョ」の連載前に行ったイタリアに旅行したことがひらめきのきっかけだったと語ります。連載前は、ちょうどデッサンの仕方について悩んでいる時期だったとか。

本場の西洋美術を見たいという気持ちはあったものの、実は、特に行きたくて行った旅行ではありませんでした。それが、たまたま、ローマのボルゲーゼ美術館にある、有名なベルリーニの「アポロとダフネ」というバロック彫刻を見て、「ああ、これを漫画で描けたらいいなあ!」と思えたのです。写真で見たことはありましたが、彫刻というものは実物を見なければ本当にはわかりません。
(中略)
この彫刻のようなねじれたポージングは日本の美術にはほとんどありませんし、これまでの漫画家があまり表現していないジャンルで、しかもいい意味での色気も出せる。
(文中ではベルリーニとありますが、一般的にはベルニーニと表記されます。)

まさしくベルニーニによってジョジョの世界観が開かれたといっても過言ではないでしょう!

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(ベルニーニ作「アポロとダフネ」)

バロック美術とは?

バロックとは、日本語で「歪められた真珠」を意味します。
ルネッサンス時代には、バランスの取れた作風がヨーロッパで広まりを見せました。
その後に来たのがマニエリスムであり、そのもう一つ後にバロックの時代が来ます。

ルネッサンスの代表的な彫刻であるミケランジェロの「ダビデ」はご存知でしょう。
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(ミケランジェロ「ダビデ」)

この2つを比べて頂ければ、ルネッサンス時代のミケランジェロはバランスが取れた静的なフォルムであり、バロック時代のベルニーニは動的・曲線的であり、つまりジョジョ立ち風であることが一目瞭然ですね!

バロック美術の特徴ですが、「アポロとダフネ」に見られるように、とにかくバランスをわざと崩しており躍動感にあふれています。
また、この時代の絵画は明暗のコントラストもはっきりしています。
オランダのレンブラントが描いた「夜警」が典型的な例ですね。

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(レンブラント「夜警」)

ベルニーニの彫刻の特徴

とにかく壮麗でダイナミック! ローマの街並みはベルニーニが作ったと言っても過言ではないでしょう!
バチカン市国の「サン・ピエトロ広場」といい、ナヴォナ広場の「四大河の泉」、スペイン広場の「舟の噴水」といい、ローマを訪れると必ず出くわすのがベルニーニの作品。

この街の重厚さと繊細さ、華麗さと力強さ・・・、相反する要素をまとめ上げローマをまさに「永遠の都」たらしめているのはベルニーニあってこそ!

おわりに

以前からジョジョ立ちってなんだろう? なんでこんなカッコしてるんだろう? そう引っかかっていました。
答えは案外近くにあり、『荒木飛呂彦の漫画術』に荒木先生自身がジョジョ立ち誕生秘話を明かしていました。

それにしても最新の漫画のベースになっているのが数百年前の美術様式だなんて、「温故知新」とはまさにこのことですね!