こんにちは! ぼくは友だちいないマンだよ!\(^o^)/ ぼっちだよ!\(^o^)/ 
今日はヴァイオリン買い替えに悩んで40日で9店回って最後に70万払った話をしてみるよ!
ヴァイオリン買い替えに苦労したときの話を書き留めておくよ!
(この記事は大人になってからヴァイオリンを始めた人が書いています。したがって、音楽大学進学などを視野に入れてヴァイオリンの買い替えを考えている方には参考にならないと思います。その点ご注意下さい)

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得られた教訓

この記事はとても長いので、まず結末と得られた教訓を書き留めておきます。

結末
千代田区の楽器店で70万円程度のブルガリア製ヴァイオリンを購入(記事冒頭の画像ご参照)。買い替えを思い立ってから購入にかかった期間はおよそ40日。

得られた教訓
「自分が働いて稼いだお金を費やす」というガチ決意のもと、店をひたすらハシゴして、真剣に何台も何台も見るべき。
真剣に見ていると、嗅覚が研ぎ澄まされるとでも言うのか、楽器の良し悪し、個性がなんとなく分かるようになる。
(1年後にふらりと楽器店に立ち寄ってヴァイオリンを見ていると、その感覚が消えていることに気づきました。不思議なものです。)

もちろんこれは個人の経験であって、これをお読みのあなたにも適用できる結論ではない可能性はあります。
ただし、「真剣な決意」がないと納得のゆくヴァイオリンの買い替えはできないと思います。やすやすと数十万を費やせる人は少数派だと思いますので・・・。


ヴァイオリン買い替えを思い立つ

友だちいないマン=ぼくはヴァイオリンを弾いています。
もちろんプロではありません。

しかも大学生になってから始めたことなので上達が早いとはいえません。
さらに! 一度始めたヴァイオリンをなんと数年間放置し、すごろくの「10回休み」「10コマ戻る」を自分のカラダで経験してしまっているのです。

それでも一念発起して再び先生に教えてもらうようになったり、自分なりに工夫を重ねたりして、なんとかアッコーライのヴァイオリン協奏曲までたどり着きました。
知っている方は知っているのですがこの曲は篠崎ヴァイオリン教本で採用されており、いわゆる中ボスに相当するようなものです。

この曲にさしかかる頃(2017年夏)、友だちいないマンはある日思いました。


飽きた!










このヴァイオリンの音色に。




じつは当時使っていた楽器は12万円程度の初心者セット。

ある程度上達すると、初心者セットの楽器で出せる音色に限界を感じるようになるものなのです。
どうにもこうにも奥行きのない音に不満を感じたのでした。


こうなったら買い替えだ!!



ボーナス全部ダンクシュートする!!









のはちょっと不安だから全部使わない!!










50万あればいいだろう!!


そう決断したのでした。




しかし50万という数字自体何の根拠もないアバウトなもの。
あとでこの数字はどんどん迷走してゆくのでした。



まず先生に相談した

まず先生にヴァイオリンの買い替えをしたい、と相談しました。

「だったら時間をかけてじっくり何店も回って、繰り返し複数の楽器を弾き比べて下さい」。

?? そんなに大変なのか? 一発で決められないのか? 
エレキギターを買ったときはあっさり決まったけれど??(ヴァイオリンを弾いてないときに軽音をやっていたのです。フレットがないのでとても演奏がラクでした・・・。同じ弦楽器なのになんでこんなに簡単なのか・・・。)

何も知らない自分は、とにかくお店巡りからはじめました。


豊島区 A店

最初に訪問したのが豊島区のA店。

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フランス製、イタリア製の楽器を試奏しました。1時間くらい弾いていたと思います。
大体この値段の楽器はこういうものか、ということがなんとなく分かりました。何をどういう視点で見る、という基準が自分の中にできていなかったせいもありますが、良いのか悪いのか、結局よく分かりませんでした。


新宿区 B店

次に新宿区のB店を訪問。

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原産国不明の楽器もありました。一応ラベルを見れば、どんな人が何年に作った楽器かはわかります。(ヴァイオリンは、f孔をのぞくとラベルが貼ってあります。)ところが、このラベルというのは必ずしも信用できるものではないのです。

じつはヴァイオリンが流通する過程では様々な思惑のもと、ラベルが改ざんされたり貼り替えられたりということはザラにあるのです。専門書をお読みいただければ必ずそのことが書いてあります。

