まさかの緊急事態宣言&外出自粛でピアノやヴァイオリンのレッスンが中止になってしまったという人も多いはず。
かくいう私もその1人。私はヴァイオリンを弾いていて、モーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第3番』を練習中。

ところがというか、案の定というか、ヴァイオリンの先生から4月中のレッスンは中止だという連絡がきました。
3月もほとんどそういう状態で、下旬にちょっとだけレッスンをしたと思いきや4月にまた中止。

こういう状態のなかで、やっておきたいこととは・・・。

ピアノやヴァイオリンのレッスン中止期間中にやっておきたいこと

仮に新型インフルエンザが流行せず、緊急事態宣言もなかった場合は普段どおりのレッスンになっていたはず。
となると先生から指示される曲をさらうだけで手一杯になっていたのではないでしょうか。

逆に言うと曲に慣れる時間が浮くわけですから、別のことにエネルギーを使えるようになりますね。

ヴァイオリンで言うなら「音階」「ボーイング」(弓使い)を音程に注意しつつ弾くなど。

私ごときが言うまでもありませんが、ヴァイオリンは音程が命。

東京都にある国立(くにたち)音楽大学でも入試問題で音階を弾くよう指示されています。

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NHK交響楽団のコンサートマスター、篠崎史紀さんも著作『絶対! うまくなるバイオリン100のコツ』でこのようなことを書かれています。
音階練習以上に、基礎練習に適した方法はありません。それもただ弾き流すのではなく、ひとつひとつの音を確かめながら、ゆっくり弾くのがよいです。
私は、基礎練習は音階以外にはないと確信しています。
「無意識にできるようになるまで」身体の中に入れるべき基礎とは何でしょうか? それが音階練習です。
音階練習にはすべての手の形とパッセージが含まれているので、音階練習をやらなければすべてのパッセージが弾けません。逆に、音階練習をやればすべての曲が弾けるようになる、ということです。
音階練習をすることで、すべての手の形、バイオリンのポジションを身体の中に入れることができるのです。私は、音階ができなければバイオリンを弾くことはできない! と断言します。
このように、音階というのがヴァイオリン音楽の基本。
ハイフェッツの演奏がなぜすごいかというと、理由のひとつが一つ一つの音程がピンポイントでこれ以上ありえないほどの強烈な「正しさ」を持っているからではないでしょうか。

やはり、基本は侮れない

東京藝術大学の学生が、セヴシックを弾けなかったというエピソードがあります。
これはNHK交響楽団の団員、齋藤真知亜さんが『クラシック音楽を10倍楽しむ魔境のオーケストラ入門』という本で語っている、ご自身の学生時代のできごとです。

東京藝術大学在学中、自分がめざす表現の道に行き詰りを感じていたときに出会った師匠であるJさん(NHK交響楽団の当時の団員)に初めて会った時にこう言われます。

J先生は、「じゃあ、セヴシックを弾いてみてください」と言いました。
セヴシックとは、ヴァイオリン初心者が最初に覚えるべき基礎中の基礎をまとめた教本で、僕もヴァイオリンを始めたばかりの子どものころに習っていました。「運指」(フィンガリング)や「運弓」(ボーイング)の基本が網羅されているだけで、ある程度弾けるようになると面白くもなんともない本ですから、正直なところ「何をいまさら」と思ったものです。
ところが・・・弾けませんでした。
基礎の段階はとっくに過ぎ、すでに中・上級者の世界に踏み込んだつもりでいたのに、実は本物の基礎ができていなかった、あるいは忘れてしまっていたということです。
言うまでもなく東京藝術大学には音楽を学ぶ優秀な学生が日本全国から集います。
その東京藝術大学の学生ですらセヴシックを弾けていないというわけですから、いわんや私のようなザコキャラにおいてをや。

しかし普段のレッスンに追われていると、こういう基礎的なことがついつい後回しになってしまいがちです。なぜ自分が下手くそかというと、基礎があやふやだからなんですけどね・・・。

であれば、ピンチはチャンス。

レッスンがない時期こそ逆に貴重なシンキングタイムととらえて基礎技術の磨きなおしに集中するというのも一つの手だと思います。

5月の連休が終わればおそらく緊急事態宣言も解除に向かい、レッスンも再開するでしょう。
その時先生は私達の演奏を聴いてなんと言うでしょうか・・・。