「駄作がない」とすら言われる、音楽の父バッハ。

イエス・キリストの処刑をテーマにした『マタイ受難曲』のような大曲からコーヒー・カンタータのような世俗曲、『無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ』のような、そのジャンルの走りでありかつ空前絶後の完成度を誇る曲まで、彼の創作活動は幅広いものがあります。

その中でも「G線上のアリア」は誰もが知っている有名曲。
ホテルのロビーでも、デパートでも、病院でも空港でも、入学式でも、さらには昭和天皇崩御の際にも、9.11同時多発テロののち世界各地で開かれた追悼演奏会でも、様々な場で演奏されています。

もともとバッハが作曲した『管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068』の「アリア」を、のちの時代のウィルヘルミというヴァイオリニストがヴァイオリン1挺で演奏できるように、しかも4本弦があるうちの最も低い音を出すG線だけで弾けるように編曲しました。
これが「G線上のアリア」です。

名曲なだけに、いろんな作曲家へ影響を与えていても不思議ではありません。世の中には、「G線上のアリア」を意識しているだろうと思われる曲があります。しかもそれらも実は結構いい曲だったり・・。

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「G線上のアリア」に似ている曲はどんな曲?

まずは原曲(というか、「G線上のアリア」自体が編曲ものなのだが)をどうぞ。



こちらはウィルヘルミのピアノ伴奏をさらに弦楽に移し替えている模様ですね。

ではこれに似ている曲とは・・・。

プロコル・ハルム「青い影」

イントロに耳を傾けてください。なんだかG線上のアリアを彷彿とさせるものがありませんか?



この曲はユーミンや山下達郎さんにも衝撃を与え、またのちにサラ・ブライトマンがカバーするなど、曲そのもののヒットだけでなく次世代への影響を含めて非常に有名なものなりました。

すぎやまこういち「ドラゴンクエストII」より

ゲーム開始時にあなた=ローレシアの王子がいるのはローレシア城。大神官ハーゴンの手下がムーンブルクを陥落させたとの悲報が届き、あなたはハーゴン討伐の旅に出ます。
その時のローレシア城のテーマ音楽がこちら。



これも「G線上のアリア」に似ていますね。
作曲したすぎやまこういち氏自身も「A線上のアリア」と語っており、最初から「G線上のアリア」を意識していたことを明かしています。ドラクエの曲を通じてクラシック音楽の良さを知ってもらいたいという気持ちもあったとか。

スウィートボックス「Everything's Gonna Be Alright」

これはもう似ているというのではなく、完全に「G線上のアリア」を下地にしています。


 

なぜ「G線上のアリア」が何度も「リサイクル」されるのか

バッハは「音楽の父」と呼ばれるだけのことはあり、作品の構成が非常に堅牢なのが特徴です。コード進行やハーモニーが明確で、建築物で言うならば基礎工事に手抜きが一切ない立派なもの。

したがってたとえ300年前の作品と行っても21世紀を生きる私達が普段聴いてる音楽と共通している部分がものすごく多いのです。(例えば、調性つまりキーがAの曲は「ラ」=Aで終わらなければならないといった原則は、今も昔も同じです。)

バッハの音楽、とくにオルガン曲をエレキギターやキーボードでテンポを速めて演奏したらなんとなくロックっぽくなってしまうのはそのためです。

バッハの残したメッセージは、300年後を生きる私達に届きました。
おそらく次の300年後も、彼に影響を受けた作曲家たちが様々な音楽を紡ぎ出すことでしょう・・・。