1837年、バイエルン王国に生まれたエリザベート。

ハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフと結婚し皇妃となるものの、束縛の多い宮廷の生活に馴染めず、欧州を旅する謎めいた生活を続けたことで知られています。

その人生はスイスでテロリストの凶刃に倒れたことで突如として終止符が打たれました。

劇的な生涯は後に神格化され、没後およそ100年ののちミュージカル『エリザベート』として世界中に知られるに至りました。

日本でも宝塚、そして帝国劇場で上演され(私も2016年に観ました)、2019年にも改めて舞台にかけられる予定となっています。

エリザベートは類稀な美貌でも知られていましたが、そのダイエット方法とは――?

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(エリザベート。画像:ウィキペディアより)

ハプスブルク皇妃、エリザベートのダイエットとは

欧州随一の美貌で知られた彼女の身長は172cm、体重は50Kg。ウェストも50cmをキープしていたと伝えられています。
たまに彼女が国民の前に姿を表すとたちまち歓呼の声に包まれたと言われています。

その彼女がまさに年齢不詳? とも言うべき美貌を保つために行ったダイエットは、なんともストイック・・・、を通り越して極めて過酷なものだったようです。

エリザベートは健康と若さを保つため、王宮の一室を改装し吊り輪や平行棒といった当時の主だったトレーニング器具を揃えた部屋を作らせ、毎日美容体操を欠かさなかったそうです。
さらには化粧室の奥の部屋にはイギリスから輸入した湯船を設置。
これに牛乳の搾りかすと蜂蜜、オレンジを混ぜたものを入れ。毎朝裸で水浴することが日課だったそうです。

しかも! 毎日体重を測り、断食も繰り返し行っていました。
何日もの間肉類は一切口にせず、ブイヨンと果物あるいは卵5~6個分の卵白に食塩で味付けしたものだけが1日の食事ということもあったとか。

このように「太ること」に対するエリザベートの恐れは、しばしば拒食症と解釈されることもあるそうです。

ちなみに、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」によると、女性の推定エネルギー必要量は、身体活動レベルを「高い」に設定すると18~29歳で2,200kcal/日。
エリザベートの食事内容から察するに、その半分くらいのカロリーしか摂取していないようにしか見えません・・・。

乗馬にも長けていたエリザベート

エリザベートはこのような激しいダイエットを実践するだけでなく、スポーツ特に競歩や乗馬に打ち込んでいたと伝えられています。乗馬スタイルというのも、貴族的な優雅さとはかけ離れた、川や谷を飛び越えて駆け抜けていくという極めて激しいものだったようです。

乗馬に情熱を注ぐあまり、イギリス、フランス、アイルランドに滞在し狩猟や競技会にも参加していました。


エリザベート、美しさを見せるためのこだわりがあった

自分の美しさの見せ方にもこだわりがあったようです。

今に伝えられる彼女の写真や肖像画を見ていると、一定の法則のようなものがあることに気づくでしょう。
そう、これらはほとんどすべて、後ろ姿や横顔を捉えたものなのです。
おそらくは自分の美しさが強調されるような角度やシルエットを研究していたのでしょう。

しかしやはり人間は必ず年を取るもの。
35歳を過ぎてからは写真撮影を拒むようになり、自らがモデルになった最後の肖像画は42歳の時。
これを最後に、画家たちは想像を交えながらエリザベートの姿を描かなくてはなりませんでした。

エリザベートのコンプレックスは歯並びだった?

エリザベートにも欠点(コンプレックス?)がありました。

彼女は歯並びが美しくないことを気にしており人前で笑ったり口を開けたりすることはほとんどありませんでした。

肖像画や写真でも端を隠すために口を閉ざしています。

人間は何かしら欠点やコンプレックスがあることを示すエピソードではないでしょうか。

以上、参考文献はこちらになります。


おわりに

現在ではウィーンのホーフブルク王宮に「シシィ博物館」(シシィ=エリザベートの愛称)として彼女の足跡や人となりを知ることができる施設があり、その美貌を保つ秘訣だけでなく、孤独な内面も伺い知ることができるようになりました。

この記事をお読みくださった方は、おそらくミュージカル『エリザベート』に関心がある方ではないでしょうか。
ミュージカルのきれいなメロディの陰には知られざる皇妃の悲哀があったことが偲ばれるウィーン訪問の折には、必見の博物館となっています。ぜひ訪れて頂ければと思います。

ちなみに、ミュージカル『エリザベート』のドイツ語版(つまりオリジナル版)もアマゾンで簡単に入手することができます。
日本語版は知ってるよ、じゃあもともとのドイツ語ではどんな風に歌われているの? ということが気になる方はこちらのCDでお調べいただけます。


「私だけに」は原語・ドイツ語ではこんな風に歌われているようです。