孤独。

ひとりぼっち。

ぼっち。

孤独というとネガティブなイメージで語られがち。
英語ではSolitudeといい、Lonelinessとも言います。

日本語にするとどちらも「孤独」ですが、2つの単語にはまったく違う意味がありました。

ではかっこいいのはどっちでしょう? ぼっちな人が目指すべきなのはどっちでしょう?

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孤独=SolitudeとLonelinessの重大な違い

オンライン版のロングマン英英辞典で調べてみました。

まずはSolitude。

when you are alone, especially when this is what you enjoy

だそうです。「あなたが一人のとき、特にこれをあなたが楽しんでいるとき」に使うのがSolitude。

例文は
He spent his free time in solitude, reading or walking in the hills.
(彼は読書をしたり、丘を歩いたりして孤独な自由の時を過ごした。)


ではLonelinessは?
同じ辞典で確認すると、こう書かれています。

unhappy because you are alone or do not have anyone to talk to

「あなたが一人で、または誰も話す人がいないので不幸せなこと」を表すときにLonelinessを使うようです。
例文は
Audrey got on well with the other student, and felt that without her she might have been lonely.
(オードリーは他の生徒と仲良くやっていった、そして彼女がいなければ一人ぼっちだったろうと感じた。)


日本語で孤独=ぼっちというとどうしても仲間はずれ、友だちがいないというような使われ方ですが、海外とくに英語圏ではこのように2種類の言葉があり、しかもまるで意味が違うことがわかりますね。

孤独=ぼっち。かっこいいぼっちを目指してみよう

もちろん目指してみたいのはSolitudeのほうですね。

実際にどんな人物像かというと、例えばスナフキンがすぐに思い浮かびますね。
ムーミン谷で暮らしていても、ふとさすらいの旅に出かけて、しばらくするとまたムーミンたちと再会を喜ぶ。彼には友だちがいなくてうじうじしているような所はまったく見当たりませんね。むしろ一人でいる様子はひじょうにさっぱりしたもので、清々しささえ感じられます。

実在する人物から例を引くと、ドイツの詩人、ヘルマン・ヘッセ。
彼の初期の作品は「青春は美し」のように爽やかなもの。ところが第一次世界大戦前後から作風を転換させ、人間の孤独をじっと見つめるような小説を多く発表しました。
例えば『デミアン』『荒野のおおかみ』がそうです。

最も有名な彼の言葉は・・・。

人生とは孤独であることだ。
だれも他の人を知らない。
みんなひとりぼっちだ。

自分のことを理解しているのはつまるところ自分ひとりだけ。
自分の人生は自分で生きるしかないと述べています。


もうひとり例を引くなら、宮沢賢治。彼は「告別」という詩を残しています。

みんなが町で暮らしたり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ
もしも楽器がなかったら
いゝかおまへはおれの弟子なのだ
ちからのかぎり
そらいっぱいの
光でできたパイプオルガンを弾くがいゝ

さびしささえ力とし、自分の表現に転換せよと教え子に語りかけています。
みんなと和気あいあいとしているとだめだ、ひとりの寂しさに耐えて自分を磨けと説いているのです。
ここまではっきりと孤独を肯定している文章にはなかなかめぐりあうことがないでしょう。

ヘッセしかり、宮沢賢治しかり、孤独を突き詰めた人は社会の中で消えることのない足跡を残しています。
世の中に実質的に顔も名前もない人は沢山いますが、そんな「多くの人」とは距離を置くことで自分らしさを貫いたのはまさにかっこいい生き方ではないでしょうか。

孤独であるメリットは深い思考ができること

孤独であるメリットは、やはり自分と向き合うことができる、深い思考ができる、これに尽きるでしょう。

ビル・クリントン元米大統領は自伝『マイライフ』で、オックスフォード大学に留学していたときのことをこう書いています。

(わたしは)孤独な読書を楽しみ、特にカール・サンドバーグの『人々よ』の一節には感動した。

たびたび一人で過ごし自身を悟れと告げよ
そして何より自身に嘘をつくなと告げよ

強くあれば孤独は創意に富むのだと告げよ
最後の決断は静かな部屋で下すものなのだ
(中略)

わたしは大統領時代、懸命にスケジュールをやりくりして、一日に二、三時間程度ひとりになって考えたり、思いを巡らせたり、計画したり、何もしなかったりする時間を作った。

彼は90年代にアメリカを未曾有の繁栄に導きましたが、その政策の陰にはこうした孤独の時間があったことはもっと知られていい事実だと思います。

しっかりと自分に向き合うことで深い思考が生まれている好例です。

もっと孤独を追求したい人へ

さらに孤独を追求してみたい、深く考える時間が欲しいという人は齋藤学『孤独のチカラ』という本がおすすめです。
卒業式の日に、上に引用した宮沢賢治の詩を教え子たちに送っているとか。
孤独こそが深い考えを生み出すぞと、大学教授が最後のメッセージを「告別」に託しているようです。

孤独のなかで自分を見つめ、生き方を思い定める。これがかっこよさであり、大人になるための不可欠の一歩だと思います。