あまり知られていませんが、ブラームスの歌曲「5つのリート」Op.105より第1曲め「調べのように私を通り抜ける」にはハイフェッツの編曲によるヴァイオリン版があります。




聴いてみればおわかりのように、ブラームスそのもの(当然か)。

ただこれが結構難しくて、というか音符をたどるのはそれほど難しいわけではないのですが・・・、なにしろ変ニ長調、つまりフラット5つ。

まさか「5つの歌曲」だけにフラットも5つ・・・なんてことはないでしょうが、音程のとりづらいこと、とりづらいこと・・・。

しかも臨時記号がけっこう使われているのでだんだん何の調なのかどうでもよくわからなくなってきてしまいます。
臨時記号を使っていろんな調へ揺れ動くことで戸惑いとか懐かしさとかを表現しようとしているとしたら、それこそまさにブラームスそのものですが(だからブラームスだってば)。

演奏自体は2分半ほどで短いもの。ヴァイオリンの発表会で演奏するもよし、リサイタルのアンコールに使うもよし。美しいメロディであり、しかも演奏頻度は絶対に高くないので「あ、この人、通なんだ」と思ってもらえること間違いなし。

おすすめのCDですが・・・、というかそもそもこの曲を収録したCDで簡単に入手できるものはほとんどありません。

一番簡単に手に入るのは佐藤久成さんのCDでしょう。
ベートーヴェンの超個性的な『春』も収録されており、ヴァイオリン好きの人にとっては「こういう表現もあるのか!」と唸ることでしょう! 好き嫌いは分かれるはずですが・・・。




もう1種類挙げるとしたら、伴奏がオーケストラ編曲版を使っているニコラ・ベネデッティのものでしょうか。


ニコラ・ベネデッティというと日本ではあまり馴染みがうすいですが、スコットランド出身のヴァイオリニストでイギリスではBBCプロムスにも登場するなど、非常に高く評価されているようです。
こちらのCDは「コンテンプレーション」が世界初録音ということになっていますが、おそらく「オーケストラ版が」世界初録音という意味ではないかと思います。

楽譜の入手先

有名な作品ではないので、楽譜を手に入れるのも一苦労です。
IMSLPにも無料楽譜は2020年9月現在、アップロードされていません。

私はヤマハのウェブショップから取り寄せしました。
ヴァイオリンのパート譜は1ページ、ピアノの伴奏譜は3ページ。
これで2,300円+消費税+配送料で3,000円くらいかかりました。取り寄せには4週間くらいかかっています。

これを高いと感じるか、「3,000円でこんな珍しい楽譜が手に入るなんて!」と思うかが、レパートリーを拡げられるかどうか、そもそもヴァイオリンを好きかどうかのリトマス試験紙なのかもしれません・・・。