コンクールや入試などで頻出のモーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第3番』。
第1楽章の終わりに、カデンツァを演奏する場面があります。

最も有名なのがサム・フランコのカデンツァ。
これが本編からガクッと難易度が上がって、重音奏法だらけでとにかく難しい。

私は楽譜はベーレンライター版を使っていますが、Martin Wulfhorst氏の解説が掲載されています。
どうやらパールマンからの指導を受けた経歴もお持ちの方のようです(ご本人のHPより)。
この解説のうち、カデンツァについて書かれている箇所を翻訳してみました。

どれくらいニーズがあるのかわかりませんが、サム・フランコのカデンツァを演奏するときの参考にしていただければ幸いです。

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Martin Wulfhorst氏の解説

K.218と219とは対照的に、この協奏曲にスタンダードなカデンツァは存在しない。
カデンツァとアインガングを掲載している冊子(注:この楽譜はソリスト用楽譜が3冊綴じ込まれています)にはもっとも演奏されているイザイ、アウアー、ヨアヒムのもの、そして彼等による導入部とフェルマータの装飾を収録している。

カデンツァは今日の教則を反映したボーイング、フィンガリングとともに提示しており、ある例ではもともとのカデンツァ(1.C)の短縮版を示唆している。

(奏法の)伝統に照らし、これらの演奏家/作曲家は異なった流派に連なる者たちであった。イザイはフランス・ベルギーの流派であるし、ハンガリー出身でありドントとヨアヒムの弟子アウアーはロシアとアメリカのヴァイオリン教育における主要人物である。最後に、ヨアヒムの弟子でアメリカ人であったサム・フランコはアメリカにおいてドイツの奏法を体現するうえで重要であった。

(これらのカデンツァはモーツァルトの時代よりも)あとの時代の音楽語法と器楽技術の発展を反映しているがゆえに、この冊子に掲載されているカデンツァに疑問を持つ人はこの時代錯誤に注意を払う必要はない。
モーツァルト自身もその協奏曲が属している時代(注:古典派)より「ロマン派的」なカデンツァを作曲していることに(『ヴァイオリンとヴィオラのための二重協奏曲』を参照されたい)留意しておくのは有益である。

イザイ、アウアー、フランコのカデンツァは「モーツァルトの様式」でのカデンツァを書こうというほとんどの試みを遥かに上回る水準の出来ばえであることを思い出していただきたい。

おわりに

解説は以上になります。
たしかに自分で弾いていて「カデンツァの部分だけ古典派らしくないけど、いいんだろうか」と思っていましたが、あまりこだわらなくていいようです。

ベーレンライター版にはChristoph-Hellmut Mahling氏による「まえがき」も掲載されています。
ざっと見てみたところ、この曲の歴史的な考証などを行ったもののようです。
ニーズがあれば翻訳いたしますので、こっそりコメントなりメッセージなりをいただければと思います。

ご参考:私がなにか曲に取り組むときは、とりあえずグリュミオーの録音を参考にしています。
どうやら使っているのはサム・フランコのカデンツァではないようですが、隅々まで美音に満ちあふれていて、聴いていると幸せな気分になれます。