テレビ東京でこんな報道がありました。

自民党は7日、行政手続きの100%オンライン化を目指す「デジタル手続法案」を部会で了承しました。法案には当初、法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていましたが、印鑑業界の反発などを受けて見送られました。ただ夏の参議院選挙後の臨時国会には、再び押印の簡略化に向けた議論が行われるとみられます。
(https://www.tv-tokyo.co.jp/mv/nms/smp/news/post_172988より)

正直、ハンコってなんで必要なのか・・・。世界では電子申請・電子決済の流れが加速しており、日本だけが世界の潮流に取り残されようとしています・・・。

法案が見送られた理由が情けない。

「印鑑業界の反発などを受けて見送られました」。

・・・。

一部の業界の既得権を守った結果、99%の国民が社会的負担を強いられる。

いつものパターンがまた繰り返されようとしています。

なぜこんなことに・・・。

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印鑑(はんこ)文化という悪習。なくならない理由は団体の結束力?

このニュースを聞いたときに真っ先に思い出したのが経営コンサルタント・大前研一氏の『新・国富論』に掲載されているエピソードでした。

この本が出版された当時、大前氏は横浜の白楽というところに住んでおり、地下鉄が延伸されようとしていました。
住民は便利になるので大喜び。

ところが、地元の商店街は、お客が横浜駅周辺に流れてしまうと警戒し、反対運動を展開。
結局地下鉄は別の方角に延伸されました。

大前氏はこう書いています。
商店街と“普通の住人”では組織力がまるで違う。おそらくスイスであれば、これが住民投票となり「多数決」がとられていたであろうが、いまの日本では住民にこれほど密接なかかわりあいのあることでも、特殊な利害をもった団体が陳情ということで決めてしまう。橋や道路、駅、などは住民に大きな影響があるのだが、こうした事は例の「議員さん」と圧力団体で決まってしまう。

この話には後日談があり、いざ地下鉄が別ルートで運行を開始すると、結局お客は横浜駅方面に流れてしまい、商店街は廃れてしまったそうです。

横浜では同じように本牧に地下鉄を延伸しようという話があったものの、やはり地元の商店街が反対し、結果的に本牧は陸の孤島となり、今では大変な寂れようです。

印鑑に話を戻しますと、例えば市役所などの届出ではことあるごとに押印を求められ、そこに不備があると出し直し。しかし三文判でもOKだったりするのでなりすまし対策としては落第。効率性の観点からはオンライン申請に完全に劣っています・・・。
社会の進歩を遅らせる悪習にさえ思えてしまいます。

印鑑(はんこ)文化という悪習。ノイジーマイノリティ対サイレントマジョリティの争いでは、ノイジーマイノリティが勝利する

このように、99%の国民が望んでいても、反対する1%が団結してしまえば1%の要求が通ってしまうという悲しい法則があるようです。
業界団体が内閣へ提示した要望書(http://www.inshou.or.jp/inshou/common/pdf/yobosho.pdf)によると、こんなとんでもないことが書かれています。

民民手続きにおけるオンライン化の推進の白紙撤回。
上記が実施されなかった際に、印章業界が被る被害に対する国の売上保障

・・・。自分たちが時代の流れについていけないだけの話なのに、売上保障を求める団体!!
どこの製紙会社が、電子書籍が普及したから売上を保障しろと言っていますか!

確かに印鑑というものには文化的価値があり、最近では外国人観光客に非常に人気だと聞いたことがあります。
また、これまで日本社会の中で担ってきた役割は非常に大きなものがあります。

しかしながら、国民の生活利便性向上とはまったく別の問題であり、業界のサバイバルは自分たちで考えなくてはならない課題のはず。

こんな無茶苦茶な話が通用してしまうのも、「たとえ1%であっても団結していれば99%に勝てる」というノイジーマイノリティ対サイレントマジョリティの争いをめぐる、悲しい政治の真実なのでしょう。

今回の報道を聞いた時、「またこの話か」と思っていました。
残念ながら、このパターンのお話はこれからも何百回といたるところで繰り返されるでしょう・・・。

私個人としては、古い因習にこだわる人は黙って無視するくらいしか対応策は思い浮かびませんでした・・・。

ちなみにですが、もしみなさんが「部下がハンコを押すときは斜めにする」なんていう間抜けな暗黙のルールがある会社にお勤めなら、転職も視野に入れたほうがいいかもしれません・・・。

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