SHOWROOMの創業者であり、一躍時代の人となった前田裕二さん。

著書『人生の勝算』を読むと、大変な努力家だったことが記されています。
2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBSという外資系投資銀行に就職。ここで猛烈な働き方をスタート。

僕は、入社以来、早朝出社を続けました。
僕が会社に着くのは朝の4時半~5時頃でした。
当然電車は走っていないので、大手町にあるオフィスまで、自転車通勤でした。株式のマーケットが開くのは朝の9時。それまで4時間、資料の下調べをしたり、届いた新聞を読み込んだり、海外マーケットの情報をアップデートしたり、実務の下準備を完了させておきます。

場が寄り付く(マーケットが開く)9時からは、お客さんに電話をかけまくり、猛烈にお客さんとのコミュニケーションに時間を割きます。

働き方改革が叫ばれる時代の中でこれを語るのはセンシティブではありますが、当時は、誰よりも早く会社に着き、誰よりも遅くまで、一生懸命、働く。それが自分の中でのルールでした。

ところが最初の頃は営業の成績が上がらなかったようです。
電話をしても出てくれない。

そこで尊敬する先輩の「藤井さん」に相談したところ、一緒に接待に付き合うことになりました。

藤井さんはクラブで誰よりも場を盛り上げ、お客さんは「面白い!」と大喜び。
こうして人に好かれることで「あの人からの電話なら出てもいいかな」という雰囲気を作り出して営業につなげていたと悟ります。

バカをしてまで自分をさらけ出すことができるヤツに、コミュニケーションの扉は開く。営業の心理とも言える秘訣をつかみました。

前田さんはこうして仕事のコツを掴み、営業成績を上げついにはニューヨークに赴任することになります。
ニューヨークでもやはり営業成績はトップ。年俸こそ1億には届かなかったものの、飛び級で昇進するなど、大抜擢されます。

ところが、親戚のお兄さんがその頃突然亡くなり、「死ぬこと」を自らのリアルな問題として切実に考えるようになったそうです。

自分ももうすぐ死ぬかもしれない。では自分は世の中に「自分ならでは」の価値を残せているのか、どうか。
お金を稼いで成功したと見られたいという願望を、前田さんはこのころ冷静に見つめ直したそうです。

こうして前田さんは起業を志すようになりました。
その後、南場智子さんから「DeNAで修行してはどうか」というオファーを受け、転職に踏み切ります。
やがて中国のネット配信事業を目の当たりにし、ユーザーがアバターのようなアイテムを何百万も一人で費やす光景に衝撃を受けたり、秋元康さんとの出会いを経てSHOWROOM創業につながっていきます。

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前田裕二さんの努力の背景には熱い志があった

前田さんの経歴は、ウィキペディアにはこう書かれています。
幼くして両親を亡くし、親戚の家に引き取られた。しかし、人に頼らずにご飯を食べられるようになろうと小学生の頃から駅前でギターの弾き語りをして金を稼ぎ、家計の足しにしていた。10歳上の兄がいる。

このギターの弾き語りですが、最初はまったくお客さんが耳を傾けてくれなかったものの、その理由を考え抜いてオリジナルソングではなくみんなが知っているヒットソングを歌うようにシフトチェンジ。さらには「小学生がそんな古い歌を知っているの!?」というギャップを見せたり、下町と都心で見せ方を変えたりと、どうお客さんのハートを掴むか改善を積み重ねたようです。

この経験がSHOWROOMのひとつの原点となります。
もう一つは、大学時代に明け暮れていたバンド活動。インディーズレーベルからもオファーがあるなど、順調なバンド運営が続いていたにもかかわらず、「このままでは食べていけない」というはっきりとした自覚がバンド内にはありました。

僕には音楽がとても大きな存在で、本当に心から音楽が好きでした。音楽に携わる中で、同じ気持ちを持った人をたくさん見てきて、僕も、彼らも、一生、これで食べていけたら、それはとても幸せなことだなと思いました。一方で、音楽業界の現状はどうか? 頑張る人が公正に報われる場所になっているか? いざ周りを見渡すと、5年も10年もライブ活動をしているけれど、一向にファンが増えずに、閉塞感で一杯になっているバンドマンやミュージシャンだらけでした。

こうした状況で、前田さんはこう考えました。
いつか、自分の中から革新を生みだして、この残酷なまでに機会の偏った音楽業界を、もっと公平でフラットな場に変えていけるのではないか。

これもSHOWROOM誕生秘話と言えるでしょう。

様々な壁を壊そうとするのがSHOWROOMの本質では

世の中には、髪や肌の色、生まれた国やそれぞれの資質といった先天的なもの=努力では越えられないものと、努力でなんとかなるものの2種類の壁があります。

SHOWROOMはインターネットつまりスマホひとつあれば、自分のパフォーマンスを配信して社会に広く届けることができる仕組みです。

つまり「表現したい」という意欲さえあれば、その日から自分がパフォーマンスを披露し、その対価として報酬を得ることができます。

インターネットの特徴は、インターネット以前には確実に存在した距離の壁をゼロにしてしまったこと。

この特徴をうまく捉え、なおかつ「人から認められたい」という人間の根源的な本能である承認欲求を満たそうとするところにSHOWROOMの独自性があります。

なおかつ、その背景には幼いころから家族を亡くし、「お金」というものと真剣に向き合い、ギターで「稼ぐ」という手段を見つけた前田さんの切実な環境がありました。
さらには多くの音楽仲間が志半ばにして道を外れざるを得なかったという悲しい現実がああります。

こうした経験をもとに、本人の努力次第でいくらでも高みを目指すことができる環境を作りたいという強い志がSHOWROOMにはありました。

ぜひ学びたい、前田裕二さんの生きる姿勢

以上のように、前田裕二さんの圧倒的な努力の背景には「志」があったことが描かれているのが『人生の勝算』です。

よくあるビジネス書では「こうすれば成果があがる」のようなノウハウが詰め込まれています。
ところがノウハウはあくまでもノウハウに過ぎず、逆境を乗り越える糧となる「志」の部分についてはあまり触れられていないのが実情です。

私個人としては、ノウハウよりも圧倒的に大切なものが自分は何をしたいかという「志」であろうと考えています。
『人生の勝算』を読んで、前田裕二さんの志に裏打ちされた生きる姿勢はぜひ学びたいと思いました。