2019年9月7日(土)、東京・四谷にある紀尾井ホールにてヴァイオリニスト・川畠成道さんの無伴奏リサイタルが開かれました。
今日はこのコンサートの感想を書き留めておきたいと思います。


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川畠成道さんの無伴奏リサイタル、まずはバッハとイザイ

当日のコンサートではまず初めにバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調」が演奏されました。
ご存知のとおり、川畠成道さんのバッハの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ』はすでに全曲を収録したCDがリリースされています。演奏の雰囲気は基本的にそのCDと同じなのですが、特徴を一言で言うと音色がとても優しくまた柔らかみを感じさせるものがあります。
バッハの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ』の演奏方法はとくにパルティータにおいて、舞曲であることを強調したものや、他方でメロディーの部分をむしろ強調したものなど様々なスタイルがあります。

川畠成道さんの演奏は全体的になだらかな雰囲気で、メロディーを強調しようとしているかのように思われました。
とはいえ一音一音に意味深い彫りのある箇所もあり、長年にわたってこの曲を愛着を持って演奏していることがうかがわれました。
こうしてCDではなくホールでひとつひとつの音の連なりを実感していると、バッハの音楽のベースにはやはり教会の響きがあったのだと改めて実感できます。

次の曲、イザイの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番』はマヌエル・キロガに捧げられたもので、彼がスペイン出身であることを意識したのか、ハバネラのリズムが曲の中間で用いられています。
川畠さんは演奏する前に自らの言葉でマイクを手にしてそのことを語っていました。
確かに演奏している時にハバネラのリズムを噛み締めるように演奏していたのが印象的でした。

最近ではコンクールでもイザイの曲が取り上げられることが増えてきているようです。
この曲を積極的に広めたいという思いがあったのでしょうか。

休憩後は、パガニーニづくし

休憩を挟んでパガニーニの『カプリース』が演奏されました。
・・・といっても24曲全てではなく、6番、14番、24番が取り上げられました。
パガニーニのカプリースは一流音楽大学の入学試験でも課題曲に取り上げられる難曲でもあります。
特に第24番はラフマニノフをはじめ様々な作曲家がアレンジを施して自らの作品として発表しています。

パガニーニは手が大きかったらしいのですが、ヴァイオリンを演奏するにあたって手が大きいことは遠くの音に手が届きやすいというメリットになります。
「私の手は小さい」と語る川畠成道さんは、「それでも演奏は工夫次第」とも付け加えていました。
たしかにところどころで(とくに14番)弾きづらそうな箇所がありはしましたが、難技巧とともにどこまでも伸びてゆく旋律美をも同時に表現しているのは、紛れもないプロの表現力です!

さらにミルシテインの「パガニーニアーナ」。
これはパガニーニのカプリース第24番を元に他のカプリース風に変奏してゆくという手法で、わざわざパガニーニに続けてこの曲を選んだあたりに描き分けの自信のほどがうかがわれました。

アンコールになんと「シャコンヌ」

アンコールはバッハの『無伴奏』よりなんと「シャコンヌ」。
一番最後にヴァイオリン音楽の頂点ともいえる作品を持ってきました。
アンコールですから、私たちには事前にそんなことはわかりません。

とはいえシャコンヌも最初に演奏された「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調」と同様の佇まいで、ある種の余裕さえうかがわせつつ終了。
師江藤俊哉さんの演奏はCDで聴く限り厳然とした趣がありますが、弟子にあたる川畠成道さんは優しさや思いやりといったものが感じられます。

師弟関係にあっても出てくる音が全然違いますから、音楽というのは本当に不思議です。

川畠成道さんは例年無伴奏リサイタルを開催していますが、これを耳にしないのは本当にもったいないことです。
おそらく私は来年も同じリサイタルに足を運ぶでしょう・・・。


追記:川畠成道さんのバッハの『無伴奏』およびミルシテインの「パガニーニアーナ」は以下のCDに収録されています。興味のある方はどうぞ・・・。