渡辺麻友さんの主演ミュージカル『アメリ』。2018年春に東京と大阪で上演され反響を呼びました。 2018年5月22日、朝日新聞(大阪)の夕刊には渡辺麻友さんのインタビュー記事が掲載されています。

以下の引用は抜粋となりますが、
「私は不器用なので、めまぐるし過ぎる出来事をまともに受け止めていたら、心がもたないと思った。ある時から、本心を殺すというか、心を無にして、“アイドルまゆゆ”として生きることに決めたんです」
過去9回あった総選挙すべてで神7(かみセブン)(上位7位)入りを果たした唯一のメンバー。そんな輝かしい実績の裏側で、人知れず葛藤を抱えていた。

1人の人間に戻ったら、どんな新しい自分になるのだろう。卒業前は不安と楽しみが半々だったが……。

「忘れ物などのミスが多い、めちゃめちゃダメ人間でした。アイドル時代は優等生のイメージだったのですが、ぬけているんです」と苦笑する。

(中略)

 「一つの作品と向き合い、悪戦苦闘し続けられるのが、いままでにない感覚なんです。充実しています」
このように卒業前後の心境を語っています。

AKB48を卒業した当初は自分を評して「人間1年生」と言っていた渡辺麻友さん。
心を殺していたという言葉からは組織人として生きることの難しさがうかがわれます。

この記事を読んでくださっている方で、会社員の方もいらっしゃると思いますが、自分はこうだという意見を持っていても上司や組織の方針で別の意見を採用することになった場合、さも「私もそう思っていました」という顔で仕事をしなければならないという場面は多いはずです。

ましてや一般社会とは切り離されたような業界である芸能界に身を置き、芸能マネジメントの老舗ではなくガバナンスが後手に回りがちであったことが想像に難くない新興企業とともに仕事をしなければならなかったわけですから・・・。

そもそも子供が大人とともに仕事をするということ自体が同年代の学生と比べて極めて特殊な状況であり、子供一人では解決できないこと、理解できないことを目の当たりにしていたはずですから、一人でいることが好きな彼女にしてみれば相当なプレッシャーだったはずです。

そう考えると、「心を無にして」というのは彼女なりに心身の健康を保つための防衛策だったと言えるでしょう。


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一つの作品に腰を据えて取り組むことの喜び

この朝日新聞記事の「一つの作品と向き合い、悪戦苦闘し続けられるのが、いままでにない感覚なんです。充実しています」という言葉からは、ミュージカル主演を経験した喜びがにじんでいます。

アイドルのイベント例えば日本武道館コンサートなり「夏祭り」なりは基本的に単発の興行です。
バラエティ番組も瞬発力が求められるもので、その人の哲学なり歴史観や人生経験に基づいてじっくり考え抜かれた発言が重んじられるというものではありません。
他方でミュージカルは同じものを長期間にわたって繰り返し、その中で初日から千秋楽まで練り上げていくという違いがありますから、この「息の長さ」に新鮮さを感じていることの現れでしょうか。

そもそも芸能人が主戦場としている(とくに民放の)TV番組は製作がとかく安易な方向に流れがちなもので、最も「硬さ」が求められるニュース番組にしても例えばあおり運転など、日本社会全体から見ればミクロな出来事であってもそれがウケると分かると視聴者の「怒り」「悲しみ」などを刺激するような角度を付けて報道し、いつの間にかイナゴの大群のように(失礼)類似ネタの報道ばかりになり、やがてはまた別のネタへ・・・、という残念な傾向があることはお気づきかと思います。

本当にあおり運転のことを掘り下げる価値があると製作者が考えているなら、桜を見る会が問題だろうと、ゴーンが逃亡しようとあおり運転について継続的にニュースになっていてもおかしくありません。
そうならなかったということは、つまり・・・。
9年前もあれほど原発原発と言われていたのに、福島第一原発の廃炉作業は2050年ごろまでかかるらしくその社会的意義は以前も今も変わらないのに、最近ではニュースにもならなくなりました・・・。

さて話を戻して個人的な意見を申し上げますと、渡辺麻友さんはこうしたすぐに物事の風向きが変わってしまう「軽さ」に順応するのではなく、むしろ舞台女優としての技量を長い時間をかけてじっくりと磨き上げていただきたいと思います。(勝手なことを書くと、たとえば数十年後には草笛光子さんのような立場であってほしいです・・・。)
その意味でミュージカル『アメリ』は渡辺麻友さんが多くのものを吸収するための貴重な場だったはずです。

最近はGoogle Alertで渡辺麻友さんのニュースをチェックしようにもニュース自体が存在せず一ファンとしては寂しい限りではありますが、再び舞台を踏む彼女の姿を静かに待ち続けたいと思います。