19世紀最大といっても過言ではないピアニスト、フランツ・リスト。
彼の超絶技巧はヨーロッパを熱狂させ、なんと音楽を聴きながら失神してしまう女性も続出したとか。

ハンガリーに生まれフランスで教育を受け、ヨーロッパ中をめぐる長いツアーに出かけて名声を轟かせました。

人生の後半はワイマールの宮廷楽長という立場で作曲、指揮にいそしみました。

彼のイケメンエピソードは主にヨーロッパ横断ツアーのときに集中しています。
1838年4月、ウィーンで幕を開けた公演は1847年まで続きます。
西はポルトガルから東はトルコ、ロシアまで。
公演回数は1,000回、訪問都市はおよそ260と伝えられています。

彼がもともと端正な顔立ちをしていただけに、彼の指先から繰り出される数々の技巧に誰もが(とくに女性が)酔いしれたと言われています。

浦久俊彦さんの『フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか』という本にはこうかかれています。

彼の前にひざまずき、指先にキスさせてもらえるよう許しを請う女性がいるかと思えば、別の女性は、彼の紅茶カップにあった飲み残しを、自分の香水瓶に注いだという。あるロシアの淑女たちは、船で旅立つリストを見送るためだけに、大型汽船を楽団付きでチャーターしたという。

(中略)

ビートルズ、クイーン、マイケル・ジャクソン。彼らは、失神する女性ファンを続出させた「現代版リスト」ともいうべきスーパースターたちだが、この失神は(中略)「過呼吸」が原因と思われる。

逆に、「浅い呼吸」しかできないために、失神するケースもある。ヨーロッパの古典文学には、淑女が失神するシーンが数多く登場する。これは、当時の上流階級の女性たちが着用した「コルセット」が原因と考えられる。彼女たちは、ウェストを締めすぎて浅い呼吸しかできないために、つねに貧血状態で、刺激に弱かったといわれる。

どういうわけか、ピアニストの(ギタリストも)世界にはこういう「アイドル」が時折誕生します。
なぜだか「アイドル」としてのトランペッターやヴァイオリニストやチェリストは生まれませんが、ピアノとギターだけはなぜか誕生します。

1985年のショパン国際コンクールで一躍有名となったブーニン。
NHKで取り上げられたことがブームの火付け役となり、両国国技館という普通はそんなところでクラシックのコンサートをやらないだろうというところで公演を行ったこともあります。

そういう状態になってしまうと、「音楽」そのものよりも「ブーニンを見た」ということの方に誰もが注目するようになってしまいます。
ビートルズファンがライブ会場で騒ぎすぎて音楽が客席まで届かなくなり、ジョン・レノンが「ビートルズのコンサートは音楽とは関係無い」と言うようになったとの似たようなものでしょうか。

F.Liszt
(フランツ・リスト。画像ウィキペディアより)

なぜピアニストがアイドルになるのか

そもそもピアノという楽器の特性が、一台で音楽を生み出すことができるという点にあります。ヴァイオリンには無伴奏というジャンルがあり、やはり単独で音楽を作れますが音量やビジュアル的インパクトはピアノには負けます。

だからなのか、ベートーヴェンもブラームスもピアノ協奏曲は複数書いたのに、ヴァイオリン協奏曲は一度しか作っていません。「この楽器とオーケストラを協演させるのって物理的に厳しいよね」という限界を感じてしまったのでしょうか。
彼らの先輩であるモーツァルトも自分で演奏するためにヴァイオリン協奏曲を5曲立て続けに作曲しましたが、そのあとはまったく作らなくなりました。しかしピアノ協奏曲は27曲も・・・。やはりモーツァルトもピアノのほうがお気に入りだったのでしょう。フランス革命前後のピアノの能力は数十年後のベートーヴェンの時代よりも格段に劣っていたはずなのですが・・・。

そのベートーヴェンが生きていた時代は産業革命と重なります。この時代を経てピアノの能力は格段に進化し、フルコンサートグランドピアノにはオーケストラと十分渡り合えるほどの表現力があります。

それだけの能力を十分に引き出し、ささやくようなピアニッシモから轟然と鳴り響くフォルテシモまで使いこなす若くて凛々しいピアニストがいたら、そりゃ当然アイドルとして祭り上げられて当然ですよね・・・。

どういうわけか、リストと同じ時代を生きたショパンは非常に人気が高く、ピアノを弾いている女の子たちは必ず「英雄ポロネーズ」や「幻想即興曲」を弾きたがります。
が、リストのことはあまり知らないというのが大抵のパターン・・・。

いまではボックスセットでCDが一枚あたり300円程度で買えてしまいますから、まとめ買いして「リストの曲ならうちにいっぱいあるよ」(CD貸そうか?)という謎の自慢を女の子にするのもいいですね(普通は逆に避けられると思うが)・・・。

というか、こういうふうに一気に買ってしまわないと中途半端に曲が揃ってしまい逆に非効率だったりするもの。
この記事を作成している2020年3月時点では新型コロナウイルスのために誰もが外出を控えるようになっています。結局家にこもりがちになります。そんなときに一気にリストの曲を聴いてみるのも一つの手ではありますね。

私はこちらのセットを買いました。10枚でおよそ2,500円。ということは1枚250円。
新品でありながら、ブックオフのCDたたき売りコーナーよりも安価です。
音楽はあくまでも芸術でありコスパの話をするのは分が悪いですが、こういうセット買いをすればあとは一生楽しめるわけですから結局は得する話だと思います。