その時試奏した〇〇 Labelという作品。
これはラベルが〇〇の「ラベルが貼ってあります」ということであり、〇〇が製作したヴァイオリンであることを100%保証するものではないのです。

このお店がそういう改ざん行為をしているというわけではなく、歴史のある楽器であればあるほど、「ある時点でどこかの誰かがラベルを貼り替えた(可能性がある)」ものなのです。

由緒あるヴァイオリンは存在それ自体が骨董品でもあるわけですから、見極めは慎重にしなくてはならないのです。

この時試奏した楽器は2台。しかしネックが太いのか何なのか、どちらも手に馴染まない感覚がありました。

東京都下 C店


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特に日本人製作家さんの作品を多く取り揃えていました。
対応してくださった店員さんが大変熱心かつ親切で、様々な情報を教えてくれました。
・イタリア製、とくにクレモナのヴァイオリンがもてはやされているが、必ずしも値段と実力のバランスが取れているというわけではない。
・すなわち、そのブランドイメージゆえにイタリア製ヴァイオリンは価格が釣り上がっている。
・そのクレモナだが、ヴァイオリン製作の伝統が名匠ストラディバリの死後、長らく途絶えていた。自らもヴァイオリンを弾いていたムッソリーニがその伝統を人為的に復活させた。
・クレモナには今も世界中から多くの職人が集っている。日本人もそうだ。したがって、クレモナのヴァイオリンだからといってイタリアの職人が製作したものとは限らない。
・アジアの職人が製作したものは、欧米人が製作ものより価格が低くなりがちである。しかしそれは単なる「アジア」のイメージで価格がそうなっているだけの話であり、安い=楽器の実力が低いというものではない。

一般的に、価格と本来の価値が不釣り合いな場合、長期的には、価格は本来の価値と釣り合いが取れる水準まで下落するはずです。
しかし、ヴァイオリン業界ではそういったことが起こっていないようなのです。
その結果としてイタリア製ヴァイオリンの価格が高騰しているようです。

このときは、とある日本人作家の作品の几帳面な作りに感銘を受けました。

もうひとり、販売員のお姉さんからもいい情報を聞きました。
音楽科の高校から音楽大学へ進学したとのこと、私の前でブルッフのヴァイオリン協奏曲第一番の出だしの部分を披露して頂きました。
「受験前はどんなメニューで練習されていましたか?」
「小野アンナとカール・フレッシュの音階を5時間弾いて、そのあと協奏曲を1時間位弾いていました」。

音階練習が大切だとはよく聞く話ですが、5時間も! わたしの周りにはヴァイオリンを弾く人がまったくいないので、こういう生の声は大変参考になります。

ちなみに、音楽科の高校ではどんな課題曲が使われているのでしょうか?
たとえば仙川にある某女子高校(音楽科のみ、共学)では入試の課題曲にブルッフやヴィエニアフスキーのヴァイオリン協奏曲の一部が課されています。
15歳の時点でこういう曲が弾けるようになっているためには、幼稚園~小学校の頃から厳しいトレーニングを経験していないといけません。

他方、何年やってもコレルリのラ・フォリアを弾くのがやっとという友だちいないマンのような奴もいる・・・。












・・・。まだまだお店巡りは続くのでした。


千代田区 D店

次に千代田区D店を訪問。

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先日、あれほど「イタリア製の楽器は~」というありがたいお話をにしていたのにイタリア製の楽器を気に入ってしまいました。こちらは50万円台でありながらいい音色でした。これにしようかな。

そう思いながらまた別の店を巡るのでした。


渋谷区 E店

こちらでは日本人作家の作品やイタリア製の楽器(またかよ! でも本当にイタリア製は多いです)を見せていただきました。

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「今、ヴァイオリンの買い替えをするために、これまでこんなお店を巡ってきました」
「あのお店では、・・・さんの作品や・・・さんの作品が多いですね」
「やけに詳しいですね」
「私、昔あのお店で働いていました」
「・・・!」

世の中は狭いですね! この方にも親切にご対応いただきました。

「この弓を使ってみて弾いてみて下さい」

値段をふと見ると。






6,000,000円。







ひっくり返る値段でした。
アマチュアのヴァイオリニストは一生持つこともないであろう価格帯の弓。
ドラクエなら「ひのきのぼう」が8ゴールドで買えます。

同じぼう(Bow)でもヴァイオリンの世界は(素人目には)ただの木の棒が数十万することは珍しくないのでした。(現に今の私の弓は40万円のものを使っています。)
イタリア製の楽器に(おい)心惹かれつつも予算外のため検討を断念。


渋谷区 F店

こちらではイタリア製のヴァイオリンを多く取り扱っているとのこと。
(イタリア製は本当に多い!)

