『ベルサイユのばら』の作者である池田理代子さんのことがヤフーニュースになっていました。

これによると、私財を投げうってオペラの公演を支援しているとか。
どこかの自動車会社の社長さんはマネーロンダリングのようなことをして私服を肥やす一方で、こういう文化事業を個人でやる志の高い人もいるんですね・・・。


このニュースでは「オペラ歌手は稼ぎにくい職業で、役につけるまでアルバイトで食いつないでいる」というエピソードが紹介されています。
ミュージカルはまだいいんですよ。1カ月も続く公演なんてありますから。でもオペラの公演はせいぜい1日か2日くらい。マイクを使わないので長期間公演するのはかなり難しい。たとえば、稽古期間が同じように3カ月でも、公演期間が圧倒的に短いから若いオペラ歌手はなかなか食べていけない。
「食べていけない」のは芸能人や小説家、漫画家を目指しているほとんどの若者もそうだと思います。
池田理代子さんはそこでオペラ上演の支援を考えたようです。

最近では「生産性」という言葉がよく聞かれるようになりました。
ではオペラやクラシック音楽には生産性はあるのでしょうか。そもそもオペラハウスの生産性が高いなら、いろんな人を雇ってますます発展できそうなものですが・・・。

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クラシック音楽に生産性という言葉はなじまない

結論から言うと、クラシック音楽(オペラも含めて)には生産性がありません。
というか生産性という言葉からかけ離れた世界で発生したので、生産性という言葉で評価することができません。

もともとヨーロッパの教会の聖歌つまり宗教行事や宮廷=いくらでも課税できる人たちの住処での式典のためのBGMが発祥ですから、生産性=「いかに少ないリソースで最大の効果を上げるか」は議論の対象となるはずがありません。

現代でも、ローマ法王が交代するときの儀式やイギリスなりオランダなりで国王・女王の即位式典が実施されたとして、それを生産性が高いか低いかで論じるのは無理があるでしょう。


クラシック音楽はテクノロジーの恩恵も受けにくい

ベートーヴェンの代表作『交響曲第9番 ニ短調』が発表されたのは1824年。
ウィキペディアによると、初演時にはオーケストラは80~90名、合唱団は80名ほどだったそうです。
演奏にはおよそ70分程度かかります。

2019年現在、やはり演奏のために同じかそれ以上の人数が必要で、演奏時間も同じです。

つまりベートーヴェンが生きていた時代から200年くらい経過した今も、当時と同じ姿で演奏されているということになります。

サラリーマンの働き方は計算機、ワープロ、パソコン、工場でも工作機械やロボットが導入されて1時間あたりでできることは飛躍的に向上しています。
しかし音楽家の働き方は昔とほとんど変わっていません。

さらに、ベートーヴェンの『第9』はおよそ150人がかりで70分のサービスをせいぜい2,000人くらいに提供するわけですが、プロ野球が9対9のゲームを数万人に見せるのと比べるといかに収益を上げづらいかがお分かりいただけるかと思います。
このあたりが、池田理代子さんが私財を投げうってまでオペラ上演に支援の手を差し伸べている背景にあるのではないでしょうか。

おわりに

このように、生産性という言葉とは無関係なところで成立していること、テクノロジーの恩恵を受けづらいこと、しかも収益が上がりづらい仕組みであること・・・。こう考えると、音楽に(絵画とかダンスとかもそうだと思いますが)生産性を持ち込むことは無理があると思います。

とはいえ音楽を聴きながら仕事をするとなんとなく気分が上がるのも事実。
最近ではCDが売れなくなる一方で定額課金で聴き放題が流行っているようです。
こうしたサービスを使いまくれば、多少はクリエイターに還元されるのでしょうから、何らかの形でオペラなどに触れることが私たちなりの支援になるのかもしれませんね。