新進気鋭の日本画家、葛西由香さん。
私はたまたま立ち寄った北海道立函館美術館で開催中だった「道立美術館コレクション選」で作品を見かけました。

じつは私は日本画というとものすごく縁遠い感じがしていて、大学時代に英文学専攻だったり、普段クラシックを聴いている関係で欧米の絵画はそれなりに見てきました。
ロンドンやパリ、ウィーンなどヨーロッパの主だった美術館にも足を運びました。

が、日本人でありながら日本画はこれまでまったくと言っていいほどノーマークでした。

自分がヴァイオリンを弾く関係で、ヴァイオリニスト・千住真理子さんの兄、千住博さんの作品をいくつか見たことがある、著作を読んだことがある、というくらいで完全にビギナーでした。

その私が偶然見かけた、葛西由香さんの日本画「明治物語」が・・・。

うーん、想像の斜め上すぎて、でもそういう変化球なところがアートど真ん中な雰囲気でした。

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葛西由香さんの奇想溢れる「明治物語」

美術館のキャプションによると1993年生まれ、網走のご出身でますますの活躍に期待がかかります。

肝心の「明治物語」ですが、「きのこたけのこ戦争」(明治製菓「きのこの山」対「たけのこの里」)を題材にしています。

どういうことか? というと鎌倉時代の「平治物語絵巻」の「三条殿夜討巻」を下地にしており、これは藤原信頼、源義朝らの軍勢が後白河院の御所を襲撃し、拉致するというもので、ボストン美術館に収蔵。合戦絵巻の最高傑作とされています。

その合戦絵巻の設定をインターネットで有名になった「きのこたけのこ戦争」つまりきのこの山とたけのこの里のどっちが美味しいかという、どうやら1980年代から始まった争いに移し替え、燃え広がる火炎から逃げまどうきのこたち、勢いづくたけのこ勢、溶けてぐにゃぐにゃになったチョコレート・・・、そして一つだけ潜むたけのこをかぶったきのこ・・・といった合戦の様子を日本画で表現しています。

もっと短く言うと、たけのこ勢がきのこ勢の陣営に奇襲攻撃をしかけ、炎上してしまうという作品なのでした・・・。

なんて自由すぎる発想なんでしょう・・・。

きのこ派の私としてはちょっといたたまれなくなりつつも苦笑してしまい、それでいてこれまで見てきた日本画ぜんぶを軽く超えてしまうくらいのインパクトがありました! 

美術館内は写真撮影禁止だったので画像がないとちょっと分かりにくいですが、こちらのウェブ記事には作品の一部が画像つきで紹介されています。

そもそも「平治物語絵巻」に「きのこの山」「たけのこの里」を組み合わせようというひらめき自体がユニークですが、芸術というのはそういう自由な発想があってこそ。

もし私が絵を描いていたらなんの発展性もないまま「静物画」ばかり量産していたはずで(というかこのブログ自体そんな風情だが)、そう思えば葛西由香さんの独創性が際立ちますね。

まだまだこれから日本画というジャンルの可能性を大いに開拓していってくださるに違いありません。
ああ、同じ時代にこんな画家の方がいると知れただけでも函館に来た甲斐がありました・・・。