また、とても暑い日でしたが訪問時にお茶を出して頂き、気遣いに大変感謝しています。
この中では「かつてある学生が使っていたが、音大進学にあたり別の楽器にランクアップするために手放した」という100万円台の楽器の音色に魅力を感じました。

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こうして様々な楽器を手にしているうちにだんだん気が大きくなり、当初は予算50万だったはずなのに、お店の人に「予算は、50万から100万」などと風呂敷を広げ始めるようになってきました。

でも50万のヴァイオリンと100万のヴァイオリンでは、間近で見るとやはりニスの雰囲気やスクロール、パフリングなどの細かい部分の完成度に開きがあることが分かってきたのです。


ここで一度先生に相談してみると

これまで6店を巡り、一度先生に相談すると次のような助言が得られました。

日本人の作品について。音も柔らかく弾きやすいものが多く、色々探して最終的に日本人の作品を選ぶ人は多い。

少し大きな舞台で聞いたときは、イタリアの楽器は響きが明るく華やかなものが多く、さすがバイオリン製作で歴史があるだけのことはある。

手に入れた楽器がどのように鳴っていくかは本当のところ弾いていってみないとわからない。自分との相性も大切。名前や国だけで良し悪しは決められない。
場所が変わると音の感じが違って聞こえる。本当は借用して自宅で弾いたり他の楽器と比べたりしてみたいところ。それが無理なら楽器店では係の方に弾いてもらって少し離れて聴くと、その楽器の客観的な音が分かる。

貴重な助言でした。
名前や国だけで良し悪しが決められないのは、自分の実感からもそうだと思いました。


千代田区 G店

続いて千代田区のG店を訪問。
こちらは輸入楽器を専門に取り扱っている模様。

ここでは力強い音を出すドイツ製のヴァイオリン、そしてやや細身ではあるが深い音色を出すフランス製のヴァイオリンが登場。
文章で伝えにくいのですが、ドイツ製のヴァイオリンは本当によい楽器でした。

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ドイツ製のヴァイオリンは、50万円台という手頃な価格でありながら大変力強い音が出ていました。G、D弦を擦ると深々とした音が試奏室に響き渡ったのです。
まだまだ弾き込んでいない新品の段階でこれだけの音が出るということは、何年も使っていけば使うほどますます音色が深くなるはず・・・。
もしかすると、このドイツ製のヴァイオリンを買うかもしれない。
そんなうっすらとした予感を胸に、店を後にしました。


中央区 H店

G店に立ち寄ったその足でH店に立ち寄りました。
ここでもまたイタリア製の楽器が登場。

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本当にイタリア製の楽器が多いです。
イタリア製以外でもアメリカ製、イギリス製、デンマーク製などあっても不思議ではない(現に、日本製のヴァイオリンだってある)のに、なぜか自分が探している価格帯(50万円~)では見かけなかったのです。

製作家が存在しないのか、日本市場で流通していないだけなのか、原因は不明です。
このお店では滞在時間が限られており、長く試奏ができなかったのが心残りです。


東京都下 I店

以前訪れたことがある、安ウマ中華料理店の近くにこんなお店があったとは!!
が、「いま在庫の多くは外商に出しており、来週以降にまた戻ってくる」とのこと。巡り合わせが悪かったです。

このお店で40万円前後という手の届きやすい価格でありながらとても充実した響きのするヴァイオリンがありました。この価格、中国製だからでしょうか。
もちろん中国製=悪いというわけではないはず。

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「以前、400万円の楽器とこちらを本当に真剣に悩まれたお客様がいらっしゃいました。結局400万円の楽器にされたのですが・・・。」
すごい音だ、と感じたのは自分だけではなかったようです。




以上、これまでで9つのお店を周り、のべ60本ほどのヴァイオリンを弾き比べてきました。

「これだけ周ったのだ。あとは絞り込みだ」

そう判断し、気になったお店の楽器を改めて確かめてみることにしました。
2周めの始まりです。

まさか買い替えを決断したときには、ここまで手間がかかるとは思いませんでした。
しかしヴァイオリンという難しい楽器を毎日毎日弾いていると、これくらいの手間などなんとも思わなくなるのでした。「忍耐力」という予期せぬ力が身についたようです。


