2018年11月30日に公開されたディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』。

主題歌を歌う歌手には、世界的テノール、アンドレア・ボチェッリが起用されています。
作品名は「Fall On Me」。この歌の意味を映画そのものと併せて考えてみました。
(注:映画の結末についても言及していますので、お読みの際はご注意ください。)

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『くるみ割り人形と秘密の王国』。主題歌Fall On Meの意味、メッセージとは

『くるみ割り人形と秘密の王国』について、昨日の記事で作品のテーマについて考えを書きましたが、事実上の原作となったチャイコフスキーの『くるみ割り人形』にはない要素が追加されていました。

その要素のひとつは、「家族の絆」。

映画の一番最後にクララはもう一度オルゴールを動かします。
「これはお母さんと初めて踊ったときの曲だ」と父は感慨深げに語ります。チャイコフスキーの『くるみ割り人形』の終曲「パ・ド・ドゥ」で父娘が(おそらく母のことを思い出しながら)踊る様子には、その姿は見えなくてもなお家族の中心にある母とともに家族の絆が表現されていると言えるでしょう。

チャイコフスキーのバレエでは、「パ・ド・ドゥ」はクララとくるみ割り人形=王子が踊りますが、映画ではクララと父が踊っていることから、映画では家族の絆を強調する狙いがあったものと思われます。
私はこのように考えています。
このシーンを踏まえてFall On Meを聴いてみると、歌の「語り手」が誰で、誰に対しての言葉なのかがおおよそ予想がつくのではないでしょうか。

映画の結末を見届けたうえでの私なりの解釈になりますが、Fall On Meは息子・娘が亡き父・母へ呼びかけた言葉。天上の家族に対して、Fall On Me(私のもとへ舞い降りて)と語りかけています。

Fall On Meは、まずアンドレア・ボチェッリの息子であるマッテオ・ボチェッリがこう歌います。
But I don’t know what’s right for me
I cannot see straight
(何が自分にとって良いことなのかわからない。真っ直ぐに目を向けられない)
と歌っている、悩みを抱えた「私」のもとに舞い降りてほしい――。そう訴えています。
これは、映画では母を亡くして塞いだ気持ちになっているクララの姿と重なります。

父アンドレアはこう応えます(イタリア語)。
Presto una luce ti illuminerà
Seguila sempre, guidarti saprà
Tu non arrenderti,
Attento a non perderti
E il tuo passato avrà senso per te
Vorrei che credessi in te stesso, ma sì
In ogni passo che muoverai qui
È un viaggio infinito
Sorriderò se
Nel tempo che fugge mi porti con te
大意は、「間もなく光がお前を照らす。あきらめずに自分を見失わないで。これまでの出来事の意味が明らかになる。自分を信じて。その一歩一歩が果てしのない旅路だ。私はお前とともにある」。
(以上、イタリア語から英語にGoogle翻訳し、その英語を私が要約しました。)

映画『くるみ割り人形と秘密の王国』では自分を信じることの大切さが、とある方法で亡き母から娘クララへ伝えられます。

父アンドレアが歌う歌詞の内容も、おそらく母からクララへのメッセージと呼応する関係にあるのではないでしょうか。

実際問題、この曲はアンドレア一人で歌っても歌えないことはありません。
しかし父と息子が共演するという形式にすることで、曲に込められた「親子の絆」というメッセージが強調されています!

たとえそこに姿はなくても、家族は強い絆でしっかりと結ばれている――。そのことを確実に伝えようとするプロデューサーの強い意思が伺われます。

むすび

親子はいつか離れてしまうものです。子は20歳前後で親元を離れ、一人で自分の生活を始め、そして伴侶を見つけて息子・娘自身の道を歩みます。
親も、ほぼ確実に子より早く寿命を迎えます。

こう考えると、親子という関係は「いつか会えない日が必ずやって来る」ことを前提にしているものだと言えるでしょう。

それでも、たとえ会えない日が来ようとも、私達は決して離れ離れではないのだという強いメッセージがFall On Meで伝えようとしたことではないでしょうか。

この曲単体で考えると分かりにくいかもしれませんが、映画『くるみ割り人形と秘密の王国』を鑑賞したあとのエンドロールを見ながらFall On Meを聴くと、私の申し上げたことにご共感いただけるのではないかと思います。