ヴァイオリンはプロが使っているものなら億単位のものもあります。
例えばストラディヴァリウスやグァルネリ・デル・ジェスなど。
これらはオークション価格で10億円を越えるときもあります。

もちろん私のようなアマチュアが使うようなものではないですね。

ヴァイオリンの専門教育を受けていない場合、せいぜい100万円くらいの楽器を持っているのが上限ではないでしょうか。

それ以上の価格帯のもの(例えばイタリアンオールドなど)を所有していても、その実力を引き出すことは難しいでしょう。
イスラエル・フィルやウィーン・フィルは安い楽器を使っているようですから、結局のところ楽器が高いか安いかではなく、自分の奏法が無理がないか、それとも無駄が多いかの違いで音色は激変するようです。

でもとんでもなく安いヴァイオリンの購入はさすがにやめておいたほうがよいでしょう。

nikawa


安いヴァイオリンのデメリット

これは私が実際に東京都千代田区・御茶ノ水の某店の店員さんと交わした会話です。
私「へぇ、このヴァイオリン、中古で6万円ですか。(ギコギコ弾いてみて)でもけっこういい音色がしてますね」

店員さん「いやでもこれ、ニカワを使っていなくて、接着剤を使ってくっつけてるんですよ。だから正直あまりおすすめできません」
これだけだとよくわからないかもしれませんが、ヴァイオリンというのは表板と横板、裏板などはニカワでくっついています。

ニカワというのは動物の骨や皮を煮込んで作った、いわば天然の接着剤。
セメダインなどとはまったく成分が異なります。ニカワは水などを使うと簡単に剥がすことができるのが最大のメリットです。

なぜ簡単に剥がれるのがメリットかというと、修理や調整がしやすいからです。
ヴァイオリン修復家、中澤宗幸さんは著作『修復家だけが知るストラディヴァリウスの真価』という本でこう述べています。
再び木をつなぐときも、乾きながら固まるプロセスで、ゆっくりと木の繊維に染み込みながら、木材同士を密着させるのです。これは石油由来成分の接着剤などには真似できないこと。もしもニカワを使わずにヴァイオリンを作ったり、修復したりすれば、その寿命はずいぶんと短くなったことでしょう。
引用箇所が前後しますが、次のようなメリットもあります。
ニカワに求められるのは「はがれないように、はがれる」ことです。木は乾燥すると縮みますが、強く接着してあると収縮する力に耐えきれなくて、ヴァイオリンにひびが入ったりすることがあります。それゆえ、いざというときには、ヴァイオリンを守るためにニカワのほうがはがれることも大切なのです。
つまり接着剤を使って組み立てられた安いヴァイオリンは、

・修理しづらく(下手するとはがそうとして「バキッ」となるかも?)

・乾燥する冬にひび割れるおそれがある

というデメリットがあるわけです。

目先の値段につられて安いヴァイオリンを買うと、あとあと苦労することが目に見えています。

ではどういうヴァイオリンがニカワをつかっていて、接着剤を使って組み立てられているのはどれか。

これは店頭で店員さんにきちんと聞いて確認するしかありません。
そもそもヴァイオリンは量産型であっても最終的には人の手が加わって完成しますから、ひとつひとつ微妙に出来栄えが異なっています。
たとえ身近に楽器店がない場合でも、こうした事情からヴァイオリンを通販で買うのはやめておいたほうがよいでしょう。

大体セットで10万円を越えるようなものなら問題はないとは思いますが、買ったお店でその後もメンテナンス(知らないうちに勝手にニスが剥がれて隙間が出来たりするんです)を依頼したりなど、なんだかんだで関係は続いていきますから、もしヴァイオリンがほしい! となったときは是非店頭で現物を確かめてから購入をおすすめいたします。


追記:ヴァイオリンを始めようとしている場合、こちらの本が参考になります。
プロが書いた本は暗黙のうちに読者も専門教育を受ける(受けた)ことを想定してやたらとレベルが高かったりしますが(そもそもブラームスやメンデルスゾーンといった大家の曲自体、アマチュアが演奏することをほぼ前提としていない)、こちらは著者の方がIT企業出身ということもあり、「普通の会社員が練習を効率的に行うには」といった観点で書かれています。