ヴァイオリンの響き~「遠鳴り」と「傍鳴り」

2周めに入る前に、ヴァイオリンの響きについて考えてみたいと思います。

ヴァイオリンの響きを自分で判断することは難しいことです。
よくテレビ番組などで銘器と言われるヴァイオリンと初心者用のヴァイオリンをブラインドテストしてみるといった企画があります。

音楽評論家やプロのヴァイオリニストが参加者に含まれていて、彼らが平気で銘器とされるヴァイオリンよりも初心者用楽器の音色に軍配を上げたり・・・。

こうした番組がよく放送されていることそれ自体が、ヴァイオリンの響きを評価することの難しさを物語っているといえるでしょう。

番組ではもっぱら音色が評価されていますが、その他にも「今使っている楽器が、どれくらいの音量で客席に伝わっているか」という問題があります。

中野雄氏の著書「ストラディヴァリとグァルネリ」(文春新書)には次のように書かれています。

(ヴァイオリンの評価にあたっては)楽器の「遠鳴り」と「傍鳴り」という厄介な現象が絡む。(中略)非常に不思議な現象ではあるが、奏者の耳もとで強大な音響を発するヴァイオリンの音は、レスポンスという観点からすると、コンサート・ホールでは隅々まで届かない。では、奏者の耳もとで小さな音量で聴こえる楽器がすべてホールの隅々までとどくかと言うと、そうではない。しかし、銘器といわれる一七〇〇年代に作られたクレモナ製の楽器のほとんどは、奏者の耳もとでは大きくは鳴らないのである。だが、優れた奏法の持ち主で、聴覚の優秀な演奏家、特に独りでステージに立つソリストには、どのような部屋で弾いても、それらイタリアの古銘器の音が遠くまで届いていることが、感覚的に判断できる。

と。さらに輪をかけてややこしいのが、ヴァイオリニストは自分の音を客観的に聴くことができないのです。自分の声を自分で聴くことができないのと同じように。

だから、この響きがいいなと思ったとしても、ホールで聴いているお客さんにとってもきれいな響きだとは断言できないのです。

私の先生が、お店で弾くだけでなく、できれば自宅で弾いてみたり、お店の人に弾いてもらって客観的に音を確かめて見るようにと言ったのはそのあたりに真意がありそうです。


値引について

たとえばエアコンやテレビを量販店で購入するとき、定価で購入する人は少数派だと思います。
普通は2割、3割引で買っていくのが実情ではないでしょうか。

では、ヴァイオリンの適正価格とは何でしょうか。
完成度? 音色? 作家の知名度? 材料費+人件費?
そもそも適正価格や定価は誰がどんなふうに決めるのでしょう?
ロンドンやニューヨークのオークションで、ストラデヴァリウスやグァルネリといった銘器が何億円という価格で落札されることもあります。

一方では、初心者用セットが5万円程度で買うことができます。

神田侑晃氏の「ヴァイオリンの見方・選び方」によると、ヴァイオリンの価格は作者名、出来不出来、音、年代、保存状態、履歴、将来性などによって決まると記されています。

メーカー製のヴァイオリンには希望小売価格のようなものがありますが、骨董品としての価値があるヴァイオリンとなるとこのような要素が絡み合い、「定価」に代わるものとして「相場」が形成されています。

実は私がヴァイオリンを選ぶ過程で、あるお店からは値引きのオファーを頂くこともありました。
ありがたいお話でありながら、「そんなに値下げして大丈夫なのか?」という疑問を感じることもありました。

「100万円の値札がついておりますが、実際にご購入頂く際には70万円前後までご協力が可能となっております」
「当店では今月が決算月にあたりますため、最大で4割程度お値引きできます」

こういったふうに値引きのオファーを頂いたのです。
たしかに数十万の値引きをしてもらえるなら、サラリーマンの給与1ヶ月分のお金が浮くわけですから大助かりです。

しかし値引きのお話を頂いた時、「そんな値段で取引できるというなら、値引前の値段で買っていったお客さんが浮かばれまい」。ついそんな気持ちになりました。

さらには、「一気に何十万と安くなるなら、適正価格なんてものがもともと存在しないんじゃないか?」そう思い、先生に相談したところ次のようなアドバイスを頂きました。

値引きできる理由はいくつかあります。
1.もともとそのくらいの価値であった。
2.あまり人気が無いのでそろそろ処分したい。
3.製作者を個人的に応援しており、直接的な取り引きがある。
などだそうです。
一番考えられるのは最初の理由で、、もともとそのくらいの価値であったと考えた方が正解かもしれない。
難しいのは、その「価値」というのはあくまで楽器屋から見た価値のことであり、あなたの好みやニーズと一致するとは限りませんので高ければ良い訳でもない。結局は自分の判断で選ぶしかなく、その過程で信頼できる楽器屋とめぐりあうことが大切である。
このようなアドバイスを頂きました。

