本日のヤフーニュースでSexy Zoneの中島健人さんがフジテレビ系開局60周年ドラマ『砂の器』に出演することになったとか。

これに関連してインタビューにこう応えています。
「自分の人生で、ピアノはいつも大きなターニングポイントで必ず出てくるんです。ピアノから逃れられない、『宿命』なんですよ」と話す。

小2で、両親からのすすめでピアノを始めた。中2の時に初めて1人で発表会に臨み、「モルダウの流れ」を披露した。「初めて1人でステージに立ったのがピアノの発表会でした」。中3だった08年にジャニーズ事務所入りした。オーディションではジャニー喜多川社長(87)から「ピアノ弾けるんだよね、弾いてみてよ」と言われ、「モルダウの流れ」を弾いた。「そんなに長くないし、耳なじみのある曲だからインパクトあると思って、とっさに弾きました。今では十八番ですね」。ジャニー氏から「ユーは、練習すればもっとうまくなるよ」と言われ、ジャニーズ入りが決まった。
(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190324-03220002-nksports-entより)

YouTubeでもこのようにピアノを演奏する姿があります。



たしかにスメタナの「モルダウ」を達者に演奏しています!

スメタナの「モルダウ」はどんな曲か

音楽の教科書にも載っていた名曲ですが、背景をおさらいしましょう。
・作曲者はスメタナ(1824-1884)。チェコ出身。

・当時はハプスブルク家の支配するオーストリア=ハンガリー帝国の一部であり、「チェコ」という国家はなかった。

・とはいえ当時は「民族主義」という思潮がボヘミア地方(チェコのことです)にも流れ込み、独立を求める機運が高まっていた。(この思潮が後に第一次世界大戦にも影響を与えることになります。)

・そうした社会情勢のなかで書かれたのが『わが祖国』。このうち第2曲めが「モルダウ」。

・全曲を通すと70分あまりだが、「モルダウ」だけ独立して演奏されることも多い。

・モルダウ川の流れに自分の国の美しい情景を多く織り込み、『わが祖国』のなかでも抜きん出た完成度になっている(だからこれだけ単独で演奏される)。

・曲のストーリーは次のとおり。
モルダウの源 → 川はしだいに太くなる → 森の狩り → 農民の結婚式 → 月の光 →再びモルダウの情景 → 聖ヨハネの急流 → 大河となったモルダウ → 「高い城」のテーマ
(高い城のテーマとは、全曲を通じて登場する短いメロディーです。この曲が要所要所で登場することで作品に統一感が生まれているのです。)

・聴くときの注意点は、たとえば冒頭のフルートが水源の始まりを、弦楽器のピチカート(弦を弾くポンという音)が水滴がしたたる音を、といったようにいろいろな情景を描いているわけですが、演奏家がどこまで大自然のニュアンスを表現しているかがポイントとなるでしょう。

こちらの演奏はかなり古いですが、一つ一つの音に意味を持たせようとしている様子が伝わってきます。モルダウのメロディーにも哀愁と気品が感じられます。(ぜひヘッドホンなどでお聴き下さい。)

(指揮:ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、録音:1951年)

「モルダウ」のピアノ編曲版の楽譜はどこにあるの?

imslpというサイトはご存知でしょうか。


では著作権の切れた楽譜がPDFで公開されています。もちろん無料です。

「モルダウ」もありました。


上記URLからArrangements and Transciptionsを選ぶと、ピアノ編曲版の楽譜があります。

中島健人さんが弾いたのと同じバージョンかまではわかりませんが、ともあれ無料で楽譜が見られるというのは嬉しいもの。
ピアノができる方はぜひチャレンジして頂ければと思います。


蛇足:『わが祖国』全曲を収めた(つまり「モルダウ」も収録された)CDとして評判の高いものとしては、スメタナと同じチェコ出身の指揮者クーベリックによるものが、この曲の模範的演奏として知られています。