テレビドラマ『G線上のあなたと私』。このドラマのヒロイン小暮也映子(波瑠)は、婚約者との破局ののち、自宅のテレビで映画を見ていると、画面のなかの破壊シーンとはミスマッチに、静かな音楽が流れていたことが心にひっかかるという場面がありました。

この音楽はバッハの「G線上のアリア」。(厳密にはバッハの『管弦楽組曲第3番』の「アリア」を後の時代のウィルヘルミというヴァイオリニストがヴァイオリン一台のうち、もっとも低い音のでる「G線」一本だけでも演奏できるように「G線上のアリア」として編曲したものです。)

ショッピングモールでの音楽教室のプロモーションでもこの音楽が用いられており、生演奏を耳にした小暮也映子はヴァイオリンを習い始めるという物語。

でも「映画の破壊シーン」とはいったいどんな作品だったのか・・・。

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私なりに心当たりがあるのは『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』

私の記憶にある限りでは、破壊シーンに「G線上のアリア」が用いられているのは『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』だったと思います。

実際に使われていたのは「G線上のアリア」ではなく、原曲の『管弦楽組曲第3番』だったはず・・・。

TVシリーズ『エヴァンゲリオン』の延長線上にある『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のあらすじを一言で紹介することは難しいのでごく簡単に説明しますと、この場面では主人公碇(いかり)シンジの戦友である惣流(そうりゅう)アスカ・ラングレーが「アリア」の場面の直前まで廃人同様であったものの、ゼーレという集団が戦略自衛隊という実力組織をシンジやアスカが所属している基地(のようなところ)を侵略しようとした瞬間に能力を蘇らせます。

戦う意欲を取り戻したアスカはエヴァンゲリオン(というロボット)に乗り込んでひとりでたくさんの敵(量産型エヴァンゲリオン)を迎え撃つ・・・、という場面です。

アスカが量産型ではないほうのエヴァンゲリオンを操縦し、量産型のほうのエヴァンゲリオンを次々となぎ倒して破壊してゆくシーンに「アリア」が使われていました。

残酷な破壊シーンに静謐感あふれる音楽が使われるのは、たしかに見る人に強いインパクトを与えます。

なお、アスカは一時的に量産型エヴァンゲリオンに対して勝利を収めるものの、「ロンギヌスの槍」という兵器で攻撃されて深手を負い、量産型の逆襲により無残に自機を破壊されてしまいます。

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』は1997年公開の作品であり、90年代後半のアニメ文化に大きな影響を与えました。
そこから10年以上経過したのちもさらに劇場版が発表されていますので、いかに『エヴァンゲリオン』が息の長い支持を得ているかがわかりますね。

『エヴァンゲリオン』では「G線上のアリア」のほかにもパッヘルベルの「カノン」やベートーヴェンの『交響曲第9番 合唱付き』が使われており、劇中で流されたクラシックの曲を集めたコンピレーションアルバムも発売されていました。

おわりに

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のほかにもバッハの『管弦楽組曲第3番』の「アリア」、その編曲であるウィルヘルミの「G線上のアリア」は様々なシーンで使われており、とくに誰かを追悼するときによく演奏されています。

たとえば昭和天皇崩御にあたってはTV局各局が昭和天皇の在りし日の姿とともに「アリア」を放映したり、9.11同時多発テロののち世界各地で追悼演奏会が開かれた際にもやはり「アリア」が広く演奏されていました。

本ブログの関連記事でも「G線上のアリア」について書いているものがいくつかありますので、この曲のことが気になる方はこちらもお読み頂ければと思います。