1838年生まれ、1920年没のドイツの作曲家、マックス・ブルッフ。
彼の略歴は、ウィキペディアではこう書かれています。
教師で有名な歌手であった母親から教育を受け、音楽、特に作曲に早くから才能を示した。ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調が、ロマン派の協奏曲として特に有名でよく演奏される。他にもヴァイオリンと管弦楽のための『スコットランド幻想曲』や、チェロと管弦楽のための『コル・ニドライ』がしばしば演奏される。近年では、『クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲』も人気を得て来ている。
代表作である『ヴァイオリン協奏曲第1番』と『スコットランド幻想曲』はいまでも世界中で愛奏されている華麗なメロディに溢れた名作。前者はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲やラロの『スペイン交響曲』を学び終えた学習者がその次にトライする曲という位置づけでもあります。

しかし彼にはそれ以外にもいい曲はたくさんあるのです・・・。

たとえば「アダージョ・アパッショナート」・・・。

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ブルッフのあまり知られていない名曲「アダージョ・アパッショナート」


 

全曲を通しても10分程度でそう長くはありませんが『ヴァイオリン協奏曲第1番』の第2楽章「アダージョ」にも似た雰囲気であり、「アパッショナート」の名どおり情熱的な雰囲気をも伺わせます。

楽譜はIMSLPで無料公開されており、誰でも閲覧ができます。実際に楽譜をお読みいただくのが手っ取り早いですが、いわゆる「サビ」というか泣かせどころのようなメロディも盛り込まれており(上記の動画では3:17辺りから始まります)、わずか10分というコンパクトさも相まって繰り返し聴きたくなる仕上がりです。

デビューCDにブルッフの『ヴァイオリン協奏曲第1番』と『スコットランド幻想曲』を選んだ諏訪内晶子さんはこう語ります。
ブルッフという人は、長命で、マーラーやシェーンベルクが出てくる時代まで生きていましたが、そうした中で自分のロマンティックな作風を変えずに守っていました。それなりに信念の強かった人だと思うのです。
(上記CDのライナーノーツより)

「自分のロマンティックな作風」が端的に示されているのがこの「アダージョ・アパッショナート」と言えるでしょう。

上に挙げたYouTube動画はサルヴァトーレ・アッカルドの演奏によるもので、オーケストラはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、指揮はクルト・マズアです。
CDも発売されており、アマゾンで簡単に買うことができます。



「アダージョ・アパッショナート」作曲の経緯

CDレーベルHyperionのウェブサイトにはこう書かれています。
「アダージョ・アパッショナート ヘ短調 作品57」は1890年、チェロとオーケストラのための2つの主要な作品の直後そして3作目のヴァイオリン協奏曲の直前に作曲された。
とはいえ主題に一つだけ些細な共通性があるものの後者とはいかなる関係性も認められない。
ブルッフは7年を過ごしたブレスラウを去るにあたっての最後の演奏会にヨアヒムが顔を見せたことに感謝の気持ちを込め、この作品を彼のために作曲した。

「これは自分のなかでも最上級の作品です」とブルッフはシムロックへ書き送っている。「この曲はベルリンの大学でのリハーサルの際にヨアヒムも、オーケストラも、演奏家も大変喜ばせました」
ヨアヒムはこの曲の献呈を受け入れたものの、スコアにはそのことが記されていない。
これはヨアヒムが、その妻とシムロックが不適切な関係にあったのではないかと憎しみを抱いていたことによる。

大変美しい曲ではあるが、ある簡素な箇所を除けば華麗かつ装飾的でもある独奏に徹底して焦点が当てられている。静かな雰囲気のうちに曲は結ばれる。
(https://www.hyperion-records.co.uk/dw.asp?dc=W18433_GBAJY1605507に記載の文章を自分なりに翻訳しました)
私は初めてこの曲を聴いたのはもう15年以上も昔の飛行機の中の機内番組で、たまたま流れてきたメロディに「なんて綺麗な曲なんだ!!」とびっくりしたのを覚えています。

「サビ」のメロディを聴いたとき、ちょうど夕方で、窓の外が見渡す限りオレンジ色に染まっていました。偶然にすぎませんが、景色と音楽がまるで映画のようにピタリとはまり、涙が出そうになりました。

ブルッフの曲で、『ヴァイオリン協奏曲』と『スコットランド幻想曲』以外になにかいい作品はないかとお探しの方は、騙されたと思ってぜひ「アダージョ・アパッショナート」に耳を傾けて頂ければと思います!!