めんどくさい。

誰でもそんな気分になったことがあるはず。

やらなきゃいけない。でもめんどくさい。

今日は「めんどくさい」に効く名言、「困難は分割せよ」(デカルト)をご紹介いたします。

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(デカルト。出典:ウィキペディア)

困難は分割せよ!

デカルトは著作「方法序説」で、「困難は分割せよ」という言葉を残しています。
これは、「難しい問題であっても、詳しく見ていくと手のつけやすい問題の塊である」という意味です。

夏休みの宿題を考えてみてください。
こんな分厚い問題集解けるわけないだろ! そう思っていませんか。でも夏休みが30日あったとすると、日割り計算してみると1日3ページ程度で完了したりするものです。

分割して少しずつ対応することで、大きく見えていた問題が実は小さな問題の集合体であったことが分かるでしょう。

宿題に限った話ではありません。
ビル・ゲイツは、「問題を切り分けろ」とよく口にしていたそうです。

元マイクロソフトのプログラマー、中島聡氏は「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」でこう述べています。

マイクロソフトがパソコンメーカーにソフトを依頼されたとき、ある技術的な問題により、パソコンメーカーから苦情が来たことがありました。クライアントがたいそう怒っているということで、社内は混乱していました。とにかく、原因の技術的問題を解消しなければこの問題は収まらない。マイクロソフトの社員はみんなそう思い込んでいました。

そんなとき、ビル・ゲイツは困難を分割しました。

技術的問題はクライアントの怒りからは独立した問題だと。どうやらクライアントが怒っているのは技術的問題よりも、担当者との性格の不一致に原因があったようです。そうして担当者は替えられ、クライアントをとにかくなだめる任務に就くことになりました。他方で技術的問題はエンジニアたちが全力で解決に向かってまい進していました。

こうしてクライアントとマイクロソフトの関係は、なんとか立ち直ったのです。技術問題と外務問題を切り分けることで、この事件は終息を迎えました。

このように、大きな問題を分割することで、対処しやすいものに変換させたとか。

私にはビル・ゲイツのこのような仕事に向き合う姿勢が、宮本武蔵の一乗寺下り松の決闘で用いた戦術とどうしても重なってしまいます。

宮本武蔵はある時吉岡道場一門、総勢73名に対してたった一人で立ち向かうという試練を迎えます。
彼の生涯において、巌流島の決闘と並び称される試練の場でした。

宮本武蔵はどうやって戦ったのか。

その答えは、「73名を一気に相手にしない。かならず一対一の勝負に持ち込む」ことでした。

敵を狭い山道や田んぼのあぜ道におびき出し、向き合う敵は常に1名のみとする状況を作り出したのです。一対一の勝負なら武蔵は絶対に敗れません。
武蔵の目論見は的中し、吉岡一門をついに下します。
これも、大きな問題を小さく切り分けることによって対応可能なものにした一例と言えるでしょう。

ルロイ修道士を覚えていますか

ルロイ修道士。人によっては中学3年のときの国語の教科書に井上ひさしの名作小説「握手」が掲載されていたかと思います。その中に登場する人物です。

ルロイ修道士は、戦前、カナダから来日し児童養護施設で園長先生として働いていました。
以来、戦中戦後の長い月日が経過し、重い病にかかった彼は自らの余命を悟ります。
そしてかつての教え子へのいとまごいのため、最後の語らいの場を持とうとしていました。

ルロイ修道士は「わたし」に語ります。
「仕事がうまくいかないときは、この言葉を思い出してください。『困難は分割せよ。』あせってはなりません。問題を細かく割って、一つ一つ地道に片づけていくのです。ルロイのこの言葉を忘れないでください。」
国語の教科書では定番の小説となっているようですが、井上ひさしの作品ではその他にも「ナイン」などがよく教材として取り上げられています。(「握手」「ナイン」ともに講談社文庫『ナイン』に所収されています。)
学生時代に読んでいるとなかなか気づかないようなフレーズですが、実際に働くようになると心に響く言葉の数々が、彼の小説には散りばめられています。


まとめ

「困難は分割せよ」。もうこれ以上の説明は不要だと思います。
めんどくさい、やる気が出ない、まったく手がつけられない。
そんな時にはぜひ思い出してください。「困難は分割せよ」。


参考文献