宝塚が大好きだと公言している渡辺麻友さん。
2014年1月1日付朝日新聞にはこのようなインタビューが掲載されていました(懐かしい)。

タカラヅカ、愛の新世紀 新年特集第7部・宝塚歌劇 【大阪】

初観劇でトリコ、刺激受けてます
渡辺麻友さん(19) AKB48

自分でも驚くくらい、宝塚歌劇のとりこです。初観劇は2年半前。花組の蘭寿とむさんのトップお披露目公演「ファントム」でした。当日券を買うために、東京宝塚劇場で姉と2人で朝から並んで。2階の一番後ろでしたが、迫力に圧倒されました。
宝塚音楽学校を受験しようかと考えたことも。もし受かったら100期生だって“妄想”までしました。
兵庫県の宝塚大劇場にはもう数十回と通っています。1人で行ったり姉と行ったり。宝塚を見るようになって自分をより客観的に見られるようになりました。ファン心理もよくわかるし、見せ方も勉強になる。刺激をもらっています。
宝塚も、AKB48も、いくつかのチームに分かれています。どちらも、専用劇場で毎日のように公演し、タカラジェンヌさんには「組替え」、私たちにも「チームシャッフル」があります。AKB48は9年目。それを思うと100年ってすごい。これからも、ずっと愛し続けます!

宝塚歌劇団は小林一三が大正時代に立ち上げたもの。以後100年以上の伝統を誇ります。
渡辺麻友さんはもともとアニメ好きであることを公言していましたが、ある時期から大島優子さんの後継者と目されるようになりました。その頃からだったでしょうか、彼女を語るときに「ストイック」という言葉が徐々に用いられるようになってきたのは・・・。

「宝塚を見るようになって自分をより客観的に見られるようになりました。ファン心理もよくわかるし、見せ方も勉強になる。刺激をもらっています」という渡辺麻友さんの語り口からは、自分の趣味から刺激を受け、仕事に応用していった様子が伝わってきます。


stage

舞台に立つ人の気概とは

宝塚であれ、音楽であれ、ダンスであれ、舞台芸術が文芸や絵画、彫刻と決定的に異なるのは、その瞬間に表されたものがすべてであり、書き直したり削り直したりすることができないということです。

この記事をお読みの方で、実際に人前で音楽や踊りを披露したことのある方=舞台に立った経験のある方ならおわかり頂けるかと思いますが、どんなに偉そうなことを言ったところで、本番にお客さんを魅了することができなければ何の意味もない。

だからこそ、つべこべ言う暇があるなら少しでも練習しようと思うわけです。
まさに「ここがロドスだ、ここで飛べ」。
(私は年に何度か人前でヴァイオリンを演奏することがありますが、あるときは緊張のあまり本番中にヴァイオリンの弓を持つ右手がプルプルと震え、弦の上で弓がバウンドして大爆死しました。)

さて渡辺麻友さんが大好きだと語る宝塚歌劇団は一人ひとりが高い技能を持っているのはもちろんですが、団体としても強い結束力があります。
その「結束力」とは対照的に、一人でいるのが好きだと『アメリ』のパンフレットで語る渡辺麻友さん。
このパンフレットではその性格をややネガティブな観点から語っているようですが、宝塚を好きだという彼女にしてみれば、それは「一人ぼっち」というよりもむしろ「個人主義」と考えるべきではないでしょうか。

自分の世界観を大切にし、自分が考えていること、本当に貫きたいものは舞台で表現すればいい・・・。そう思っていたのかはわかりませんが、スキャンダルをおこすアイドルに不満を漏らし、真剣な姿勢がときにグループ内での孤立をすら招き、自分が所属しているにもかかわらず「真面目な人が損をするのがAKB」と組織人なら口にしないようなことまで言わしめたのは、心のなかにおそらく宝塚(または宝塚が端的に示しているような「何か」)を模範とする高い理想があったことを示唆しています。

「個人主義」といえばよく知られているように、戦前・戦中に軍部が目の敵にしたのが個人主義者でした。
特定のイデオロギーに染まった人物を政府の都合のよいほうへ転向させるのは簡単でも、煮ても焼いても食えないのが個人主義者であり、全体主義とは真逆だからです。

戦時中ほどではないにせよ、ソフトな全体主義らしきものは現代の日本でもときおり顔を出すことがあります。
「絆」「地域」「自治」「教育」などの一見美しい言葉で感情に訴え、冷静に判断する力を失わせ、必要以上に加熱した住民運動や地域・学校の活動が関係者に強く同調を迫り、結局は個人の自由が脅かされるのは誰しも経験したことがあるはずです。

渡辺麻友さんが抱えていた「生きづらさ」というのは、高いほうへ手を伸ばそうとする姿勢ゆえの周囲との摩擦であり、さらには私たちが暮らす社会のこのような点も含めて理解すべきパーソナリティではないか・・・。

以上はあくまでも個人の考えを述べたものにすぎませんが、朝日新聞のインタビュー記事を読み、そんなことをふと考えてしまいました。

今は渡辺麻友さんがもう一度舞台に立つ姿を一日でも早く見たい、強くそう思います。