ヴァイオリンを弾いている人ならかならずぶつかる問題。

それは・・・。

「伴奏者がいない」問題。

ピアノを弾く人は世の中にたくさんいます。

しかし彼ら・彼女らに話を聞いてみると、「ショパンが好き」「ラフマニノフが好き」「フィギュアスケートの何々選手が滑ってた曲を弾きたい」という人がほとんど。
チゴイネルワイゼンという曲の名前を知っていても、作曲者のサラサーテの名前を知らなかったり、クライスラーの曲は1曲も知らなかったり、しまいには「ヴィエニャフスキ」という固有名詞を聞き取ってもらえなかったり・・・。

こうした人にヴァイオリン・ソナタや小品の伴奏を頼んでも、まぁ断られるでしょう。
「ピアノを弾ける」 ≠ ヴァイオリニストの伴奏をやりたい
なのです。ノットイコールです。

そこで誰もが思いつくのが、「そうだ! 無伴奏の曲なら伴奏者がいなくてもいいぞ!」

では無伴奏の曲で、比較的とっつきやすそうな曲は・・・?

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無伴奏をめぐる誤解

そもそも無伴奏曲というのは、伴奏者がいないという意味ではなく、「伴奏も自分でやる」が正しい理解です。

小澤征爾さんの師匠、斎藤秀雄さんはこう述べています。
無伴奏ソナタ、それからメンデルスゾーンの「無言歌」ってあるでしょう。無伴奏ソナタは「伴奏はない」っていうんじゃなくて、「伴奏は自分でするから、いりません」って言っているの。それから、メンデルスゾーンの「無言歌」っていうのは、「言葉はやりませんけど、言葉はちゃんと書いてあります」って言ってるの。
(『斎藤秀雄講義録』より)

つまり伴奏者がいないぶん、逆にハードルが上がっているのが無伴奏曲のようです・・・。辛い!

それでも無伴奏のヴァイオリン曲にチャレンジしてみたい場合

誰もが憧れるバッハの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ』、そしてパガニーニの『カプリース』。
子供の頃から英才教育を受けた人でないと楽譜に書かれていることを一応音にするだけでも至難の業でしょう。(というか、大人から始めた人のほとんどはそのはるか手前で挫折してしまっているはずです。)

自分なりの経験から(大学生になってから私はヴァイオリンをはじめました。紆余曲折あり、何年もかかってやっとこさモーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第3番』にたどり着いたくらいのレベルです)、これならアマチュアでもなんとか手が届きそうだなという曲があります。

ビーバー「パッサカリア」

ザルツブルクの作曲家、ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644-1704)。
彼の代表作『ロザリオのソナタ』の一番最後に置かれている「パッサカリア」は無伴奏のヴァイオリン作品で、バッハが「シャコンヌ」を作曲するうえで参考にした可能性があると言われています。



演奏時間は10分弱。宗教的な内容の曲なだけに、ものすごく神秘的なたたずまいの作品となっています。私も実演で2度ほど耳にしたことがありますが、どこか遠いところへ心を持っていかれそうな錯覚に陥り、演奏会のあとで「なんだこの曲は!」と調べたことを思い出します。

CDはいくつか出ていますが、一番手に入れやすいのは寺神戸亮さんのものではないでしょうか。


楽譜はアマゾンでは取り扱いがありませんでしたが、楽天で取り寄せが可能でした。


テレマン「無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア」

存命当時、バッハよりもはるかに有名人だったゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767)。
数え切れない膨大な作品を世に送り出しましたが、今ではその多くが歴史の狭間に埋もれてしまっています・・・。

とはいえ「無伴奏ヴァイオリンのための12のファンタジア」という曲が残されており、バッハやパガニーニほど難技巧が散りばめられているというわけではない、アマチュアでも頑張れば一応手が届くものになっています。



CDはいろいろ出ています。時代の流れとして「ピリオド奏法」が主流になりつつあります。
とはいえ、バロック弓などを持っていない普通の人にとっては、グリュミオーの演奏が鑑賞面でも、演奏の参考にするという意味でも模範的なものではないでしょうか。

にしてもグリュミオーは本当にレパートリーが広い・・・!(しかも名演ぞろい!)
楽譜も入手可能ですが、似たような名前で「フルート」の曲もありますからご注意ください。



おわりに

結局、無伴奏の曲に手をつけることは伴奏者がいない問題への解決になるでしょうか?
私なりの意見としては、
・人前で弾くために伴奏者を探さなくて済むので、労力を節約できる
・ただし、1人で舞台に立つのでプレッシャーがかかる
・無伴奏=ごまかしがきかない、ピアニストが助け舟を出してくれない
・しっかりした技術がないと、ハードルが高い
という見解です。

でもビーバーやテレマンの無伴奏曲をスラスラと弾けるようになれば、「赤の他人が聴いても納得してもらえる」くらいの水準になっているはずですから、このあたりを目標にするのはいい考えだと思います・・・。