私は迷いに迷って結局一台のヴァイオリンを選びぬきました。
他のヴァイオリンとも十分比べたうえでの結果ですが、果たしてそこに錯覚が混じっての判断ではないと断言できる自信はありません。

ともあれ9つのお店を訪問して、そろそろ2周めに入ろうとしていました。

2周めに入る

実際のところ、東京だけでなく埼玉や横浜などにあるお店や工房なども比較の対象に含めた場合、訪問先は無数にあります。
しかしそれをしているときりがありません。

わたしは1周めをここで打ち切ることにしました。
そして2周めに、気になる楽器を置いている店に絞って改めて試奏することにしました。


千代田区 D店

ここでは前回試奏したイタリア製の楽器をもう一度出してもらうつもりでした。


ところが・・・。



なぜかイマイチ!


これまで散々いろんなヴァイオリンを試した結果、耳が肥えたとでも言うのか、以前は魅力的に思えていた音色が、なぜか心に響いてこないのでした。


うーむ、期待していたヴァイオリンが空振りだったとは。








俺、ヴァイオリン買い換えるのやめようかな。





一瞬そんな気になりました。


店を出ようかと思ったそのとき、とある一台のヴァイオリンが目に入りました。
ブルガリア製、70万円。


なんだこの楽器は?
この前来たとき気づかなかったのか?


大変ニス塗り方がきれいで、はっと目を引く楽器でした。
思わず手にしたくなるような、品のあるたたずまい。
「これはまさか?」
そう思い、お店の人に棚から下ろしていただき、試奏してみました。
4本の弦がバランスよく響き、弾いていてとても心地よかったのを今でもはっきりと思い出します。
結局、このヴァイオリンを購入することになるのですが、縁や相性とは不思議なもので、ある楽器に巡り合った瞬間、「これ、いいかも!」となぜか分かるのです。

今、とても非科学的なことを書いているという自覚があります。

しかしこれは本当に縁とか相性とかいったような言葉でしか言い表せない、本当に不思議な感覚でした。

お店の人に訊ねてみたところ、ブルガリアの女流製作家によるもの。1715年製のストラデヴァリウスをモデルにしている模様です。

これは本当に素晴らしい楽器だ! 



といっても、錯覚かもしれない! またしばらく時間をおいて弾き直してみよう!

お店の方には1週間の取り置きをお願いし、あらためて試奏することにしました。


その足で千代田区のG店を訪問しました。
先日試奏して気になっていたドイツ製のヴァイオリンとフランス製のヴァイオリンをもう一度弾いてみることにしたのです。
このときもドイツ製のヴァイオリンは力強い響きが出ており、前回試奏したときの自分の考え方に間違いはなかったことを確かめることができました。

フランス製のヴァイオリンもおよそ100年前の作品で深みのある響きがしていましたが、「自分が弾き込むことによって音をどう変えていけるか」という将来性を考え、候補からは外すことにしました。


渋谷区F店

前回訪問したときと同じ楽器を再び試奏しました。
しかし、先に触れたブルガリア製のヴァイオリンやドイツ製のヴァイオリンを弾いたときのような驚きを見つけることができませんでした。

確かにどれも良い作品ではあるものの、いまいちどれも想定内の響き、突き抜けた何かがないという印象が残ってしまいました。


東京都下C店

ここで改めて日本人製作家の作品を3台見せて頂きました。
以前試奏したうち1台はどなたかが購入されたのでしょうか、このときは拝見できませんでした。

日本人製作家の作品をここで再び弾いてみたわけですが、たしかに丁寧な仕上がりをしていることが外観から伺われました。
ただどちらかといえば線の細い音がするのが気になりました。
繊細といえばいいのですが、反面力強さに欠ける印象を持ってしまいました。

