先日、BS朝日で放送された『4K大型時代劇スペシャル紀州藩主・徳川吉宗』。
このドラマのヒロイン・市役で渡辺麻友さんも出演しました。

インタビュー記事もZAKZAKに掲載されていましたが、これが実に渡辺麻友さんらしい表情が現れていて、アイドル時代から変わらない、「ある性格」を感じさせる内容になっていました。

本日の記事として、自分なりに考えたことを文章化しておきたいと思います。

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渡辺麻友さんのインタビューに彼女らしさを見た

インタビューでのやりとりで、彼女はこう語ります。
<17年末にAKB48を卒業し、18年は芸能界で1人で活動した1年でした。麻友さんにとってこの1年はどんな時間でしたか?>

 「17年まで11年間AKB48に在籍していて、辞めて初めて1人で過ごす1年だったので、18年は自分を知ることができた1年だったかなって思います。結構、知らないことが多かったです、自分について」

<渡辺麻友という人間は自分から見てどんな人間でしたか?>

 「出来損ない(笑)」

<それは言い過ぎでしょ(笑)>

 「本当に出来損ないです(笑)。私って何にもできないなって」

すでに皆さんもご存知のとおり、彼女はAKB時代から「私には何もない」と語ることがありました。王道アイドルとしての道を歩むことになったのもそうした自覚があったからだとか。

しかし、果たして彼女には本当に「何もない」のでしょうか?

私なりに強調したいのは、今回抜擢されたドラマが時代劇である点です。
元アイドルである彼女のファン層は比較的若い方が多いはず。しかし時代劇はどちらかと言えば年配の方が楽しむコンテンツですから、いわば今回は「アウェー」での戦い。

それでもおそらくオーディションを経ての起用――しかも4K放送ということでテレビ局としても力が入っているに違いない――ですから、制作陣としても彼女のキャラクターに期待することろが大いにあったはずです。

「何もない」人が、果たして大型番組に起用されるでしょうか?

私なりに考えた結論はこうです。

「本当に大切なものは目に見えない」

使い古された言い回しですが、彼女には過去10年以上、自分の務めを全うしてきたという実績があり、そのことが「信頼」として蓄積されているはずです。

歌唱力や演技力はまだまだ伸びしろがあるかもしれません。
しかし「何もない」という自覚が真摯な努力の原動力となり、ひいては信頼の蓄積につながっていった――。私はこう考えています。

2018年には時代劇に出演したり、ヤクルトのCMにも起用されました。
AKB時代にはNHK交響楽団とも共演を果たしています。

こうした仕事や、今回の『徳川吉宗』はクリーンなイメージがなければ到底巡ってくることはなかったはずです。
繰り返しますが演技力などの目に見える技能は確かに伸びしろがあるかもしれません。
しかし彼女にとっての最大の資産は「信頼」という目に見えないものである――私はこう考えています。

渡辺麻友さんの変化に大いに期待

<今後も時代劇には出続けたい?>

 「出続けられるなら、ぜひお願いしたいです。演技はまだ未熟ですけれども、やっぱり時代劇って、俳優として全員が全員出られるというわけではないですし、そこで演じられて活躍できるというのはとても貴重なことだと思うので、また機会をいただけるように努力していきたいです」

私はかねてより、彼女に時代劇への適性があると考えていました。
曲がりなりにも今回大役に抜擢され、自分の考えが的中したようで内心喜んでいます。

皆さんもご存知のように、彼女は自分からあまり情報発信をするタイプではありません。
ブログ記事やツイートの数も多い方ではありません。

これは彼女のある個性の現れだと思います。

つまり、彼女は自分のエゴではなく演じるべきキャラクターを演出家の意図に沿って丁寧に表現しようとするタイプの表現者ではないでしょうか? 
脚本を自分なりに読み解き、自分ではなく登場人物という他者の個性を活かそうとするタイプではないでしょうか?  
(『いつかこの雨がやむ日まで』のひかりを演じる彼女を見ていてそう感じました。)

「時間をかけて、まともな人間になります!努力していきます!」

こう渡辺麻友さんは語っています。

「アイドル時代は感情を殺していた」と別の機会に語っていた彼女ですが、これからおそらく様々な感情を経験して人柄に深みを増してゆくに違いありません。

私自身はヴァイオリンを演奏しますが、よく楽譜の背後にあるものをイメージする必要性を先生から力説されます。

ただ曲を演奏するだけではロボットと変わらないのであり、大切なのはなぜ作曲家がこういう音符を記したのかをイメージすること・・・、それが作曲家のメッセージを汲み取り、音楽として表現することである・・・。そう言われます。

ドラマにも同じことが当てはまるでしょう。
彼女が女優業を続ける限り、いつか例えば地下鉄サリン事件だったり沖縄戦だったり原発事故だったり・・・、そうした深いテーマと女優として向き合う日がくるはずです。

そのとき彼女は脚本をどう読み解き、どう台詞として、演技として表現するのか・・・。
そのために日々どんな感情を蓄積し、どういう心の襞を形成していくのか・・・。

私は、変化することが生きていくうえでの極上の調味料だと考えています。
まもなく25歳を迎える渡辺麻友さんがどう変化し、そして演技にどう反映されてゆくのか・・・。

これからも彼女の変化そして活躍を見守り続けたいと思います。



追記:以上、さんざん評論家めいたことを書いたわりには、私自身は残念ながらBS朝日『4K大型時代劇スペシャル紀州藩主・徳川吉宗』は未見です。
理由は簡単で、アンテナがなかった・・・。
いつもTVをあまり見ないので、そのしっぺ返しをこんなところで受けました!
・・・ここはオンデマンド放送に期待したいと思います。

追記2:本記事作成にあたり参照したインタビューはこちらです。




追記3:控えめな性格の渡辺麻友さんだからこそ、芥川龍之介の「手巾」を舞台で演じてみたら適役ではないかと思っています。「婦人は、顔でこそ笑つてゐたが、実はさつきから、全身で泣いてゐたのである」。・・・ピッタリな気がしませんか?