オーケストラの演奏会に出かけるのは2020年2月から7ヶ月ぶりのこと。

東京オペラシティコンサートホールで行われた東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の第336回定期演奏会に足を運んで、オーケストラは生演奏に限る! 配信ではやはりあの迫力を味わうことは不可能なのだという当たり前のことを確信しました。

この日の1曲めはバッハ作曲、エルガー編曲の「幻想曲とフーガ ハ短調」。




エルガー晩年に書かれたこの作品は、もしバッハが現代のオーケストラを自在に用いることができたらどうなっていただろうと仮定して書かれたもの。

私はこの曲が実際に演奏された2000年のBBCプロムスのDVDが手元にあるのでどういう曲かは事前に知っていました。

・・・いましたが、「知っている」のと「感じる」というのはまったく別物なのです。


音楽はコンサートホールに足を運んでこそ

最近では有料生配信が増えていますが、これは人によっては通信速度や、隣の家の電波が干渉したりといった問題があります。

自宅のオーディオ機器の性能というボトルネックもあります。

となると演奏会場の空気感、音の拡がりや圧、会場全体の連帯感を自宅で100%再現することは正直言ってどれだけ技術が進歩しても不可能でしょう。
結局音楽はコンサートホールに足を運んでこそその価値が初めて分かるものです。

今回のバッハ作曲エルガー編曲の「幻想曲とフーガ ハ短調」でも前半の幻想曲の部分の悲壮感あふれるメロディを弦楽器セクションが奏でるところといい、後半のフーガを各楽器が緻密に積み上げて音の建築物を構築するところといい、奥行きがあり天井も高いコンサートホールだからこそもともとバッハとエルガーが想定していたであろう響きを味わうことができたと思います。

そのほかの曲もジョンゲン『オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲』でオルガンの朗々と響き渡る様を堪能でき、オルガニストでもあったフランクの『交響曲』で転調の魔法にうっとりとなり、そもそも音楽をリモートで味わうことの限界と、生演奏に立ち会うことの可能性を二つながらに感じることができたと思います。

それにしてもバッハ作曲エルガー編曲の「幻想曲とフーガ ハ短調」を定期演奏会の曲目に選んでくるあたり、キラリと光るセンスを感じます。バッハの編曲版は有名でもそれほど頻繁に演奏会で取り上げられることはありませんから、この点でも東京オペラシティに足を運んだ価値はあったと思います。


追記:この記事でお話している2000年のBBCプロムスのDVDというのはこちらのことです。