店を後にしながら、D店とG店で紹介されたブルガリア製のヴァイオリンとドイツ製のヴァイオリンの2台を最終候補として決定しようと心に決めました。

これまでたくさんの楽器を弾き比べた中で、この2台を最終候補として絞ったうえで、特徴を整理してみたいと思います。

ブルガリア製・・・明るさの中に品が感じられる響き。4本の弦がバランスよく鳴っている。
ドイツ製・・・音色はやや渋め。力強さがある。50万円程度でこの音とは信じがたい。


そして最終決定へ

1週間後。ヴァイオリンの選定もこれで終わりにしようと思いながら、2つの店を訪問しました。これで結論を出すことができなければ、買い替えは一旦中止しよう。そう考えながらお店へ足を運びました。

このとき私は自分のヴァイオリンと弓を持って行きました。最後に自分の弓を使って試奏するつもりだったのです。

まず千代田区のD店。ブルガリア製のヴァイオリンは相変わらず品のある音色をしていました。
念のためお店の方にも演奏していただき、離れた場所からその音に耳を傾けました。
このときは練習曲(クロイツェル)の第一番を何度も弾いて、4本の弦の響きのバランスを確かめました。

その後、G店を訪問してドイツ製のヴァイオリンを試奏室で弾かせて頂きました。

「!」

弾いてみたその一瞬で気づきました。4本の弦の響きのバランス、音色の艶、どれをとってもブルガリア製のヴァイオリンのほうが全体的に上であると。
なぜそう感じたのかを客観的に証明することは不可能ですが、何度も何度もいろいろなお店を回って試奏を続けた結果、一時的にではあったものの、様々な音を聴き分ける耳ができていたのだと思います。

30分ほど、自分がその時感じたことが錯覚ではないか確かめようとして繰り返しヴァイオリンを弾き続けました。しかし最初の印象が覆ることはありませんでした。

どのヴァイオリンを選ぶかというのはきわめて主観的なものだと思います。
不動産のように駅から徒歩何分、何平米のように価値を決める客観的指標がありません。
もし今の自分が改めてヴァイオリン探しをすることになったら、この時と全然違う結論を出しているでしょう。
そう考えると、ヴァイオリンを選ぶということは本当に縁や巡り合わせのの要素が強いものだと思います。

私はそのお店の方に試奏させて頂いたお礼を告げ、もう一度D店に戻りました。
最終テストをするためです。我ながらしつこい性格だと思いますが、たった今弾いていたドイツ製のヴァイオリンの音色が耳の奥に残っているうちに改めてブルガリア製のヴァイオリンの音と比べてみようと思ったのです。

果たして、ブルガリア製のほうは期待通り美しい音を響かせてくれました。
また1時間ほどいろいろ演奏した結果、店員さんにこのヴァイオリンを購入したいことを告げ、ここに1ヶ月に及んだヴァイオリン探しは終了したのです。

結局、このヴァイオリンはそのとき使っていたほうのヴァイオリンを下取りに出した価格とある程度相殺させ、70万円台で購入しました。
もともと50万円という想定で探しに出かけ、結果的に20万円の予算オーバーとなりましたが、むしろ良い買い物であったと思います。

このブルガリア製のヴァイオリンは1715年製ストラデヴァリウスを模して作られたものであることが製作証明書に記載されていました。
後日、製作家にメールを送ったところ、イル・クレモネーゼを基にしていることを教えて頂きました。
イル・クレモネーゼはクレモナ市が所有しているストラデヴァリウスで、大ヴァイオリニストであったヨーゼフ・ヨアヒムもかつての所有者でした。


おわりに

ここに至るまで多くの方に助言を頂き、結果的に一台の楽器にめぐりあうことができました。そこに至るまでの様々な方からのご協力に大変感謝しています。
また、この記事をお読み頂いているあなたにもお礼を申し上げます。
おそらくあなたもヴァイオリンの買い替えを考えていらっしゃるかもしれません。
ヴァイオリンの買い替えは時間的にも、精神的にもかなりハードルの高いものですが、一生に何度も経験できることではありませんので、十分に吟味して納得のゆく結論を出さるのが良いと思います。

ヴァイオリンは、苦労が多い反面、努力が報われづらい楽器です。
誰もが練習時間の捻出に苦心されていらっしゃると思います。お互い頑張りましょう。

また、この記事は私がヴァイオリンという楽器と巡り合わなければ作成するはずもありませんでした。
ヴァイオリンの製作から販売まで、この素晴らしい楽器に関わるすべての方に心より敬意を表し、むすびとさせていただきます。

【買い替えにあたって参考にした本】