ある人が、居酒屋で私にこう熱弁していました。
「人類は月に行ってない!」「アメリカ政府の陰謀だ!」

――どうしてそう思ったの?

「写真をよく見てくれ。月は真空状態のはずなのに、月面に立てた星条旗がはためいている。こんなの明らかにおかしい! トリック写真だ!」
「冷戦に勝利するために、科学力を誇示しようとして結局失敗したアメリカが捏造したのが月面着陸の写真だ!」

その時は酒が入っていたせいもあり、あまりに勢いよくしゃべる彼に私は圧倒されました。

――お、おう・・・。そうだよな、月に着陸したってちょっとありえないよな・・・。

なんという情けない返事でしょう!!

私はどう答えれば良かったのでしょうか?


「人類は月に行ってない」と言われた時に言い返したいこと


うん、お前のいってることは解るよ。
人類はだれも月に行ってないってのは、ちゃんと解ってるよ。
でもさ、思わないか。たとえ偽物でもさ、人類は月に行きたいってずっと思ってて、そういう写真を作ったわけだろ。
それならそれは月に行った証拠として認めていいんじゃないか。
そりゃ、ディテールとかさ、そんなものはちょっと間違ったりしてるかもしれないけどさ、肝心なのはそういうところにないと、俺は何となく思うんだ。
上手くいえないけどさ、要は、心意気よ。心意気さえ宇宙ならさ、偽物も本物も変わりはないよ。
こう言えば彼も納得したでしょうか・・・。
それとも「まじで? 俺も月に行ったってのはおかしいとなんとなく思ってたんだよwww」などと、東スポの記事「人面魚 重体脱す」「UFO電線に引っかかる 地球の電気を盗難か」を喜んで読む愛読者のようにようにだまされて楽しんでいればよかったのでしょうか・・・。

ちなみにこれは嶽本野ばらさんの小説『下妻物語』に出てくる台詞の一節をもじったもの。
原文はこうです。
うん、お前のいってることは解るよ。これが本物のベルサーチと全く無縁の商品だってことは、ちゃんと解ってるよ。でもさ、思わないか。たとえ偽物でもさ、お前のオヤジはベルサーチの商品を作りたいと思って、そのロゴとマークを使ったわけだろ。それならそれはベルサーチの商品として認めていいんじゃないか。そりゃ、素材とかさ、そんなものは本物より安く売る為に悪いものを使っているかもしれないけどさ、肝心なのはそういうところにないと、あたいは何となく思うんだ。上手くいえないけどさ、要は、心意気よ。心意気さえベルサーチならさ、偽物も本物も変わりはないよ。
ヒロインの父がベルサーチの模造品を作って大ヒット。しかしあるときそれが大々的にバレてしまい、茨城県に逃亡します。
ヒロインは父とともに茨城で暮らしますが、そこで知り合った暴走族のレディースであるイチゴにベルサーチの模造品の在庫を販売しますが、これはあくまでもコピー商品であり、本物ではないことを説明します。

ところがイチゴは納得せず、上記のような台詞を言うわけです(笑)。

『下妻物語』は全編こんな調子でイチゴが真剣にアホなことをやらかしてくれるので、私は映画も小説も両方鑑賞しました。



映画版では深田恭子さん、土屋アンナさんの凸凹コンビがいい味を出しています。
このブログは「友だちいない研究所」と言います。
深田恭子さん演じるヒロイン竜ヶ崎桃子は、「人は一人ぼっちで生きていくものであり、友だちはいらない」という信念の持ち主でしたが、イチゴと知り合い心境が変わっていきます。
二人の友情の行く先は・・・。
笑いあり、涙ありで2時間を楽しみながら過ごしたいときにもってこいの一作になっています。

おわりに

話を戻します。冒頭の人物ですが、表現活動と称して謎の詩を発表。
運がいいのか悪いのか、地元の文芸誌で佳作を受賞してしまったため、ますます熱が入り今もYouTubeなどに自分の歌や詩を投稿しているようです・・・。
「世の中わけのわからんことばかりだけど、少なくともこれで俺の名が図書館に残る! これで泊がついたからどんどん攻めていく!」
そう熱っぽく語っていました。

国立大学の医学研究科に在籍している人にこのエピソードを伝えると、「どうやらある種の病気を患っているようだ」とのお返事でした。
彼の病気が治ったのかどうか、もう10年近く会っていないので詳細は分かりません・・・。