新型コロナウイルス感染拡大を受けて、SNSではデマが乱れ飛び、スーパーでトイレットペーパーが買い占められるという出来事がありました。

このことを日経新聞が記事にしたので読んでみると・・・。

書かれていたことは私が思っていたこととかなり違っていました・・・。

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SNSのデマ退治が逆に買い占めを生んだ

日経新聞記事にはこうあります。

騒動の発端とされたのが、2月27日午前10時過ぎに投稿された「新型コロナの影響で中国から輸入できず、品切れになる」との投稿だ。
後にデマだったと断定されたが、分析ではこの投稿そのものは全く拡散していないことが判明した。別アカウントによる類似のデマ投稿も2件あったが、いずれもほとんどリツイートされていなかった。

一方、デマを否定する投稿は27日午後2時ごろから急増し、同日中にツイッターのトレンド上位に入った。リツイート数が数千件に及ぶと世間の話題になった目安とされるが、今回のデマ打ち消しの書き込みはわずか半日で累計9万を超えた。

各業界でもツイッターは流行発見の道具として定着しており、すぐに他メディアにも波及する。27日夕方以降はニュースサイトや民放番組も取り上げ始め、関連情報はさらに拡散していった。翌28日にはデマを否定する累計リツイート数は30万を突破した。

デマ投稿をそのまま目にした人はほぼいないのに、デマ否定の投稿が爆発的に広がるという皮肉な状況が生まれた。デマを否定する本人は「正しい情報を広めたい」というつもりでも、受け手には「そんな噂があるなら、実際に品不足が起こるかもしれない」と連想する人も出てくる。
実際、日経POSが示した全国のスーパーの販売状況では、デマ否定投稿の急増と同時にトイレ紙の品不足が進んだ様子がくっきり現れた。

(2020/4/5 18:00日本経済新聞 電子版より)

デマを否定するリツイートをした人は、よかれと思ってやったに違いありません。
ところが現実に発生したのは、そんな善意の真逆のことでした。

地獄への道は善意で舗装されている

「地獄への道は善意で舗装されている」。これはヨーロッパのことわざです。
このことわざの一般的な解釈は、「悪事または悪意は、善意によって隠されているものだ」、というものである。あるいは「善意でなされた行為であったとしても、その実行により意図せざる結果が招かれる」、というものである。簡単な例でいえば、コイに代表される外来種の導入が、導入当初には予期できなかった繁殖と行動から後に迷惑行為となった、環境を守ろうとして行った行為が、かえって環境を破壊していた、などである。
ウィキペディアにはこのように説明されています。
よい意図をもってなされたことであっても、それが状況を悪化させてしまうことがあります。
派遣労働者が安定して働けるようにと思って制定した法律が、逆に一定の年数に達した時の雇い止めを誘発してしまったというのは分かりやすい例だと言えるでしょう。

日経新聞の記事が取り上げたように、SNSでの善意の投稿が社会的混乱を招くのも一例ですね。

しかも厄介なことには、「地獄」を招いてしまった人は善意でやっているがゆえに「悪いことをしてしまった」「失敗は二度と繰り返すまい」という意識を持ちづらいということなのです。

SNSは基本「言いたい放題の場」

今回の場合はさらに後味が悪いことに、SNSを通じて(意図的にではないにせよ)集団的に行われたということです。
個人が何らかを狙ってやったことであれば、その責任を問うことはできるでしょう。
しかしトイレットペーパー買い占め騒動の場合は「善意で」「たくさんの市民が」行ったことの帰結です。

ということは一人ひとりの責任をいちいち追求することができず(誰が? 誰を?)、また反省の機会もいっさい与えられないということであり、つまり同じようなことがこれからも確実に繰り返されてしまうわけです。

SNSは対面のコミュニケーションではありません。
とくにツイッターの場合は140文字という制約があるために十分な議論・検討が行われないきらいがあります。基本言いたい放題の場であり、公論形成には不向きです。

混乱時にSNSを利用するには

東日本大震災のときもやはりSNS上では「・・・という地域では・・・らしい」のような流言飛語が飛び交い、混乱を招きました。

SNSが悪いわけではなく、あくまでもユーザーが平常心を保っているか動揺しているかがそのまま投稿に反映されているようです。

2020年3月12日放送の『クローズアップ現代+ 「新型ウイルスでもネットに拡散 追跡!トレンドブログ」』では、解説者の方が「その情報は自宅の玄関に貼っておける内容か?」がインターネット上に情報を投稿するときのチェックポイントになっていると述べていました。

自分の投稿を目にしてくださっている方を振り回さないためにも、とくに社会的不安が広がっているときは十分に慎重にSNSを利用したいものです・・・。