[Alexandros]が新曲「アルペジオ」を発表しました。キムタクがMVに出演していることでも知られ、なんとヤフーニュースにも取り上げられました。

ではこの「アルペジオ」。歌詞が伝えようとしているメッセージとは何でしょうか?
私なりに意味を考えてみました。




「アルペジオ」。歌詞の意味やメッセージは何だろうか?

川上洋平は「自分の作詞家人生で最も時間がかかったんじゃないかと思うほど時間をかけて書いた」とマスコミのインタビューに明かしています。

その歌詞とは・・・? 

MVの字幕によるとこのようなものです。

I'm sorry
うまく笑えないよ
あなたの喜び分からないのに
I know I'm so lost
愛想笑いでごまかせなくて
 
I'm only trying to figure out the way
馴染めない群れから離れてみた
I know I'm alone
でも孤独は心地がよくて
 
冷たい夜空はクリア過ぎて
私の心をあぶり出す
痛いよ一人で歩くのは
でも嘘つけなくて
 
誰のものでもない私があるから
笑われても嫌われても守り抜くよ
偽って笑うくらいなら
苦虫潰した顔で
睨むよ睨むよ
嘘偽りない私で
 
I'm sorry
涙流せないよ
あなたの悲しみはあなたのもの

I know you're alone
代わりに弾くよこのアルペジオ

大人になって増え続けてく過去
遠のいて 見えにくくなる未来
生かすも殺すもあなた次第
“さあ、どうする?” って問う今日も

誰のものでもないあなたがいるなら
笑われても嫌われても 染まらないよ
偽って笑うくらいなら
気ままにひとりで
いりゃいいよいりゃいいよ
そう偽らずに

We're going up and down you know
We're going up and down you know
Say no to the world
Say no to the world

We're going up and down you know
We're going up and down you know
Say no to the world
Say no to the world now
 
誰のものでもない私があるから
笑われても嫌われても守り抜くよ

偽って笑うくらいなら
苦虫潰した顔で
笑うよ笑うよ
嘘偽らずに

We're going up and down you know
We're going up and down you know

Say no to the world
Say no to the world
 
We're going up and down you know
We're going up and down you know

Say no to the world
Say no to the world now

歌詞の意味は?

表現されている心境は何でしょうか。
ここには「孤独」に集約される心境が繰り返し現れます。つまり・・・。
・「喜び分からない」「愛想笑いで誤魔化せない」→相手に共感できない
・「馴染めない群れから離れてみた」→集団に共感できないから一人になりたい気分だ
・「ひとりで歩くのは痛い。でも嘘つけない」→群れから離れるのは辛い。しかし自分の気持ちに正直でいたい
・「私があるから嫌われても守り抜く」→「組織」か「私」か。日本人の(とくにサラリーマンなら)必ず共感できるはずのフレーズですね

こうした気持ちに対置されるものとして「あなた」が登場します。
「あなたの哀しみはあなたの物。代わりに弾くよアルペジオ」
アルペジオとは・・・? これは歌詞のいわば決め台詞のようなもの。アルペジオの意味は後述します。

「あなた」は引き続き登場します。誰の真似でもないあなたがいるなら「染まらない」。
「偽って群れるくらいなら気ままに一人でいりゃいいよ」。

このように、「私」であれ「あなた」であれ「ゆずれない個」を確固として持った「世界にただ一人のかけがえのない個人」であることを歌い上げており、思いっきりくだけた言い方をすれば「俺は会社の歯車じゃない!」「私はあなたの人形じゃない」です。

誰もが感じていることだと思いますが、それを「歯車」なんていう無骨な工業製品の名前を持ち出すのではなくて、きちんときれいな言葉を選んで歌詞として結晶化させているところに「アルペジオ」の芸術性があると言えるでしょう。

アルペジオとは?

アルペジオとは何でしょうか。
ギターやピアノを演奏する人ならご存知だと思いますが、「和音を分散させること」。
たとえばコードがCならドミソで構成されています。

一気にドミソを鳴らせばCのコードが成立します。
アルペジオはそれをばらしてド、ミ、ソを一つ一つ弾いていくわけです。
ドミソミ、ドミソミ、ドミソミソミドミ・・・なんていう鳴らし方、バラードのような綺麗めな曲の背景に流れていたりしますよね。これがアルペジオです。

孤独という感情は誰もが感じるはずですが、それゆえ歌詞も陳腐化しがちです。
そこに、ギタリストとしての川上洋平の面目躍如とでも言うべきか、ギターの奏法の一つである「アルペジオ」を持ち出しました。私がアルペジオが決め台詞だと考えている理由はこれです。

つまり「コード」は複数の音の塊=集団や組織。
他方「アルペジオ」は分散和音=分散つまりみんなと一緒になれない孤独感。
ということを暗に表現しようとしているのではないでしょうか。

この「孤独感」とはまさにアーティストとしての宿命であり、音楽用語「アルペジオ」を使うことでギタリストとして、またアーティストとして川上洋平はこの新曲で自らの個性を刻印したのだと思います。

最後に、「孤独感」がアーティストの宿命であることの傍証として次の言葉を引用し、本記事の結びといたします。

みんなが町で暮したり
一日あそんでいるときに
おまえはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまえは音をつくるのだ
(宮沢賢治「告別」より)