ジャンルレスな活動で知られる石川綾子さん。

YouTubeにはパガニーニの『カプリース』や「千本桜」「残酷な天使のテーゼ」など様々な楽曲をヴァイオリンで演奏しています。

その石川綾子さんはどんなヴァイオリンを使っているのでしょうか。
現時点で公表されている情報は「1763年に製作された」ということ。

この乏しい情報をもとに個人的な推測をしてみました。
(追記:この記事を作成したあとで「ビンビ」という製作家の手によるものと判明。この楽器の相場などは記事末に追記しました。というか、記事を書く前にちゃんと調べろよという話ですよね・・・。)


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プロのヴァイオリニストはイタリア製の楽器を使うことが多い

前提として、プロのヴァイオリニスト、とくにソリストが使っている楽器は「オールドイタリアン」、つまり1660年~1770年ごろにイタリア各地で作られたものが非常に多いことが挙げられます。

TVでもよく登場する、有名な「ストラディヴァリウス」はアントニオ・ストラディヴァリ(1644-1737)という職人が製作していますが、こちらは例えば諏訪内晶子さん(「ドルフィン」というニックネームのストラディヴァリウスを使用、日本音楽財団から貸与)、千住真理子さん(「デュランティ」というニックネームのストラディヴァリウスを使用、自己資金によりスイスの富豪の遺産を購入)、庄司紗矢香さん(「レカミエ」というニックネームのストラディヴァリウスを上野製薬株式会社から貸与)など、世界的に活躍する奏者が使っています。

ストラディヴァリウスは状態の良いものであれば、10億円を超える価格が付けられることもあります(2019年時点)。骨董品の一種ですから定価というものは存在せず、その代わりにロンドンやニューヨークで行われるオークションの相場が金銭的価値の指標になっています。

ストラディヴァリウスには一つ一つ、来歴に由来するニックネームが付けられています。ZOZOの前澤社長が購入した「ハンマ」はシュツットガルトの楽器商「ハンマ商会」が由来です。


その他、川畠成道さんは「ガダニーニ」を使っており、五嶋みどりさん、前橋汀子さんは「グァルネリ」をつかっているなど、いずれも18世紀のイタリア人製作家によるものです。

では1760年頃活躍した製作家はどんな人がいたでしょうか?

石川綾子さんの使用楽器を推定してみた。

1760年ごろ活躍していたヴァイオリン製作家の名前を列挙します。
(言い換えると、どんなに有名な人でも石川綾子さんの楽器を製作した1763年に生きていなかった人は以下に書いていません。)

・ジョヴァンニ・バティスタ・ガダニーニ(1711-1786)
・ジュゼッペ・ガダニーニ(1736-1805)
・ニコロ・ガリアーノ(1710-1780)
・ミケーレ・アンジェロ・ベルゴンツィ(1722-1770)
・カルロ・アントニオ・テストーレ(1687-1765)

毎年秋に九段下の科学技術館で「弦楽器フェア」というものが開催されており、ディーラーやプロのヴァイオリニストたちが品定めや買付のために熱心に楽器を眺めています。
(一般の人も入場料1,000円ほどを払えば入場可能です。)




こうしたフェアでは上記の製作家たちの作品が展示されていることもまれにあります。
ただし、価格はいずれも1000万~3000万円ほど。普通のサラリーマンにはとても手が出る値段ではないですよね・・・。

石川綾子さんがヴァイオリンを演奏している動画をみると、楽器の表板のニスの色合いなどから判断してきわめて状態のよいオールドだということはなんとなくわかります。
音も非常にのびやかで気品が感じられますね。




石川綾子さんほど幅広く活躍し、かつ名前を知られている方であれば上記の製作家たちが作ったヴァイオリンを持っていても何ら不思議ではありません。

以上は私なりの推測になりますが、当たらずと言えども遠からずといったところではないかと思います。

なお、プロヴァイオリニストの全てが高い楽器を使っているというわけではありません。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のヴァイオリン奏者は団が貸与する楽器を使っていますが、1台300万円ほどのオーストリア製のヴァイオリンを使っているようです。(日本の音大生ならこの価格帯のヴァイオリンを持っていてもごく当たり前のことです。)
ただしコンサートマスターだけはオーストリア国立銀行が現物資産として所有しているストラディヴァリウスを使っている模様です。


おわりに

調べれば奥が深いのがヴァイオリン。
骨董品として流通している楽器だけに、鑑定書が偽物だったり、ラベルが偽造されたりということはザラにあります・・・。
演奏も理不尽なほど難しく、私も何年もかけてやっとこさモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲第3番」にたどり着きました。
これからもこの楽器をめぐっていろいろ体験することになるとおもいます。

石川綾子さんのコンサートに足を運んだことは何度かありますが、艶のある音色でアニソンや映画音楽などを演奏するのが大変印象的でした。
これからもたくさんのCDなどをリリースしていただければと思います。


追記:さらに調べてみた所、「ビンビ」という製作家だと判明(本人談)。
Bartolomeo Bimbiのことと思われます。
だとすれば「Violin (5 sold) : $15,820, Bongartz's May 6 1991」とオークション「タリシオ」のHPに記載がありました。
その後のヴァイオリン市場の相場の高騰などを勘案すると500万円程度? といったところかもしれませんが・・・、オークションには定価はありませんし、状態の良し悪しでも価格は変わりますから、こればかりはなんとも・・・。









参考文献: