サントリーホールに足を運ぶのはかなり久しぶりでした。

なぜかここ1、2年ほど東京オペラシティとか東京芸術劇場とか紀尾井ホールとか東京文化会館とか・・・、ばかりで不思議とサントリーホールに向かうことがありませんでした。

そうこうするうちに2020年は演奏会が軒並みキャンセルされて、今年の前半はコンサートホールに行くこと自体がなくなりました。

というわけで久しぶりのサントリーホール、本日(2020年10月18日)は日本フィルハーモニー交響楽団とヴァイオリニスト・辻彩奈さんの共演で、バッハの「シャコンヌ」、同じくバッハのヴァイオリン協奏曲第1番、2番、プログラム後半にブラームスの『交響曲第4番』。

サントリーホールでヴァイオリン一挺が鳴り響く「シャコンヌ」、いったいどういう響きになるのか??

私は自分もヴァイオリンを弾く関係でベリオのヴァイオリン協奏曲を調べる必要があり、ナクソスのCDを手にとったのが辻彩奈さんの演奏を知るきっかけでした。


実演に接したことはなかったので、ベリオの技巧的な楽譜をスラスラと美音で奏でていたイメージ(先入観?)先行で「シャコンヌ」を聴いてみると・・・。

bach


「シャコンヌ」、静謐さのなかに緻密さも漂う

「シャコンヌ」が演奏される直前の、お客さんが集中して聴き入ろうとするときの静寂からして「ああ、これだった!」という生演奏ならではのただならぬ空気感が感じられ、モニター越しの配信では味わえない「何か」を求めてコンサートホールに私たちは向かうんだという懐かしさがこみ上げてきました。

さて辻彩奈さんの「シャコンヌ」ですが、一つ一つの音符を精緻に積み上げていく繊細なガラス細工を思わせる音づくりで、ではちょっと触れると割れてしまうのかというとそうでもなく、そもそもバッハの音楽自体が堅牢なので、音符の一つ一つを透明に磨き上げてみたような強さも感じさせるもの。

なおかつ難曲でありながらも余計な必死感を感じさせず、ステンドグラスから柔らかい光が差し込む教会のなかにひとりで佇んでいるような不思議な静謐さをも感じさせるもの。

私はこれまで何人かのヴァイオリニストの「シャコンヌ」の実演に接してきましたが、そのどれもが違った演奏スタイルでなおかつ説得力に富むもの。辻彩奈さんの「シャコンヌ」もまたはっきりと、しかし押し付けがましいところのない品のあるバッハ像が表現されていました。

本日の日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会は、ホールをざっと見渡したところ、だいたい4割くらいのお客さんの入りでした。後半のブラームスも晩年の作曲家の心情を描きつつも、どこか澄み切った音色が響きわたる好演奏。聴き逃した人はもったいない・・・。

入国制限が実施されている昨今、そのおかげ(?)もあって日本人とくに若手演奏家が抜擢されることも多く、いろいろな面で発見が多いというのが個人的な感想です。
11月も引き続き積極的にコンサートホールに向かいたいと思います。


(こちらが私が参考にしているベリオのCDです。一つ一つの音符が丁寧に積み上げられていく、これを「美しい」というのですね・・・。)